大阪市の公立小学校校長が、市の教育行政を批判する文書を松井市長宛てに送付し、これが新聞で取り上げられた。
 それに対し松井市長は、「表現の自由、言いたいことを言えばいい」としつつも、「校長だけど現場が分かってない。社会人として外に出たことはあるんかな」などと反論。
 その件を問われた萩生田文部科学大臣は記者会見で「やってみて不具合があったという報告だとすれば、耳を傾けて改善したらどうですかね」と発言した。
 以上、いずれも報道ベース。

 市長に文書を宛てたのは大阪市立木川南小学校の久保敬校長(59)だ。
 
 私が不思議に思ったのは、新聞に取り上げられた経緯だ。
 郵送したのかメールで送ったのかは不明だが、出した本人か受け取った本人のどちらかが公表しなければマスコミは知りえないのではないか。
 おそらくご本人かまたは周辺の人がマスコミに伝えたのだろう。

 もっとも、久保敬校長はそれ以前(3月)にも毎日新聞の読者投稿欄に「学ぶ権利、忘れられている=小学校校長・久保敬」といった形で投稿しているし、昨日(20日)も「ICT教育、議論不十分=小学校長・久保敬」の投稿がみられるから(同姓同名だったらごめんなさい)、ルートは元々あったのかもしれない。
 また、同小WEBサイトにも「校長メモ 4月21日(水)「学び」の保障」「校長メモ 4月22日(木)子どもの安全と学びを守るために」など、今般の大阪市の政策に対する批判的記事を掲載しているから、市政に批判的な人物として名前は知られていたのかもしれない。

 同校長は上記校長メモの中で、「学校が『学びの場』としてリアルに存在していることの意味は大きいと感じます」、「感染リスクをゼロにはできませんが、いろいろなことを総合的に考えたとき、学校は子どもにとって安全・安心な場所だと思うのです」などと述べている。
 まあこれは大筋で同意できる。
 学校は、街中や家庭よりも、はるかに感染対策は徹底している。
 昨年、長期にわたる臨時休校があった結果、その後先生も児童生徒もとてつもなく大変な思いをしたわけだから、安易に臨時休校にしてもらっては困るというのはその通りだと思う。

 なお誤解のないよう言っておくが、今般のオンライン授業のやり方に批判的ではあるが、オンライン授業を全否定しているわけではなく、この学校では1月には端末が配備され2月には試行授業を行っている(と、WEBサイトに書いてあった)。

 ただ、大阪市立木川南小学校・久保校長の「提言」全文というのを読んでみると、どうもオンライン授業云々が主題であるとは思えず、コロナやオンライン授業にかこつけた市政批判となっている。
 いや、むしろ大阪市の行政というより国の文教政策に対する批判と読み取れる。
 はたして、これを言論の自由の名の下に許していいのか。
 公務員である現職の校長が、公然と政治的主張をしていいのか。
 これは、同校長の意見に賛成か反対かとは別の話だ。

 市長も市議会議員も市民が選んだ人だ。
 かれらは政策を立案する人である。そして公務員はその政策を執行する人だ。個人として賛成か反対かは関係ない。

 この話が、もし私立学校だったら、公然と理事長批判や理事会批判をした校長は即刻更迭だろう。
 公務員で良かった。

 と、同校長に対しやや批判的に書いているが、きっと学校では子供たちに優しい、いい先生なんだと思うよ。
 それを、報道通りだとすれば、松井市長は「疲弊してやりがいが見つけらないんやったら、違う仕事を見つけたらいい」と言い放ったというじゃないか。
 我々みたいな中小企業のオヤジが言うなら分かるが、市長だからね。
 これじゃあ、ますます教員のなり手が減っちゃうぞ。