世間にはカレーが大好物という人は多いだろう。そこにまた教員の不祥事という大好物が加わる。
 大好物×大好物で、かなり盛り上がっているのが、この事件だ。

 「担任できず悔しかった」…給食のカレーに漂白剤混入 小学校教諭を逮捕 事件後、全教諭招集も現れず

 富士見市教育長、会見で謝罪も「信じられない」「本当の動機なのか」 事件知り動揺する児童も

 カレーと聞いて思い出されるのが1998年(平成10)年の和歌山毒物カレー事件だ。
 カレー事件でハヤシ容疑者。
 この時は、小学生、高校生含む4人もの死者が出た。
 今回は、今のところ児童の健康被害はない模様で不幸中の幸いだ。

 事件を起こしたのは、富士見市立水谷東小の女性教諭(24)。
 2020年採用というから、新卒3年目の先生。
 給食のカレー食缶に塩素系漂白剤を混入し、学校業務を妨害したとして、威力業務妨害(刑法234条)の疑いで逮捕された。
 ちなみに、この罪状で起訴され裁判で有罪になったとして、最高刑は「3年以下の懲役、又は50万円以下の罰金」である。
 また、これとは別に、埼玉県から懲戒処分(おそらく懲戒免職)を受けることになると思われる。
 若いのにお気の毒だが、教員として不適格であるし、もちろん、他の世界でも受け入れがたい人物だということがはっきりしたので、もう一度人生やり直してもらおう。
 結果として健康被害に至らなかったのは、子供たちや他の先生方の迅速かつ的確な判断と行動によるものであり、女性教諭は救われたとも言える。

 この手の不祥事が起きると、とりあえず教育界を取り巻くさまざまな問題と結び付けて語られるのが常である。
 ブラック職場。
 管理職によるパワハラ。
 採用倍率の低下。
 まあ、議論としては盛り上がるだろうが、話を広げすぎると焦点がぼやけ、かえって問題解決から遠ざかってしまう。

 こんな人物をなぜ採用したのかと言われても、最初から分かっていれば誰も採用などしないはずであり、分からなかったのである。
 ここ(採用)で防げるなら、組織や企業における不祥事は根絶できるだろう。
 
 問題を起こす因子は、おそらく誰にでもある。
 それが発現せずに済んでいるのは、己の自制というものもあるが、環境に依る部分も大きいだろう。
 もしかしたら、運なのかもしれない。

 新聞報道では、犯行に及んだのは「担任をはずされたこと」とあるが、これは警察発表によるものだ。
 警察が取り調べにおける供述すべてを発表するとは限らない。
 他に隠された動機があるやもしれず、これだけで事件の真相に迫るのは難しい。

 本ブログ読者の中には、学校管理職やそれに準ずる立場の方も多いだろう。
 それらの方々は、何か事件が起きるたびに、「うち(の学校)は、大丈夫か」と、自問していることと思う。
 
 特に公立学校の場合、採用から配属までのプロセスに、学校現場は関与できない。
 どんな先生が回ってくるかは、運次第だ。
 採用は万能ではないし、問題因子は多かれ少なかれ誰もが持っている。
 それも含めて、運次第だ。

 では、個々の学校に出来ることは何か。
 「うち(の学校ではあり得ない」。
 もっとも危険なのは、この考え方なので、それは捨てよう。

 子供たちの中には、不登校や非行や、その他問題行動を起こす因子が、多かれ少なかれある。
 それを前提に指導が行われていると思うが、対先生についても同じことだ。
 人間はそれほど完全なものではない。
 繰り返し言うが、問題因子はすべての先生の中にある。
 それを発現させないことだ。発現しにくくすることだ。

 その答えが、働き方改革の中にあると思うなら、それを進めればいい。
 学校運営の制度や仕組みにあると思うなら、それを改善すればいい。
 あるいはまた、職場のコミュニケーションの中に答えがあると思うなら、そこを追求すればいい。

 残念なことに、正解がまだ発見されていない。
 そこが辛いところであるが、先生方には、こうした残念な事件を契機に、いま一度学校のあり方を見直していただきたいと思うのである。