一昨日は春日部女子高校、昨日は常盤高校と、2日続けて県立高校の塾対象学校説明会に参加した。
両校は、女子校と共学校、普通科・外国語科と看護科という違いがある。しかし、説明会を聞きながら、学校広報について共通する課題があるのではないかと感じた。
それは、学校で過ごす3年間、あるいは5年間については詳しく説明されるが、その後の人生については、あまり語られないということだ。
今日は常盤高校の事例を中心に、これからの学校広報に求められる発想について考えてみたい。
◆5年一貫教育のメリットは明確だが
常盤高校は、県内唯一の看護科単科校である。高校3年間と専攻科2年間の5年一貫教育によって、看護師を養成している。
説明会では、この5年一貫教育のメリットが強調された。
一つは、普通科高校から4年制大学の看護学部・看護学科に進む場合と比べ、2年早く看護師国家試験の受験資格を得られることだ。
もう一つは費用面である。私立大学や看護専門学校などに進む場合と比較して、学費を大幅に抑えられる。比較対象によっては3分の1、あるいは5分の1程度で済むという。
これらは明確なメリットであり、特に早く社会に出て働きたいと考える生徒にとって、大きな魅力だろう。
しかし私は、これだけでは不十分と思い、学校側には一つの提案をした。
「5年先までの説明にしかなっていないのではないか」
もちろん5年一貫教育の価値を否定するつもりはない。むしろ、その価値をもっと長い時間軸で説明できるのではないか、という提案である。
◆「早く看護師になる」の、その先は
考えてみれば、看護師資格を取得することはゴールではない。そこから職業人生が始まるのである。これはすべての資格に言えることだ。
常盤高校を卒業して21歳(20歳)で看護師になった人がいる。
その1年後には、普通科高校から3年制看護専門学校に進んだ同級生が看護師になる。さらにその1年後には、4年制大学に進んだ同級生も同じ世界に入ってくる。
この3人は、いずれも同じ看護師国家資格を持つ。
では、その後はどうなるのか。
早く働き始めた2年間の経験は、どのような強みになるのか。給与や昇進に違いはあるのか。看護師長や看護部長などの管理職を目指す場合、あるいは専門性を高めるために大学や大学院で学び直す場合、どのような道があるのか。
大学卒でなければ管理職になれないという全国共通の制度はないようだが、実際の人事制度や昇進の仕組みは勤務先によって異なるだろう。
このあたりは、畑違いの私には分からない。おそらく中学校や塾の先生方も十分には説明できない。
だからこそ、学校側から情報を提供してもらいたいのである。
今は人生100年時代と言われる。60歳を過ぎても働くのが普通になり、今の中学生が社会の中心となる頃には、70歳、80歳まで現役を続ける人も珍しくなくなっているかもしれない。
さすがに50年先を正確に予測することはできないし、中学生に語っても実感は湧かないだろう。
しかし、卒業後10年、20年の人生なら、具体的な姿を示すことはできるはずだ。
◆ロールモデルが必要
学校に対してはもう一つ、「ロールモデルが必要ではないか」とも提案した。
例えば、常盤高校を卒業して10年、20年、30年という人たちが、今どのような人生を送っているのか。
病院で看護師として活躍している人もいるだろう。管理職になった人もいるかもしれない。大学に進学し直した人、別の医療分野に進んだ人もいるだろう。
また、結婚や出産、育児などを経験し、働き方を変えた人もいるはずだ。
そうした卒業生の姿を紹介してはどうか。
ここで大切なのは、成功者だけを集めないことである。
華々しい経歴を持つ人や、管理職として出世した人だけがロールモデルではない。
仕事と家庭を両立させている人、現場で患者に寄り添い続けている人、一度離職して復職した人など、それぞれの生き方に価値がある。
成功者の紹介ではなく、さまざまな生き方の紹介。
それこそが、15歳で将来の職業を選ぼうとしている中学生や、その保護者にとって、有益な情報になるのではないか。
「5年一貫教育のメリットを説明すること」と「5年一貫教育を選んだ人の人生を見せること」は、似ているようで違う。
前者は制度の説明であり、後者は人生の可能性を示すことである。
◆女子校の良さは3年間だけではあるまい
この話は、前日に訪問した春日部女子高校にも通じる。
同校では、女子校ならではの教育環境や学校生活の魅力が説明された。
それ自体はもちろん大切なことである。
しかし、女子校で学んだこと、女子だけの環境で3年間を過ごしたことが、その後の人生にどのような影響を与えたのかという話は、あまり聞かれなかった。
女子校の良さは、在学中だけのものなのだろうか。
そんなことはないはずだ。
例えば、女子だけの環境でリーダーシップを発揮した経験が、社会に出てからどう生かされているのか。学校生活を通じて培われた自立心や主体性が、職業人生や家庭生活にどのような影響を与えているのか。
これらを卒業生自身の言葉で語ってもらえば、女子校の価値を、より具体的に伝えられるだろう。
常盤高校の5年一貫教育も、春日部女子高校の女子教育も、学校で過ごす期間だけで評価されるものではない。
その後の人生でどう生かされているかまで含めて、初めて教育の価値が見えてくるのである。
◆3年間、5年間の先にある人生を見せる
学校説明会では、教育方針、授業、行事、部活動、施設、進路実績などが紹介される。
どれも必要な情報である。
しかし、多くの場合、説明は卒業時点で終わってしまう。
大学に何人合格した。どの企業に何人就職した。資格取得率は何%だった。
それらは重要な成果であるが、途中経過でもある。
大学合格が人生のゴールではないのと同様、就職や資格取得も人生のゴールではない。
学校広報においても、もう少し時間軸を延ばしてみてはどうだろう。
もちろん、卒業生全員のその後を追跡する必要はない。何人かの卒業生に協力してもらい、その人たちの歩んできた道を紹介するだけでもいい。
華やかな成功談ばかりでなく、迷いや苦労、方向転換も含めて紹介すれば、かえって学校への信頼が高まるかもしれない。
学校広報は単に志願者を集めるための活動ではなく、受験生が自分に合った学校を選べるようにする活動でもあると考えている。
そのためには、学校の現在を伝えるだけでは足りない。
「入学後の3年間、5年間を説明する広報」から、「卒業後の人生まで見通せる広報」へ。
そんな発想の転換があってもいいと思う。
常盤高校の5年一貫教育の価値は、5年間だけで評価されるものではない。その後の50年間でこそ真価が問われる。
むろん、学校が卒業生の50年間の人生に責任を負うという意味ではない。しかし、卒業後の人生の可能性を示すことはできる。
これは常盤高校だけでなく、専門高校にも、普通科高校にも、男子校にも女子校にも共通する課題である。
入学してから卒業するまでの学校生活を売り込むだけでなく、その先に広がる人生の可能性を伝える。
そんな学校広報が、増えてくれると嬉しい。

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