杉戸高校学校説明会で入試講演を行った。
「【11月7日(土)の杉戸高校】第3回学校説明会 お礼メッセージ」(同校HP)
学校説明会のプログラムに外部講師による入試講演を組み込む例は、たまにはある。
ただ、時期的にどうなんだろう。
春先の説明会であれば、受験生としての心構えや入試制度の仕組みなどを解説してあげるのは、それなりに意味のあることだろう。
しかし、すでに11月である。
いよいよ志望校を本気で絞り込んでいかなければならない時期だ。
参加者が一番聞きたいのは詳しい学校情報であり、学校側もまた、少しでも学校理解を深めてもらおうと、さまざまな情報提供を行いたいところだ。
そのような時期に外部講師による入試講演にどれほどの意味があるのだろう。
そんなことを考えながら引き受けた仕事である。
ただ、こちらもプロの端くれである。どんな時期、どんな環境であっても、学校と参加者(受験生・保護者)の双方に満足していただける講演にしなければならない。
◆聞く側の準備は完璧だった
今日まず驚いたのは、参加者の出足の早さだ。
開会20分ほど前には、7割から8割方の参加者がすでに着席していた。
開会予定は9時30分だったが、5分前に始めても何の問題もなかっただろう。
もう一つ驚いたのは、見学に来てくれた山本直登先生の指摘によるものだが、スマホをいじくり回している保護者がいなかったことだ。
では何をしているかというと、配布された学校パンフレットや資料を熱心に読んでいる。
つまり予習をしているわけだ。
聞く側の準備は完璧である。
あとは、こちらがどれだけ有益な話を提供できるかだ。
講演内容を詳細に紹介することはしないが、いくつか印象に残った場面を紹介しておこう。
◆「覚えていません」は良い答えだ
冒頭は、10月29日に結果が発表された第1回進路希望調査の話である。
この時期の調査には、志望校を固く決めている「不動」の生徒と、まだ迷っている「浮動」の生徒が混在している。
だから、今後「変動」する。
これは私が以前から繰り返している主張だ。
ここで中学生に質問してみた。
「この調査、中学校によって実施時期が多少違うと思うけど、皆さんはいつごろやりましたか」
一人目。
「覚えていません」
二人目。
「忘れました」
よし、いい答えだ。
もちろん偶然だが、こちらの言いたいことを見事に証明してくれた。
ほらね。いつ答えたのかも覚えていない人がいるんだよ。
それで仕方ないし、この時期の進路希望調査とは、そういうものなんだ。
だから、そこで出てきた倍率に振り回されてはいけない。
むろん、真剣に考えて回答した生徒も大勢いるだろう。ただ、全員が最終決定として回答したわけではないということだ。
◆これから習うことが入試に出る
次は勉強の話。
これからの中学校での授業は非常に重要だ。
評定を少しでも上げるためという理由もあるが、それ以上に、今習っていること、これから習うことが入試でよく出題されるからだ。
例えば数学。
相似はすでに習っていると思うが、相似を利用する問題は毎年のように出ている。
これから習う三平方の定理も、ほぼレギュラー出演だ。
英語なら関係代名詞。社会なら公民分野の後半に登場する経済関係。
要するに、これから習う内容には入試の重要事項がいくつも含まれている。
だから、学校の授業を大切にしてほしい。
調査書対策という意味もあるが、それ以上に学力検査対策なのである。
得意科目と苦手科目のどちらを重点的に勉強すべきかという質問もよく受ける。
答えは簡単だ。
「両方だよ」
ゲームだって、攻撃だけでは勝てない。防御も必要だ。
得意科目は攻撃力、苦手科目の克服は防御力の強化と考えればいい。
◆「一応やってます」が一番危ない
続いて過去問の話。
「皆さん、過去問やってますか。『やってます』『一応やってます』『やってません』の三つから選んでください」
予想どおりの結果になった。
「やってます」は少数。
「やってません」はごく少数。
多数は「一応やってます」だった。
「やってます」と答えた人は、なかなか有望である。
では、その次に有望なのは誰か。
私は「やってません」と答えた人だと思う。
まだやっていないが、これから本気で取り組むかもしれない。
一番心配なのは「一応やってます」という人だ。
この「一応」が受験勉強では実に危険なのである。
やっているような、やっていないような。分かったような、分からないような。
中途半端な状態で安心してしまう。
「一応」が取れたら、合格に一歩近づく。
そんな話をした。
◆過去問は同じ場所を5年分続けて解く
今年から学力検査の解答方式にマークシートが導入される。
だからといって、出題内容や難易度が変わるわけではない。
答えを導き出すところまでは同じだ。
最後に解答用紙へ数字や文字を書くか、マークを塗りつぶすか。その違いである。
したがって、基本的な勉強方法も変わらない。
ここで、過去問のちょっと変わった使い方を紹介した。
例えば国語の大問1だけを、5年分連続して解いてみる。
使われている文章は毎年違っても、問われる内容や形式に共通点があることに気づくだろう。
他教科も同様だ。
過去の問題を見比べると、同じような知識や考え方が繰り返し問われていることが分かる。
過去問は単に得点を測る道具ではない。
出題の傾向を知り、準備すべきことを発見するための道具でもある。
◆料理のレシピを暗記してから作る人はいない
もう一つ、過去問の使い方について話した。
ここでは保護者、お母さんに質問してみた。
「初めて作る料理があるとき、レシピを全部暗記してから作り始めますか」
お母さんは首を横に振った。
そうですよね。
レシピを見ながら作るんですよね。
そして、2回、3回と作っているうちに、レシピを見なくても作れるようになる。
勉強だって同じだ。
分からなければ、解答や解説を見ながら解いてもいいのである。
最初から何も見ずに解けなければいけない、などと考える必要はない。
大事なのは、解説を見て理解し、次は自分の力で解けるようになることだ。
インプットしたらアウトプットする。
できなかったら、もう一度インプットし直し、再びアウトプットする。
この繰り返しによって、初めて本当の実力が身につく。
レシピを見ながらでいいから、とにかく作ってみよう。
◆最後は個別相談への橋渡し
そろそろ持ち時間が終わる。
最後に、こんな話をした。
「今日、このあと時間のある方は、ぜひ個別相談を受けていってください」
高校の先生と直接話せる貴重な機会だからだ。
例えば「高校に入ったら、こんなことを頑張りたいと思っていますが、どうでしょう」と聞いてみる。
これは立派な面接の予行演習になる。
ひょっとしたら、今日相談に乗ってくれた先生が、本番の面接官になるかもしれない。
そんな偶然はめったにないかもしれないが、学校の先生と直接話した経験は、少なくとも面接への心理的なハードルを下げてくれるだろう。
面接を必要以上に恐れることはない。
杉戸高校も、受験生の良さを引き出す面接にしたいという考えを示している。
だったら、まずは自分の言葉で話してみよう。
そんなわけで、最後は個別相談への参加を勧めて講演を終えた。
◆11月の入試講演にも役割はある
さて、冒頭の疑問に戻ろう。
11月の学校説明会で、外部講師による入試講演を行う意味はあるのか。
今回、私なりに一つの答えを得た。
春先であれば、入試について広く知ってもらう講演が求められる。
しかし11月であれば、すでに志望校がある程度固まっていることを前提に、そこへ合格するための具体的な準備を語ることができる。
しかも、学校の先生とは異なる立場から、受験勉強の方法や倍率との付き合い方について助言できる。
学校側が学校の魅力を伝え、外部講師が合格に向けた行動を後押しする。
そして最後は、学校の先生との個別相談につなぐ。
こう考えれば、11月の入試講演にも十分な役割がある。
ただし、外部講師が好き勝手に50分話せばよいというものではない。
学校がこの時期に何を伝えたいのか、参加者が何を求めているのか。その両方を理解した上で、自分の役割を考える必要がある。
学校説明会の主役は、あくまで学校と受験生・保護者である。
外部講師は脇役だ。
主役同士の距離を少しでも縮めることができれば、呼んでいただいた意味はあったというものだ。

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