埼玉県教育委員会より令和9年度入試に関するリーフレットが公開されたのでお知らせしておこう。

 令和9年度公立入試制度に関するリーフレット(12月11日公開)

 特に新しい内容はないが、現段階で決定していることの総まとめとして保存しておくことにしよう。

 変更点は大きく三つにまとめられている。
1 調査書の様式変更と自己評価資料の提出
2 面接をすべての受検生に
3 選抜の特色化

◆調査書の様式変更と自己評価資料
 調査書の記載事項は「各教科の学習の記録」(9教科5段階の評定)のみとなる。
 委員会活動、部活動、資格取得などは、受検生自身が作成する「自己評価資料」に記入する。
 ただし、「自己評価資料」に記入された内容や、「自己評価資料」そのものが得点化されることはない。あくまでも面接の際の参考資料である。

◆面接をすべての受検生に
 徐々に実施校が減少する中で、まさかの大復活。
 今回の制度改革における最大のトピックスと言えそうだが、その重みは学力検査や調査書と比べたら微々たるものだ。

 しかし、これを入れないと、選抜資料が学力検査と調査書(9教科評定)のみとなってしまい、現行制度との落差があまりにも激しい。そこで、「部活動など勉強以外の頑張りは面接で聞きます」という形を取ったのだろう。
 本気で面接を重視するなら、現行の1回入試制度の下では困難で、前期・後期制など2回入試制度に戻すしかないだろう。

 高校側は個人面接と集団面接どちらかを選択できるが、受検生、面接官双方の負担を考えれば集団面接を選ぶ学校が多いと予想できる。

◆選抜の特色化
 それぞれの高校が特色化を図るのはいいだろう。
 そのためには選抜の特色化も図らなければならないというのが、今回の狙いの一つである。

 しかし、選抜資料は学力検査、調査書、面接の三つに限定されているから、その割合の調節でしか特色の出しようがない。
 強いて言えば、「特色選抜」を選んだ場合、第四の選抜資料として「特色検査」があり、ここに従来からの実技に加え、「作文(小論文)」が加わっているので、ここで特色を出そうとする学校が出てくるかもしれない。

 学力検査問題と学校選択問題は、従来通りどちらかを採用することになるが、これを機に学校選択問題に切り替える学校が出てくる可能性はある。
 また、この際、傾斜配点を取り入れようという学校も出てくるかもしれない。
 ただ、どちらにしてもほんの数校だろう。

◆特色化は複雑化
 県教委が「選抜の特色化」を打ち出している以上、各高校はほぼこれまでどおりというわけにも行かず、それらしい特色を出さなければいけない。
 かくして来年12月に向け、「特色化打ち出し合戦」が始まるわけである。

 しかしながら、受検生の側からすれば、特色化はイコール複雑化なのである。
 「本校の入試はこのような特色があります」と言っても、それは「本校の入試はこのように複雑です、面倒です、難しいです」としか聞こえない。

 浦和、大宮クラスを目指そうという生徒なら、どんなに複雑な制度にしてもついてくるだろう。(実は学力検査重視という点においてもっともシンプルなのだが)
 だが、そこから徐々に下がってくると、「特色化=複雑化」が受検生を遠ざける要因にもなってくる。

 各高校が現状のポジションと、次に目指すべきポジションを踏まえ、どのような制度設計をするかに注目しておこう。

◆私立の対応
 ここまで公立のみの話をしてきたが、私立についても少し触れておこう。
 私立に関係ありそうなのは、三つの変更点のうち、1と2だろう。

 中学校側が送って来る調査書には、9教科の評定しか載っていない。部活動や資格については何も書いていない。出席日数も記載されていない。
 よって、これらの情報を得るには受検生の自己申告によるほかはない。働き方改革が叫ばれている時代に、中学校側に公立用、私立用の二通の調査書を書いてくれとは言えないだろう。

 私立でも面接を課している学校は少ない。あっても単願希望者くらいだろう。
 しかし、これからの受験生は全員が面接の練習をしなければならない。不安を持っている生徒も多い。
 そこで、「うちは面接がありませんから」とアピールするのも一つの手であるし、併願者には「公立の練習になりますよ」とアピールする手もある。個人的には面接の新規導入ないし再導入はおすすめしないが、受験生が何に不安を抱いているかは知っておくべきだろう。