記事執筆のため令和5年度埼玉県公立入試の問題を一覧した。
 その中で、「あれ、この問題、前にも出たのでは?」と思った問題が、いくつかあった。
 入試問題ではよくあることだ。

 いくら学習指導要領が変った、教科書が変ったと言っても、ベースになる知識はそうそう変わるものではないから当然だろう。

◆国語、俳句の季語は8年前と同じ
 令和5年度大問2の問3は、俳句の季語に関する知識を問う問題だった。
 「次のア~エの俳句について、表現されている季節が他の三つと異なるものを一つ選び、その記号を書きなさい」
 ア 夏草や兵どもが夢の跡
 イ 荒海や佐渡によこたふ天河
 ウ 五月雨をあつめて早し最上川
 エ 閑かさや岩にしみ入る蝉の声

 正解は「イ」。
 天河(あまのがわ)は、現代の感覚なら「天の川→七夕→七月→夏」となりそうだが、秋の季語である。
 他の三つは夏。

 天河(あまのがわ)が秋の季語であるという知識を問う問題は平成27年度(2015年度)の大問2の問5で出題されている。
 「俳句と俳句に表現されている季節の組み合わせとして適切でないものを、次のア~エの中から一つ選び、その記号を書きなさい」
 ア 荒海や佐渡によこたふ天河   (松尾芭蕉)-春
 イ 炎天の遠き帆やわがこころの帆 (山口誓子)-夏
 ウ 名月をとつてくれろと泣く子かな(小林一茶)-秋
 エ いくたびも雪の深さを尋ねけり (正岡子規)-冬

 正解は「ア」。
 天河は秋の季語だから。
というわけで、8年前とまったく同じ知識が問われた。

◆社会 内閣不信任に関する問題は4年前と同じ  
 令和5年度大問5(公民)の問2は、衆議院で内閣不信任の決議が可決された場合の内閣の対応について問う問題だった。
 「下線②に関連して、衆議院で内閣不信任の決議が可決された場合、内閣はどのようなことを選択しなければならないかを、具体的に説明しなさい」
 模範解答は「内閣は10日以内に衆議院の解散を行うか、総辞職するかを選択しなければならない」。

 これと同じ問題が2019年度にも出されている。
 「右の資料1は、Kさんが下線部②について調べたときに見つけた新聞記事の見出しです。資料1のように、内閣不信任案が可決した場合、内閣はどのようなことを選択しなければならないかを具体的に説明しなさい」
 模範解答は「内閣は、10日以内に衆議院を解散するか、総辞職しなければならない」

 と、ここでも4年前とまったく同じ知識が問われた。

◆言い始めたらきりがない
 こうした同一問題、類似問題の話を始めたらキリがない。
 問作(問題作成)担当者も知らずに出しているわけではなく、分かってそうしているのだ。
 受験生が接するのは各教科たった一種類の問題だが、作る側は予備も含めて七種類、八種類もの問題を用意しているのだ(数は私の想像)。
 しかも、入試そのものは何十年も前から行われている。
 だから、過去との同一問題、類似問題がNGとなったら、もはや出せる問題がないのだ。

 今回、たまたま二つの例を出したが、こうした事例は数限りなくあるのだ。
 で、これを受験生サイドから言えば、「やっぱり過去問学習は最強の受験対策」ということになるわけである。

◆関係者の皆さんにお願い
 まず埼玉県立総合教育センターの皆さんへ。
 先般取材にうかがった際にチラッと言ってみたのだが、ここでもう一度言っておこう。
 「過去問は最低でも過去5年分をサイトに掲載していただきたい
 現状は過去3年分である。
 「過去の入学者選抜学力検査結果」(埼玉県立総合教育センター)

 著作権法上の問題等クリアすべき事柄があるのかもしれないが、もう少し増やしてもらえると有難い。
 
 たとえば東京都教育委員会などは5年分を掲載している。
 「都立高等学校入学者選抜 学力検査問題及び正答表等」(東京都教育委員会)

 続いて、過去問題集発行元の方へ。
 「5年以上前の復刻版を出していただきたい

 私は声の教育社さんの公立過去問題集を永年使っている。
 最新版は「2023年度用」で、2018年度から2022年度までの5年分が収められている。
 しかし、これだとそれ以前の出題が分からないので、今回この記事を書くにあたっては「平成30年度用(過去6年分)」を併用している。
 この2冊があれば、過去11年分の確認ができるわけである。

 今日例に挙げた国語の問題は8年前であるから、10年分ぐらいは見ておきたい。
 実際、声の教育社さんからAmazonで私立用「カコ過去問」(さらに古い過去問)を販売しているから、その公立入試版が欲しいということだ。
 今の時代であるから、紙の本である必要はなく電子書籍でいい。
 これまたクリアすべき課題が諸々あろうが是非検討していただきたい。