どうも私は「プロ仕様」という言葉に弱いようだ。「業務用」にも心を動かされる。
 「プロ仕様」と言われても、スペックの違いは実のところよく分からない。プロではないからだ。ただ、何となく高性能なのだろうという印象を持ってしまう。「業務用」も同様で、業務をやったことがないので、どのあたりが業務に向いているのかは曖昧だ。とりあえずお得なのだろうと思い込む。

 プロが愛用しているものは素人には向かない。本当に「プロ仕様」であれば、プロの腕がなければ使いこなせないはずだからだ。素人には素人向けが一番適している。ならば、「素人向け」とか「アマチュア仕様」と言えばいいかというと、それではモノが売れない。

 プロが愛用する包丁を使えば、私も美味しい料理が作れるかしら。無理無理。厳しい修業が抜けてるから。
 プロが愛用しているシューズを履けば、私も速く走れるかしら。無理無理。激しいトレーニングが抜けてるから。
 というようなことは、冷静に考えれば分かることなんだが、「プロ仕様」の誘惑に勝てない。

 で、ここまでが消費者サイドに立った考え方。

 今度は逆に、モノを作ったり売ったり、サービスを提供するサプライサイドに立って考えてみる。
 「プロ仕様」のような高級、高性能を想起させる表現は殺し文句であるから、これを使わない手はない。
 塾は民間企業だから、昔からこの手を使っている。私立学校もこの点はよく研究している。

 だが、広告性悪説に立つ公立は、受験生・保護者の心を揺さぶるフレーズを考えてみようともしない。民間人である私にとってある意味好都合なので、そのままでも結構だが、税金で運営している学校だから、空っぽにしておくのはもったいない。

 正しく伝える。
 もちろんこれが基本なのだが、お客は素人だから専門的な事柄をそのまま専門用語で語られても理解できない。永久に無理。
 正しさは、素人にも分かりやすく、かつ魅力的なフレーズを使わなければ伝わらない。これが広告だ。
 ありもしない事や、出来もしない事を薄っぺらな言葉で言い募るのが広告だと思っているとしたら、その考えは捨てたほうがいい。
 パンフレットやホームページなどをもう一度見直して、その表現で正しく伝わっているかどうか、相手の心を揺さぶれているかどうかを検証してみて欲しい。

 教育界から広告業界に転じ、再び教育業界に戻って来た私は、どっちも応援するのである。