講演会における質問の話である。
 別にこのニュースを取り上げなくてもいいのだが、とっかかりがあったほうがいいだろう。
 鎧塚俊彦氏、授業で「質問しない生徒」に複雑な思い「自己主張しなければ損をするのは本人」(7月1日、日刊スポーツ)
 鎧坂俊彦(よろいざか)さんは、世界的に知られたパティシエなんだそうである。
 事業家としても成功を収めているようだ。
 女優の故川島なお美さんと結婚していた。

 記事の元になっている投稿を探したら、あった。
 鎧坂俊彦さんの投稿

 鎧坂さんは別に質問しなかった生徒を責めてはいない。
 むしろ、「質問する気が無くなる程、つまらない授業だったのか?」と反省しておられる。
 「次回は今回の分を挽回すべくより一層理解してもらえる様に頑張ります」と。
 
 まあ菓子作りに関しては、卓越した技術をお持ちなのだろうが、授業や講演は本業ではないのだから仕方ない。
 学校や塾の先生方だったら、説明の途中に質問ネタを仕込んでおくとか、質問しやすい問いかけをするとか、雰囲気を作るとか、いろんなテクニックを駆使して質問を引き出すわけだが、それは本業だから出来ることだ。
 だから、このケースでは周りのスタッフの方に問題があったのではないかと思う。

 記事だけでは詳しい状況は分からないが、先生たちは予習させたのか。
 「この機会を生かそうぜ」という雰囲気作りをしたのか。
 「鎧坂先生が来たら聞きたいこと」みたいなことを事前に考えさせたのか。

 実は偉い先生を招聘した時の方が、このような下準備が必要なのだ。
 卒業生の先輩を呼んでお話を聞こうなんていう時は、放っておいても質問が出る。
 だが、たとえばノーベル賞級の学者先生のお話を聞いて、何か質問してみろと言われても、何を聞いていいか分からないというのが普通だろう。
 生徒に聞く勇気がないとか、生徒が恥ずかしがりだとか、そういう話ではないと思う。
 鎧坂さんが、次回は頑張りますと意気込んでも、おぜん立てをするスタッフが今回の件を反省しないと同じ繰り返しになるだろう。

 話は少し飛躍する。

 最近は、講演会だけでなく授業にも外部の専門家を招くケースが増えている。
 昔も無かったわけではないが、今は格段に増えている。
 先生がいくら頑張ったって個人の力だけでは、深く掘り下げた学習(探究)なんぞ出来ないから、当然そういう流れになる。

 そうなった場合、先生は自ら教える人というだけでなく、専門家と生徒との間に入って、上手く授業を回して行く人という役割が求められる。
 近年企業ではファシリテーターという言葉がよく使われているようだ。
 司会者でもなく、MCでもなく、会議などを円滑に進め成果を生み出すよう仕向ける人。
 これに似た役割が学校の先生にも求められる。

 今までの先生の仕事は、講演者や専門家を探し出し、時間と場所を決めてセッティングするところまで。
 これからの先生の仕事は、講演者や専門家と生徒とのコミュニケーションを円滑にし、成果を生み出すこと。
 また先生の仕事、増えてしまった。