受験生向けの動画を作成中である。自前のYouTubeチャンネルは放置したままなので埼玉新聞社のサイトに載せるやつ。
 100人ぐらいは見てくれるかもしれない。

 その中で、小問ごと通過率や正答率に着目した解説をしている。
 それを知ったからといって、直ちに学力が上がるわけではない。
 と言うか、統計データやその分析を見たって勉強ができるようになるわけではない。
 学力を上げたかったら、その時間、教科書や参考書を見たほうがいい。
 そう意味では、発信側の自己満足みたいなところもある。
 
 各教科小問ごとの通過率を見てみると、90%を超えるものから、10%に満たないものまでさまざまだ。
 両極端は少なくて通過率50%前後の問題が多いかと思いきや、必ずしもそうはなっていない。
 通過率高めの問題がやたら多い教科があれば、逆に通過率低めの問題が予想外に多い教科もある。

 模試が返却された後には、小問ごと通過率を確認したほうが良いとアドバイスしている先生方も多いだろう。
 せっかく高い金を払って受けた試験だ。
 ただ偏差値や合否判定だけ見て終わりではもったいない。

 自分が間違った問題の通過率はどうだったのか。
 もしそれが、通過率90%の問題だったら、基礎力が決定的に欠けているか、不注意(ケアレスミス)かのどちらかだろう。
 特に、不注意(ケアリスミス)であった場合などは、模試であればまだ諦めもつこうが、本番だったら悔やんでも悔やみきれないだろうから、何とかそれを防ぐ手立てを考えなければならない。

 それとは逆に、間違ったり出来なかったりした問題が、通過率10%未満であったらどうか。
 出来た人がほとんどいない。みんな出来なかった。
 そういう問題であれば、できなくても仕方ないだろう。
 本番でも、こうした問題は合否への影響はほとんどない。 

 全員が正解だった問題と、全員が不正解だった問題。
 この両極端は、序列をつけることが目的の試験問題としては、その機能を果たせなかったということになる。
 そこまで行かなくても、ほぼ全員が出来たり、ほぼ全員が出来なかったりした問題は、極論すれば無かったも同然である。
 
 さて、そうなると。
 誰もが出来ないような難問は、端から捨ててかかれ、という作戦アドバイスが浮上してくる。
 それよりも、易しい問題に時間をかけたほうがいい。
 なるほど。確かに、一理ある。
 いや、三理か四理くらいあるか。

 しかし、ここで一つの疑問が湧いてくる。
 その問題が、誰もができないような難問であるかどうかを、どう見極めるかである。
 難しい!
 無理無理!
 そう判断したら、捨てる。
 でも、もしかしたら、もう少し粘れば突破口が開けたかもしれないのだ。

 統計データを見れば、これは捨てても良かったと簡単に分かる。
 あくまでも事後的に分かるのである。
 しかし、本番試験を受けている当事者が、その場で事後データを予測することはできない。
 自分は出来そうもないけど、どうせ皆も出来ないだろうから、これは捨てよう。
 そんなことが的確に予想できるものだろうか。

 そう考えると、「難問は捨てろ」の作戦アドバイスは、意外に難しい。
 直接受験生に学習指導する立場ではないので、私にとっては「難問は捨てろ」は、なかなかの難問である。
 塾の先生方は、そのあたり、どのように指導されているのだろうか。