私は仕事が早い方である。なんてことを自分で言っちゃいけない。
だが、結構な数の人がそう言ってくれるので、お世辞半分としてもまあまあ早い方なのだと思う。
では、早さの秘密は何か。
仕事に取りかかるのが早いからである。
実は、仕事そのものの早さは人並みなのだ。
だが、仕事に取りかかるまでの時間がほとんどかかっていない。
その点、組織に属する皆さん方は、始めるまでの手続きが必要だ。
私だったら、取引先から「これ、お願いできますか」と尋ねられたら、その場で「はい、承りました」と即答し、その日のうちに取りかかることができる。
その仕事を受けるかどうかは、自分一人の判断でいいのだ。
しかし、組織に属する皆さんはそうは行かない。
いったん「社に持ち帰って検討させてもらいます」となるだろう。
私のように「会社イコール自分」ではないのだから当然だ。
社に戻ったら上司に報告、連絡、相談する。
そこで上司が即決してくれればいいが、みんなの意見を聞いてみようとなったりする。
ちょっと関係者を集めて検討会議を開こうかとなったら、さあ大変。
日程調整とういうやつが待っている。
これがなかなか厄介だ。
当然、今すぐに出来るわけがないから、その段階で一日二日は費やしてしまう。
その頃、私はもう仕事に取りかかっている。
会議を開く以上、資料が必要だ。
それを作るのに、また一日二日かかる。
結局、会議を開けたのは1週間後。
その頃、私はもう仕上げにかかっている。
決まれば仕事そのものは決して遅くない。
よほど特殊な仕事でない限り、個々の生産スピードはさほど変わらないのだ。
だが、組織の場合、生産に取りかかる前の手続き面倒であり、時間がかかるのだ。
よって、仕事を早めようとしたら、報告、連絡、相談、調整、共有、打ち合わせ、会議など、生産そのものではない行為をいかに減らし、場合によってはなくすかが勝負になる。
ということは、あらゆるビジネス本に書かれている。
ここに挙げた行為に日々かける時間は、私の場合、0時間である。
だから早くなる。決して生産スピードが人より勝っているわけではない。
ついでにもう一つ。
◆3人いても1人分の仕事しか出来ない不思議
ある組織に、AとB、二つのタスクがあったとする。
要員(スタッフ)は二人である。XとYとしておこう。
仕事の分担の仕方は二つある。
第一は、タスクAはXが担当、タスクBはYが担当と、タスクごとに分けてしまう方法だ。
第二は、タスクAとタスクBを、XとY二人で担当するという方法だ。
どちらがいいかは一概には言えない。
ケースバイケースだ。
私が体験してきた学校職場は、どちらかと言うと第二の方法を選びがちだった。
スピード優先なら、第一の方法が優れている。
お互い、他人のタスクには関わらないので、連絡調整も情報共有も打ち合わせも会議も必要ない。
だから、その分早い。
学校職場には、「みんなで話し合ってみんなで決めてみんなで行う」という文化がある。
みんなで行わなければならないことが多いので、そうなりがちだ。
もちろん、それはそれで良い面もある。
ただ、たくさんのタスクにたくさんの人が関わるという方法だと、生産性が低下する危険性がある。
◆担当者を増やすと負担は増加する
「1+1+1」は算数では合計3になる。
仕事も同じだ。
だが、もしその中に1人だけ(-1)がいたら、「1+1-1」で合計は1にしかならない。
3人いるのに、なんで答えが1にしかならないんだ。
だったら、始めから1人でやればいいじゃないか。
大変そうな仕事みたいだから、担当者をもう1人つけてあげよう。
一見、負担の軽減になりそうだ。
しかし、これによって連絡調整、情報共有、意見交換、打ち合わせの時間と労力が増える。
なまじ担当者を増やすと仕事の総量は増えるのだ。
それでも、その追加担当者が(+1)の人間だったらいいが、命じられたから仕方なくみたいな(-1)の人間だったら、ゼロになってしまうではないか。
担当者を増やすのは、足し算をしているようでいて、実は引き算になってしまうこともある。
組織というのは難しいものだ。
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