よみうり進学メディア11月号授業特集の取材で開智未来高校に行ってきた。
 このところ毎週加須に行っている。
 先々週 不動岡高校
 先週  花咲徳栄高校
 今週  開智未来高校

◆開智未来高校について復習(おさらい)
 読者の皆さんは埼玉県内の教育関係者が多いので、今さら説明の必要もないだろうが、ここで改めて開智未来高校について復習(おさらい)しておこう。
 創立は2011年(平成23年)と新しい。
 所在地は加須市麦倉。
 以前は北埼玉郡北川辺町麦倉であり、ここに県立北川辺高校があった。
 北川辺高校は2010年(平成22年)に栗橋高校(現栗橋北彩)との統合という形で事実上閉校となり、その跡地にできたのが開智未来高校だ。
 開校にあたり内部はリノベーションされ校舎も新増設されたが、その外観には今なお県立高校時代の面影が残る。

 多くの埼玉県民にとって利根川の向こうは群馬・栃木・茨城という感覚だろうが、この学校は利根川を渡ったその先にある。
 徒歩での最寄り駅は東武日光線「柳生駅」(徒歩20分)だが、ここから歩く生徒はあまりいないだろう。
 

東武日光線「柳生駅」


 スクールバス利用の場合、栗橋駅・南栗橋駅・鴻巣駅・加須駅・羽生駅(以上埼玉県)、古河駅(茨城県)、舘林駅・板倉東洋大前駅(以上群馬県)からとなる。
 お世辞にも恵まれた立地とは言えないが、その特色ある教育に惹かれ入学を希望する生徒は多い。

 募集人員は併設中学校からの内部進学を含め200人と少ない。
 そのため「〇〇大学〇名合格」といった数の勝負では目立たないが、卒業生数を分母とした難関大合格率でみると県内トップレベルの進学実績を残している。
 2024年春の卒業生は149人で、国公立大学合格数は40である。

 今や当たり前になった探究学習やICT教育に関しては開校当初から力を入れている。
 コロナの3年前、2017年度から1人1台のタブレット導入を実現している。
 学びの基礎として「哲学」を取り入れているのも他校にない特色だ。
 プレゼン能力の開発にも力を入れており、その集大成である「未来TED」は県内外の教育関係者からも注目を浴びている。

◆新米教師の成長ぶりは?
 冒頭述べたように今日は中学生向け新聞の取材目的だ。
 毎年この時期、「これが高校の授業だ」と題する特集を組んでいる。
 1時間丸々授業を見学してその様子を伝える。

 だが、個人的にはもう一つ別の目的があった。
 今回学校側から推薦があった野中俊希先生の授業は以前にも見学したことがある。
 6年前、彼がまだ新卒1年目の時だ。
 はたして期待の新人が6年の歳月を経て、どんな成長ぶりをみせているかそれを確かめたい。
 これが今日の目的だ。

 以前の授業見学の際、ブログに次のような記事を書いた。

 直球一本やりの若手の授業も頼もしい(2018年9月)

 キラリと光るものは感じたが、「まあ元気があっていいんじゃないの」というのが当時の感想だ。
 が、6年の時を経て、期待にたがわぬ成長を遂げていた。
 これは正直嬉しい。

 何が変ったか。
 一番大きいのは、生徒との呼吸だ。
 最初に見たときは、これが全然合っていなかった。
 一人突っ走っている感じ。
 だが、いろいろ研究を重ねたのだろう、ぐいぐい引っ張る授業から生徒と併走するような授業に変わってきている。

 以前見た時もグループワーク的なものは取り入れていたが、生徒の思考がそれほど深まっているとは思えなかった。
 が、今日の授業は明らかに違っていた。
 一言で言うと、生徒たちが考えることを楽しんでいるようであった。
 素直で優秀な生徒たちであるから、考えろと言われればそうするだろう。
 だが、それでは思考は深まらない。
 考えることに喜びを見出すようでなければ深い思考には至らない。

 これを可能にするのは「発問」の技術だろう。
 「質問」ではなく「発問」だ。
 この違いは、ブログ読者である先生方にはお分かりだろう。
 既習の知識を確認するならただ「質問」すれば済むが、生徒たちを未知の領域にいざなうには「発問」の技術が必要だ。
 「質問」から「発問」へ。
 ここに大きな進歩が見られた今日の授業だった。

 また3年後ぐらいに見に行こうか。
 
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