国会議員の交通費100万円問題が世間を騒がせている。
 先ごろ衆院選が行われた結果、新たに当選した議員に、たった1日の在職で丸々1ヶ月分の交通費100万円が支給された。
 これはおかしい。
 そういうお話だ。

 マスコミ的には、次のネタが登場するまでの「つなぎ」であろう。
 問題提起したのは議員(維新所属)なのであるから、おかしいと思うなら、さっさと国会に法案を提出して改正すればよろしい。
 法律を作るのが議員の仕事だろうが。

 と言いつつ、この際だから、勉強の意味でちょっと調べてみよう。

 今回の問題は、議員の歳費(分かりやすく言えばお給料)についてではない。
 歳費の方は法律で日割り計算と決められているので、今回の場合、1日分しか支給されない。
 その法律とは、「国会議員の歳費、旅費及び手当等に関する法律」(略して歳費法)である。

 歳費法の中に、「文書通信交通滞在費」の支給について定めがある。
 会社の経理で言えば、通信費、交通費である。
 これについては、日割り計算という定めがないので、今回のように在職1日でも満額支給ということが起きる。
 給料が日割りなのだから、交通費も日割りでよろしかろう。

 かつては給料も満額だったが、日割りに改められた。
 その時に、なぜ交通費も日割りにしなかったのか。
 それはおそらく、交通費と言いながら、実際の使途については報告の義務がないからだろう。
 与党議員も野党議員も、自由に使えるお金をキープしておきたかったものと思われる。
 この際、きちんと領収書を取っておき、報告するよう改めるべきだろう。
 会社員や自営業者などは毎日やっていることだ。

◆「1日で」だから響いた
 この件、つまり「文書通信交通滞在費」については、以前から「第二の給与」ではないかと問題視されていた。
 しかし、マスコミもそれほど大きくは取り上げなかった。
 議員自身も特権を手放すことになるため、わざわざ手をつけるようなことはしてこなかった。

 ところが今回、ちょうどいい数字が出現した。
 たまたま選挙が10月31日だったので、「1日で」となったのである。
 もし選挙が1週間前の10月24日だったら「8日で」となり、1週間後の11月7日だったら「24日で」となった。
 これでは全くインパクトがない。

 たった1日
 だから響いた。

 ここに目を付けたのは大ヒットだ。
 案の定、マスコミは食いつき、人々は反応した。
 ちょうど、18歳以下に10万円という給付金問題が話題になっていたことも追い風となった。
 国民が10万円なのに国会議員は1日で100万円かよ。
 そういう分かりやすい話になった。

◆数字は大事だよね
 今回、改めて思ったのが数字がいかに重要であるかということだ。
 人々は小さい数字と大きい数字にしか反応しない。
 いや、より正確には、小さそうに見える数字、大きそうに見える数字と言い換えたほうがいいかもしれない。
 
 恐怖や怒りや嫉妬や不満に訴えるとき、小さそうに見える数字や大きそうに見える数字は効果的だ。
 最大最小、最長最短など「最」を用いるのは常套手段だが、これに数字が加わるとよりリアルになる。

 私は人々を不安に陥れるよりも、むしろ安心を届けることを仕事にしているつもりだ。
 その場合でも数字の使い方で印象はずいぶんと違ったものになるだろう。

 「偏差値を上げる方法」×
 「1ヶ月で偏差値を10上げる方法」○

 「直前の勉強法」×
 「直前1週間に確認すべき100の知識」○

 反応しやすいのはどっち。