埼玉県内私立高校の入試が4日後に迫ってきた。通常でも受験数日前は落ち着かないものだが、今年は対コロナの不安が加わる。
 ある私立高校からの情報によれば、すでにコロナの影響で受験できない生徒が若干名出ているとのことである(家族が感染、本人は陰性)。また、経過観察期間等の関係で、学校側が設定した追検査日の受験も難しいというケースもあるらしい。

◆あと数日、こまめな情報発信を
 とにかく、あと数日、数週間、何とか入試を乗り切りたいというのが高校側の切なる願いであろう。
 で、これは受験生・保護者も同じ気持ちであろうから、高校側はこまめに情報発信し、少しでも不安が和らぐよう配慮してほしい。

 これは私個人の要望であり、受験生・保護者側にどれだけの需要があるか分からないが、「入試は予定通り実施します」といった当たり前の情報であってもWEBサイトのトップページの目立つところに掲示して欲しいのである。
 何か変更があったらホームページでお知らせしますというのではなく、「特に変更事項はありません」とお知らせするのが親切というものではないのか。

 一校だけ例を挙げておこう。
 浦和実業学園高校の場合、トップページの冒頭に固定で「受験生の皆さんへ 緊急事態宣言が発令されましたが、入学試験は予定通り実施します。注意事項などは後日、ホームページでお知らせします」と発信している。
 「入学試験は予定通り実施します」。この一言で、余計な心配が一つ減るはずだ。

◆受験当日の注意を徹底する
 発熱者は受験できません
 これはどこの学校でも同じだが、こうした受験上の注意は、何度も繰り返しておいたほうがいい
 トップページに固定化するか、よく目立つバナーを貼り付けるかのどちらかだ。

 試験当日、入り口で検温する。
 これは、まあどこの学校もするだろう。
 で、学校側が用意した機器で37.5度以上だったら、受験を遠慮していただく。
 家で測ったときは36度しかなかったとか、学校の検温器が間違っているといったトラブルは避けたい。
 大事なことは、「無理はしないでください。追試験も用意しています。追試験もダメなら他の方法も準備します。決して不利にはなりません」ということを強くアピールしておくことだ。

 トラブルと言えば、先だっての中学校入試でこんなことがあった。
 現場に居合わせたわけではない。
 ホームページからの情報だ。

◆大宮開成中学校におけるの自家用車送迎をめぐるトラブル
 大宮開成中学高等学校ホームページ

 同校では、試験実施前から自家用車での送迎をしないよう呼びかけていた。
 ところがふたを開けてみたら、やはり自家用車で来校した受験生・保護者がいた。
 そこで。
 「大変残念なことに、一部の心無い方による路上駐停車・住宅街内回送、天沼テニスコ-トの目的外駐車、それを原因とする県道の渋滞によって、周辺の方から110番通報がいき、該当者に対し大宮警察署の取り締まりがありました。
 募集要項でも明確に、車でのご送迎は固くお断りしております
 バスの増便、徒歩のご案内や警備員の配置など、そのための体制も最大限整えております。
 本校では校訓「愛知和」のもと、本校の教育方針にご賛同いただける方にご入学いただきます。
 社会規範を遵守しない者、自己利益のみを考え他者に想いを致せない者は、本校の求める人間像と最もかけ離れています。
 本校が60年間この地で存立できたのは、周辺地域の信頼のおかげであることは、言うまでもありません。
 上記の方々と今後のご縁があるかどうかは甚だ疑問ですが、その行動のために大多数の正当な受験生・在校生が迷惑し、また本校の存立と今後の入試が脅かされるのは、本当に口惜しいことです
 と、怒りと嘆きのメッセージを発信した。(1月10日付お知らせ)

 ところが、次の12日入試でも自家用車送迎がみられた。
 「再三のお願いです。14日(木)第2回入試においては、絶対に自家用車・タクシー送迎を行わないでください
 今般の入試で、心無い方による路上駐停車・住宅街内回送、天沼テニスコ-トの目的外駐車、それを原因とする県道の渋滞により、大宮警察署の取締りがあったほか、本日(1/12)も依然住民の方々から苦情が絶えず(「県外ナンバーに自宅前に駐車され出られなかった等」)、本校としても対応に大変苦慮しています。
 募集要項でも明確に、車でのご送迎は固くお断りしております。
 代わりにバスの増便(=1台当たりの乗車人数を抑えている)、徒歩来校も警備員の配置で安全にお越しいただいています。
 本校では、社会規範を遵守しないご家庭、自己利益のみを考えるご家庭の入学は認めません(そもそも当入試でご縁がないことでしょう)
 心当たりのある方は、大多数の正当な受験生・在校生が迷惑し、あなたが受験する学校の存立と今後の入試が脅かされていることを、重く受け止めてください」(1月12日付お知らせ)
 と、学校側の怒りのボルテージはさらにアップ。
 ルールを守れないなら入学を認めないとまで言い切った。

 そして、来る22日からの高校入試に向け、自家用車送迎禁止を再度お願いしている。
 「来る22日(金)~24日(日)の高校入試では、絶対に自家用車・タクシー送迎を行わないでください。
 先日の中学入試において、心無い方による車両の路上駐停車(学校前県道・芝川沿いの市道)、周辺住宅街内の走行、天沼テニスコ-トの目的外駐車、それらを原因とする渋滞により、大宮警察署の取締りがあったほか、周辺地域から苦情が寄せられ、本校としても対応に大変苦慮しています。
 以前から当HPの高校「入試当日の確認事項」で、車・タクシー送迎は固くお断りしております。
 来校は必ず路線バス・自転車・徒歩のいずれかでお願いします」(1月16日付お知らせ)

◆「募集要項に書いてあります」ではダメなのだ
 以上、大宮開成の事例を長々と紹介した。
 たしかに募集要項では「自家用車での来校・送迎は固くお断りします」と赤字で強調している。
 それでも、この結果だ。

 よく読んでいないか、読んでも軽い受け止めしかしていないのだ。
 
 つまり、「募集要項に書いてあります」ではダメなのだ。
 絶対に守ってもらわなければならないことは、しつこいと言われても何度も言う。
 たしかに、悪いのは受験生側なのだが、世間はそうは思ってくれない。
 こんなことで学校イメージに傷がついたらもったいないではないか。

◆言ってダメなことはシステムで解決する
 交通ルールを守りましょう。
 と言っても、守らない人は守らない。
 言ってダメな場合はシステムで解決する方法を考える。

 首都圏最多(もしかしたら全国最多?)の受験生が殺到する栄東中学校では、「公共交通機関を利用しての移動に不安を感じる受験生・保護者の方々に配慮し」、事前予約制で駐車場を用意した(校庭を開放)。
 それで一切トラブルがなかったのかどうかは定かではないが、考え方としてはシステムで解決しようという方向だ。
 どうせ車で来たがるだろう。だったら禁止を訴えるより、駐車場を用意してしまったほうが確実かもしれない。

 受験者が多い学校、少ない学校。駅から近い学校、遠い学校。施設に余裕がある学校、ない学校。
 条件がそれぞれ異なるので、一概に何が正解かは言えない。
 まだ入学前の受験生には、在校生に対するような強い指導はできない。
 「ご理解ご協力」を仰ぐのが精一杯だ。
 よって、学校側の「お願い」は実現しないことも多い。
 
 強く、繰り返し、お願いするのが第一。
 それと同時に、お願い通りにせざるを得ない状況を作り出す工夫をしてみようではないか。