週末に中学1・2年生向け入試講演があるので、そのための資料(パワポスライド)作りに精を出した。
 話すテーマは大きく二つ。
 一つは授業料無償化。もう一つは令和9年度公立入試改革。

 令和9年度公立入試改革では、おそらく全員面接や自己評価資料提出に注目が集まっているだろう。
 面接に関しては、学校側が選抜資料としての客観性や、合否判定における有効性に課題を感じていたであろうことは、その歴史が物語っている。実施校は増えることはなく減る一方であるのがその証拠だ。
 そんな客観性や有効性に欠ける面接を、この期に及んでなぜ全員必須にするのか。
 表向きは、中学校教育の変化や「学力」の再定義に伴うものということになろう。
 しかし、ここには受験生に堂々とは言えない大人の事情というものがある。

 全員面接は、調査書(内申書)スリム化への対応である。
 部活動の地域移行(地域クラブへの移行)が進んでおり、中学校が「生徒の学校外での活動」を正確に把握し、調査書に記載することが困難になってきた。
 そこで、調査書記載内容は、学習の記録のみと簡素化された。が、その結果、数値化された評定以外の「意欲」や「実績」を評価する場が失われた。
 しかしながら、評定だけでは分からない生徒の多様な活動や努力を把握しなくていいのだろうかという考えが一方にある。では、そのこと(活動や努力)は、本人から直接「自らの言葉」(県教委はこれをオシャレにマイボイスと呼んでいる)で聞くことにしよう。という流れで全員面接が必要になった。

 全員面接は、「自己評価資料」とのセット運用となる。
 この資料自体は点数化されないが、面接の際の重要な参考資料となる。
 「自己評価資料」は面接において台本(シナリオ)の役割を果たすことになるだろう。
 受験生があらかじめ考え、練習してきた内容を、面接官がそのとおりに聞く。表向きは、「学びに向かう力」を多角的に評価するとか、「思考力・判断力・表現力」を試すとかいろいろ言えるが、台本通りに話すのであるから、実はもっとも大事なのは「演技力」である。それは面接官も同じ。

 本来、面接には「学力オンリー」になりがちな入試を防止する効果があるが、たった1回、それも5分程度の面接にそれを求めるのは無理があるだろう。面接導入は制度開始と同時に形骸化するだろう。
 この改革は、現場(学校側)が「面接をやりたい」と言い出したのではなく、「中学校の調査書が変わる中で、生徒の個性をどう拾い上げるか」という課題に対する県教育委員会としての仕組みの再構築である。

 前述したように、今回の面接導入は調査書のスリム化に伴うものである。
 これまで調査書に記載されていた「特別活動(部活動・生徒会)」や「検定などの実績」の加点欄が事実上なくなり、調査書の得点は「9教科の評定(内申点)」のみに集約された。
 すでに発表された各校選抜実施内容を見れば明らかだが、面接に重きをおく学校はきわめて少数であり、「学力検査」と「調査書の評定(内申点)」の比重が高い学校がほとんどである。一体何のための面接かと言いたくなるほどだ。
 多くの進学校では、第1次選抜で「学力検査:調査書:面接」の比率を極限まで学力側に傾けていると言っていい。上位校の中には「傾斜配点」を導入する動きもあり、実力勝負の側面がより強化されている。

 上位校が面接の配点を低くしているのは、「面接によって合否を左右したくない」という本音の表れであろう。しかし、制度として導入せざるを得なかった背景には、「調査書の信頼性低下」という全国的な課題もある。部活動の地域移行や不登校の増加により、中学校が「学校内での活動」だけで生徒を多角的に評価することが困難になっている。 調査書から活動記録を消す代わりに、生徒が自分で書く「自己評価資料」に基づき、最低限の確認を面接で行うという形式を整える必要があった。

 公立入試の二極化はさらに進むだろう。
 上位校志望者は、面接の配点が低いため、これまで以上に「1点を争う筆記試験対策」と「確実に内申点を取る」という純粋な学力競争に直面することになるだろう。
 一方、中堅以下校志望者は、一部の高校で面接の配点を高く設定している例もあることから、面接が合否の鍵を握るという「本来の役割」を果たす可能性もあると考えておくべきだろう。
 いずれにしても、今回の改革は、表面的には「面接導入による人物評価の重視」と見えるが、その実、「調査書の加点廃止」と「上位校の低配点設定」により、皮肉にも「ごまかしの利かない学力勝負」の色彩がこれまで以上に強まったと言えるだろう。

 公立上位校が「学力重視」をさらに鮮明にする中、私立高校が上位生を取り込むために展開すべき戦略は何か。
 一言で言えば、単なる「確約」を超えた「公立では不可能な体験とリターン」の提供に集約されるだろう。

 具体的に以下の4つの仕組みが鍵になると考えられる。
1 「所得制限なし無償化」を逆手に取った特待生制度の「実利化」
2 公立の「全員面接」を逆手に取った「学力特化選抜」の拡充
3 調査書スリム化」で浮いた「実績」を拾い上げる独自評価
4 埼玉特有の「確約(入試相談)」の超高度化
 これらは、次に予定されている塾の先生向け講演のテーマにしようと考えている。

 
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