日本の子供の読解力が低下。新聞報道を見て、こいつは大変だと思われた方。世間一般はそれでいいとして、われわれは教育の専門家(自称)であるから、とりあえず元の資料を当たってみよう。少なくとも、その在りかは押さえておこう。

 英語読解力に自信のある方は、OECDのPISAに関するサイトを当たってもらおう。

 そこまでの英語読解力はないという方(私もだが)は、日本語で書かれている国立教育政策研究所のPISA に関するサイトに行ってみよう。

国立教育政策研究所のサイト


 ここに調査のポイント国際結果の要約といった資料があるので、そのあたりを見ておけば十分だろう。
 
 どんな調査であるかを簡単にまとめると、次のとおり。
 (1)学習到達度調査(PISA)は、2000年から3年ごとに実施されている。
 (2)経済協力開発機構(OECD)加盟国の37か国と非加盟の42か国・地域の約60万人が参加した。
 (3)15歳(日本では高校1年生)が対象で、無作為抽出により国公私立183校の約6100人が参加した。
 (4)数学的応用力、科学的応用力、読解力の3分野について調査した。
 
 結果は、数学的応用力は5位から6位、科学的応用力は2位から5位に後退したものの引き続き上位にある一方、読解力は8位から15位へと大きく後退している、というもので、これが「読解力低下」という新聞報道につながっている。
 ただ、長期トレンドで見ると大きな変化はなく、OECDでも変化の少ない「平たんタイプ」に分類している。過去の順位は15位・8位・4位・8位と来て今回の15位であるから、劇的に後退したとまでは言えない。
 とは言え、現場で指導に当たっている先生方は、読解力不足を実感する場面も多いであろうから、引き続き大きな課題の一つではあるだろう。

 ICT活用についても調査しているが、「学校外でのインターネットの利用時間が4時間以上になると、3分野ともに平均得点が低下する」という結果が出ている。また、日本は「ネット上でのチャットやゲームを利用する頻度の高い生徒の割合が高く、かつその増加の程度が著しい」ということなので、このあたりは生徒・保護者に警鐘を鳴らしておいたほうがよさそうだ。

 日本は「学校の授業(国語、数学、理科)におけるデジタル機器の利用時間が短く、OECD加盟国中最下位」という結果が出ている。
 調査結果を受けた萩生田文部科学大臣のコメントの中に、「学校における一人一台のコンピュータの実現等ICT 環境の整備と効果的な活用を推進する」とあるが、この結果を受けてと言うより、「一人一台のコンピュータ」という結論が先にあり、その理由付けとしてPISAの結果を利用しているようにも思える。過去においても、脱ゆとり教育など政策転換の場面で調査結果が使われた。
 「一人一台のコンピュータ」となれば、当然関連業界は潤うわけで、それはそれで結構なのだが、果たしてこれが教育政策なのか産業経済政策なのかは注視して行く必要があるだろう。

 たまたま今日午前中は外出・来客予定もなく、当面の原稿書きも昨日で終えたので半日かけて読んでみたが、他にも興味深い結果がいくつか見られる。別の機会にそれについて書いてみよう。
 
 とりあえず読解力という点ではこの本かな。