中学生向け媒体で「授業」にスポットを当てた特集を組もうと思う。
であれば、「授業」についての情報を積極的に配信している学校を取材するのがいいかな。
そう思って、いつものようにホームページパトロールを行った。
文化祭などイベントが多い時期なので、新着記事はそれらに押され気味なのだが、それでも間隙を縫って、「授業」記事を押し込んでくる学校がいくつかあった。
次の学校たちである。
それぞれの学校の「授業」関連記事をすべて取り上げるわけにいかないので、代表的な記事を1校につき1本だけ紹介する。
●岩槻
新着記事10本中3本が授業関連。
【岩槻高校 今日の授業】7限目にも、学びが動く。
●浦和西
最新情報10件中3本が授業関連。
久しぶりにグラウンドで体育の授業が実施できました
●春日部女子
新着10件中3件が授業関連
【動画】授業の様子 1年数学IA
●川口
新着10件中5件が授業関連
【赤学年 no277 2学年】~数学の授業風景 「存在しない数」を考える~
●熊谷農業
新着情報10件中5件が授業(実習)関連。
【生活技術科】カボチャの活用
●庄和
新着記事10件中2件が授業関連。
【徒然日誌】1年英語 「自身の将来」を考える
「庄和高校徒然日誌」は良質な記事を配信し続けているが、これを男子サッカー部が邪魔している印象。新着10件中6件が男子サッカー部の記事というのはいくら何でもやり過ぎだろう。
◆学校のメインイベントは「授業」
文化祭や体育祭、部活動の大会結果などに比べれば、普通の授業を紹介した記事は地味である。
PVも「いいね」も、それほど期待できないだろう。
しかし、「多くの人に見てもらえる情報」と「学校として発信する価値のある情報」は、必ずしも一致しない。
部活動や学校行事に関するニュースが新着記事の大部分を占めている学校がある。これは理解できる。いずれもニュース性があり、写真映えもする。生徒の表情も生き生きとしている。
一方、日々の授業には、そうした華やかさがない。
だが、高校生が学校で過ごす時間の大部分は授業である。行事や部活動の発信がいくら充実していても、授業の様子がまったく見えてこないとすれば、学校の本業が見えないということになる。
もちろん、授業の記事を掲載していないからといって、その学校が授業を軽視しているとは思わない。ただ、情報の受け手には、その学校が日常の教育活動にどのような姿勢で取り組んでいるのかが伝わりにくいのである。
◆何でもない普通の授業にこそ価値がある
授業の紹介と言っても、研究授業や外部講師による特別授業、大学との連携授業などに限る必要はない。
むしろ、毎日の何でもない授業に価値がある。
例えば、数学の授業で、生徒たちが問題の解き方を相談している。国語の授業で、登場人物の心情について意見を交わしている。英語の授業で、生徒同士が英語を使って会話している。
あるいは、先生が黒板を使って説明し、生徒たちが静かにノートを取っている。
それで十分だ。
授業の内容や進め方を短い文章と写真(時に動画)で紹介するだけで、学校案内やパンフレットでは分からなかった普段の学校生活が見えてくる。
特別な授業を紹介するのはもちろんよい。しかし、そればかりでは、学校行事の紹介と同じように、非日常的な場面の発信に偏ってしまう。
中学生や保護者が知りたいのは、入学したら毎日どのような授業を受けることになるのかという、ごく当たり前の情報である。
普通の授業を普通に見せること。それ自体が、学校の教育活動に対する信頼を育てることにつながる。
◆ブランド形成への効果
仮に、文化祭の記事や部活動の全国大会出場の記事が3000PVだったとしよう。それに対して、数学の授業を紹介した記事は100PVにとどまった。
PVという尺度だけで評価すれば、授業の記事は不人気記事ということになる。
しかし、100人しか見なかったからといって、発信する価値が低かったとは言えない。
その100人の中に、学校選びを始めた中学1・2年生や、その保護者が含まれているかもしれない。あるいは、その学校の教育に関心を持つ地域住民や、進路指導に携わる中学校・学習塾の先生が含まれているかもしれない。
こうした人たちが授業の記事を何度も目にすることで、「この学校は日々の授業を大切にしているようだ」「先生方は丁寧に教えているようだ」という印象を持つ可能性がある。
もちろん、記事を掲載しただけで授業の質が保証されるわけではない。しかし、継続的な発信によって、学校の教育活動を知り、関心を深めてもらう機会は増える。
ブランドは、全国大会優勝や難関大学合格者数といった目立つ実績だけで作られるものではない。
日々の教育活動を通じて、学校に対する印象や信頼が少しずつ積み重なっていくことも、ブランド形成の重要な過程である。
授業の記事は、一つひとつが大きな反響を呼ぶことはなくても、継続することによって学校全体のイメージを形作っていく。
授業の発信は、短期的な集客よりも、中長期的なブランド形成に向いた広報活動と言えるだろう。
◆単発の記事ではなく、連載(シリーズ)にする
授業の記事を時々思い出したように掲載するだけでは、学校の特色として認識してもらうことは難しい。
そこで考えたいのは定番企画にすることである。
例えば、岩槻高校は、ずばり「今日の授業」という連載タイトルを付けている。春日部女子高校も「【動画】授業の様子」とタイトルを統一している。これは上手いやり方だ。
こうした企画であれば、毎回特別な授業を用意する必要はない。
記事も長文である必要はない。写真1、2枚と、授業内容や生徒の取り組みを紹介する200~300字程度の文章があれば十分だろう。ただし、負担軽減を重視するあまり、毎回「本日は〇〇について学習しました。生徒たちは熱心に取り組んでいました」で終わってしまうのは避けたい。せっかくの取り組みが、何となく「薄っぺらい」印象を与えてしまう危険性がある。その日の授業で、生徒が何を考え、何を学び、どのような発見をしたのか。そのあたりは最低限伝える必要はあるだろう。

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