埼玉県内某私立高校に学校説明会(受験生・保護者向け)を見に行っていいかと問い合わせした。
 結果を先に書いておくと、「どうぞお越しください」。
 ほぼ100%そうなる。

 ただ、コロナ発生以降、事前の登録が必須となっているので当日ふらりと出かけることは避けなければならない。
 また厳格な人数制限が行われ、参加が叶わない受験生・保護者もいる中、いくら取材とは言え予定外の訪問者を受け入れるのはどうなのかという問題もある。
 実に面倒であるが、もう少しの辛抱だ。

◆それ、校長マターなのか
 話を某私立高校に戻すと、最初教頭に電話したのだが、「校長に相談してみる」との回答だった。
 公立ではよくある対応だが、私立では珍しいことだ。
 
 校長が知り合いであれば直接電話するが、そう親しくもない間柄であれば、公立なら教頭、私立なら募集担当責任者に問い合わせてみる。
 公立の場合、今も言ったように直ちにオーケーをもらえることは少ない。
 「念のため、校長に相談してみる」
 教頭が知り合いであったとしても、だいたいそんな対応になる。

 私立の場合は、入試広報部長などその方面の責任者に問い合わせれば基本即決となる。
 少なくとも今までの私の経験ではそうだ。
 だから、今回のように「校長の許可を得てから」という対応には、ちょっと驚いた。
 私にとっては、「この程度のこと」なのであるが、この学校ではそうではないようだ。
 まあ事の軽重は、自分本位には決められないので、それがこの学校のシステムなのだと受け入れるしかない。

◆権限の委譲が行われていないのか
 ただ、どうなんだろう。
 「この程度」のことが校長マターになっているとしたら、非常に意思決定の遅い学校ということになりはしないか。
 その点が心配になる。

 権限の委譲には、メリットもデメリットもある。
 メリットは言うまでもなく意思決定がスピードアップすることだ。
 下から上に上がって行って、また上から下に下がって来てとやっているうちに、機を逸してしまうこともある。
 激しい競争にさらされている世界で、これは致命的だ。

 権限の委譲は、職員の能力向上にもつながる。
 一職員としては、細かいことをいちいち上にお伺いを立てるのは面倒だが、決定に伴う事後の責任を回避できる。
 気楽である。
 気楽にやっていると能力は向上しない。

 だが、それはお前の判断で決めろと言われたら、面倒がなくなる反面、意思決定の責任が降りかかってくる。
 こういう経験を経て、職員の能力は向上する。

 デメリットとして考えられるのは、決定が部分最適化されたものになりがちなことだ。
 トップが見ているのは全体。
 それに対して一職員が見ているのは部分。
 部分最適がそのまま全体最適になるとは限らない。

 現場感覚は大事だが、それに頼り切るのも危険だ。
 権限の委譲は、職員の自立促進、組織の生産性向上などさまざまなメリットはあるので、リスクを回避しつつ、だが積極的に進めてもらいたいものである。