生徒募集では「点」をつないで「線」にする発想が重要である。
 と、これだけ言っても意味が分からないと思うので、ゆっくり解説する。

 生徒募集活動のゴールは出願である。
 受験生が、最終的に願書を提出し、試験を受けてくれなければ、それまでの活動は徒労に終わる。
 惜しかったね、では済まされない。
 次がんばろう、もない。
 よそへ行ってしまった受験生は二度と戻って来ない。
 成功と失敗がこれほど明確になる活動は少ない。

◆「始点」を「終点」につなげられるか
 いま仮に、合同説明会などの進学イベントを想定してみよう。
 そこではブースを訪れてくれた受験生との間に接点ができる。
 これは「始点」である。
 
 では、この「始点」がそのまま一直線に「終点」、すなわち出願までつながってくれるかというと、そう簡単ではない。
 受験生側は複数の学校ブースを訪ね、いくつもの「始点」を作っているからである。
 つまり、先につながる「点」と、そこで終ってしまう「点」があるのだ。

 さあ、いくつかの選ばれた「始点」が次の「点」につながった。
 「点」と「点」がつながって「線」ができた。
 「終点」に少しだけ近づいた。

 だが、まだ安心できない。
 この間に、受験生の中に別の新しい「始点」ができているかもしれないからだ。
 そちらをのばされると、こちらは終わってしまう。
 いくつもの「点」を線でつなぎながら、最終的に「終点」までたどり着いてもらわなければならない。
「始点」と「終点」をつなげた学校の勝ち。
 生徒募集とはそういうことなのだ。

◆「始点」を作るのは簡単
 「始点」を作るのは比較的容易である。
 フェアに出展すれば、いくつかの「始点」ができる。
 学校説明会を開催すれば、そこでも「始点」ができる。

 ただし、自動的に「終点」につながるとは限らない。
 
 このあたり公立の先生方はかなり楽観的で「始点」だけ作って、それっきりというケースが多い。
 その一方、私立の先生方は巧みで、「始点」を作ったら、次にもう一つ「点」を作り、そのまた先にさらに「点」を作りという形で「終点」まで導いて行く。
 
◆次の「点」を用意しているか
 「始点」をただの「点」に終わらせないためにはどうしたらいいか。
 次の「点」を用意することである。
 そして、その「点」はできれば近いところにあったほうがいい。

 フェアで「始点」ができたとしたら、直近の説明会や体験入学などに誘導する。
 公開授業でもいい。文化祭でもいい。
 とにかく「始点」を次の「点」につなげることが必要だ。
 プツンと切れたら、そこで終わり。

◆「またね」と言って見送る
 これは実際に行い、それなりに成果を上げた手法なので紹介しておこう。
 説明会の最後に「さようなら」と言ってはいけない作戦。

 「さようなら」は別れの言葉だ。
 「さよならは別れの言葉じゃなくて、再び会うまでの遠い約束」という昭和に流行った唄があったが、やはり「さようなら」は別れの言葉である。
 そうか。これで終わりなんだ。
 二度とこの学校に来ることはないだろうな。
 などと思われたらそこで終了だ。

 では、何と言う。
 「またね」
 では、ちょっと軽いから「またどうぞ」「また来てください」あたりか。
 「次は文化祭でお待ちしてます」
 「授業(部活)見学でお会いしましょう」

 われわれが飲食店などに行った場合でも、ただ「有難うございました」ではなく、「また是非お越しください」と言われたほうが何となく感じがいいだろう。
 それと同じ。

◆「線」の発想で設計されているか
 以上のように考えると、さまざまな生徒募集イベントが「線」でつながるように設計されているのが理想だ。
 ただ、これはそうそう上手く行くものではない。
 さまざまな学校行事が立て込む中、何とか生徒募集イベントを組み込んでいるのが実情だからだ。

 しかし、そんな中でも、せっかく作った「始点」を次の「点」につなげようという意識を持つと、今までとはちょっと違った結果が得られるだろう。 
 今日の説明会には何人来てくれた。
 今日のフェアでは何人ブースに来てくれた。
 これで満足し安堵してはいけない。
 重要なのは、そのうちの何人が次の「点」までつながってくれるかなのだ。