高校のSNS活用というと、今やその中心はInstagramである。
 埼玉県内の公立高校では、およそ7割が学校公式Instagramを運用している。   
 私立を含めれば、公式アカウントを持つ学校はさらに多い。
 数年前まで「学校がSNSをやるのか」と言われていたことを思えば、大きな変化である。

 Instagramがここまで広がったのには理由がある。
 スマートフォンさえあれば比較的手軽に始められ、写真や短い動画を中心に発信できるため、編集にもそれほど時間がかからない。そして学校がもっとも警戒する、いわゆる「炎上」の危険性も比較的低い。

 何より、中学生が日常的に利用しているSNSである。高校の生徒募集広報として考えれば、まずInstagramから始めるという判断は間違っていなかったと思う。

◆XもLINEもYouTubeも少数派
 一方、他のSNSを見ると状況はかなり違う。
 学校公式Xを運用している高校はほとんど見かけない。公式LINEを持つ学校は数校、YouTubeチャンネルを継続的に運営している学校もまだ少数派だ。

 そしてFacebookに至っては、ほぼ皆無と言っていい。

 これはある意味、当然の結果である。
 高校のSNS活用が主として「生徒募集」の文脈で語られてきたからだ。
 中学生はFacebookをほとんど見ない。利用もしない。だったら、そこに人手をかける意味はない。
 生徒募集だけを目的に考えるなら、その判断は合理的である。

 ただ、そろそろ少し見方を変えてもいいのではないか。

◆高校広報の相手は中学生だけではない
 そもそも高校の広報対象は、中学生だけなのだろうか。
 もちろん、中学生は重要な相手である。受験してもらい、入学してもらわなければ学校は成り立たない。

 しかし学校には、もっと多くのステークホルダーがいる。

 中学生の保護者がいる。卒業生がいる。地域住民がいる。企業や大学の関係者がいる。中学校や塾の先生もいる。行政関係者もいれば、新聞、テレビ、Webメディアなどの報道関係者もいる。
 こうした人たちまで含めて考えたとき、「中学生が見ないからFacebookはいらない」という理屈は少し弱くなる。

 むしろFacebookには、Instagramとは異なる役割を持たせられる可能性がある。
 学校行事の結果だけでなく、その背景や教育的な意味を少し長めの文章で伝える。地域との連携事業を紹介する。卒業生の活躍を知らせる。大学や企業との取り組みを記録する。学校の教育方針について校長や教員が発信する。

 こうした情報は、必ずしも中学生向けではない。
 だが、学校の信頼や評価を長期的につくっていく上では重要な情報である。

◆Instagramは「募集」、Facebookは「広報」
 やや乱暴に整理するなら、Instagramは生徒募集寄り、Facebookは広報寄りと考えることもできる。

 もちろん、きれいに二分できるものではない。
 Instagramでも学校の教育理念は伝えられるし、Facebookで説明会を告知してもいい。
 ただ、主な読者を分けて考えれば、発信内容も整理しやすくなる。
 Instagramでは、生徒の日常、部活動、行事、授業風景などを写真や動画でテンポよく見せる。
 一方Facebookでは、その出来事の意味や背景まで含めて伝える。

 同じ文化祭の記事でも、Instagramなら「こんな文化祭でした」と写真中心で紹介し、Facebookでは「生徒たちがどのように企画し、何を学んだのか」まで書く。
 同じ素材を使いながら、届ける相手によって表現を変えるわけである。

◆InstagramとFacebookは親戚
 ここで大きいのは、InstagramとFacebookがまったく別世界のSNSではないという点だ。
 どちらもMeta社のサービスであり、もともと親和性が高い。
 すでにInstagramを運用している学校であれば、ゼロから新しい広報媒体を立ち上げるというほどの負担ではない。

 Instagramに投稿した情報をFacebookにも展開する。すべてを別々に作り込む必要はない。
 まずは同時発信から始めてもいいだろう。

 そのうえで、Facebookでは保護者や地域、卒業生、大学・企業関係者向けに少し詳しい説明を加える。
 これなら、学校現場にとって最大の壁である「誰がやるのか」「そんな時間はあるのか」という問題も、ある程度小さくできる。

◆7割がInstagramを持った「次」を考える
 これまで高校SNS広報では、「まずInstagramを始めよう」と言っていればよかった。
 だが、公私を合わせれば県内高校の7割以上がInstagram公式アカウントを持つ時代になった。

 もはやInstagramをやっていること自体は、特別なことではない。

 となれば、次のテーマは「SNSをやるか、やらないか」ではなく、「誰に、何を、どの媒体で届けるか」である。
 中学生にはInstagram。
 保護者や地域、卒業生、大学、企業、マスコミなども含めた広い学校広報にはFacebook。
 そんな役割分担があってもいい。

 Facebookは古いSNSだと思われている。
 たしかに、中学生向けメディアとしてはそうだろう。
 だが学校広報とは、本来、中学生だけを相手にする仕事ではない。

 そう考えると、「Facebookはもう終わった」のではなく、「ようやく高校広報で使い道が見えてきた」と考えることもできる。
 一周回ってFacebook。
 高校SNS広報の次の一手として、見直してみてもいいのではないか。