毎日発信される学校情報を見ていると、時たま「おいおい、それ大丈夫か」と思われる記事に遭遇する。
 今日取り上げるのは杉戸高校の「いいからやれ」問題。
 事の発端は、インスタグラムに投稿されたこの映像。
【12月5日追記】現在、この投稿は見られません
 


 同校では、期末考査を前に「8時間耐久の勉強マラソン」なるものを実施した。
 学校と家、合わせて8時間勉強しようという呼びかけだ。
 当該の動画は、必死で勉強に取り組む生徒たちの様子を伝えようとしたものだが、よく見ると教室前方に「いいからやれ」と毛筆で書かれた標語が貼りだされている。
 で、ここに早速食いついたユーチューバーがいたこともあり、今度は学校もそれをメインに据えた動画を新たに発信した。
 ホームページにも記事を掲載した。

【12月5日追記】現在記事内容は若干修正されているようです。
 音声あり☆【12月4日(月)の杉戸高校】いいからやれ(12月4日 杉戸高校ホームページ)

◆若者に嫌われる「いいからやれ」
 「いいからやれ」は、今もっとも若者に嫌われる言葉の一つだ。
 たとえば、企業で上司が部下に対して、「いいからやれ」を連発したら、パワハラ認定されても不思議ではない。
 それほどの要注意ワードなのだ。
 部下への指示命令は、「なぜ、これが必要なのか」「どういう目的でやるのか」「これによって得られるものは何なのか」を懇切丁寧に説明しなければいけないとされている。

 たしかに、意味目的も分からずやるよりも、きちんと理解した上でやったほうが生産性も上がるし、ミスも少なくなるだろう。臨機応変の対応も可能だろう。
 「電話にはすぐ出ろ、いいからやれ」では、どこの誰が何を言ってくるか分からない実戦場面では応用が効かず苦労するだろう。
 意味や目的を理解しているから、その場その場の応用も可能になるのである。

 学校での教育も然りで、意味目的をしっかり説明し理解させたほうが最終的に結果が良いことがほとんどだ。
 また、そもそもの意味目的を生徒自ら考えさせようとするのが、今日の教育だ。

◆誤解を避けるために
 そんな今日的流れを全否定するような「いいからやれ」なのだが、案外賛同する先生も多いのではないかと想像する。
 もちろん試験勉強という限定されたタスクの中での話であるが、意義だ理由だとつべこべ説明している時間さえももったいない。
 「とにかくやれ」「とにかく覚えろ」「とにかく繰り返せ」が最短距離である場合も少なくない。
 
 しかし、それが言いにくい世の中だ。
 ここだけ切り取れば、何と理不尽な学校(先生)だろうかと糾弾されかねない。

 今回の場合、「8時間耐久勉強マラソン」の意味目的は事前に生徒に知らされているだろう。
 「いいからやれ」の標語は担任からの励ましメッセージだろう。
 「みんな頑張れよ」の言い換えだ。
 生徒たちもそのように受け取っているだろう。
 関係性が出来上がった中での半ばジョーク、若者流に言えば「ネタ」みたいなものだ。

 ただ、世の中にはいろいろな人がいる。
 学校を、常に肯定的、前向きに評価してくれる人ばかりではない。
 たまたま見た中学生が、「いいからやれ」と無理やり勉強させられる学校と誤解しないとも限らない。

 「いいからやれ」の先生が、本当は優しく生徒思いであることが分かるような動画や、「いいからやれ」の結果、成績が上がって喜んでいる生徒の動画などをリリースしておくのも一つのアイディアだ。