昨日の続きである。

 「文化祭の門から考える学校ブランド戦略」【前編】

◆話題になることを目的にしない
 今年の浦和高校の門はネット上で話題となり、学校の知名度向上にも貢献したと考えられる。
 では、他校もSNSなどで話題になる企画を考えればよいのか。

 それは順序が逆だ。
 浦和・川越の門は、そもそも学校広報や生徒募集を目的として作られたものではない。生徒たちが文化祭の成功を目指し、長年にわたって制作を続けてきた活動である。
 その成果が人々の関心を集め、結果として学校のブランド形成や広報にもつながっている。
 広報効果は、あくまでも後からついてきたものだ。
 学校がSNSでの拡散を目的として企画を立て、生徒たちに負担をかけて話題作りに走るようでは、本末転倒である。

 広報担当者が考えるべきなのは、新たな話題を無理に作り出すことではなく、すでに学校の中にある価値を見つけ出し、それを外部に伝えていくことだ。
 文化祭の門なら、完成した作品の写真だけでなく、制作に取り組む生徒たちの様子も紹介する。
 探究活動なら、成果だけでなく、試行錯誤の過程も伝える。
 部活動なら、大会結果だけでなく、日々の練習や生徒たちの工夫にも光を当てる。

 学校広報の役割は、生徒たちに広報のための活動をさせることではない。
 生徒たちが自分たちのために取り組んでいる活動を発見し、その価値を社会に伝えることなのである。

◆「うちには何もない」は本当か
 ここまで述べてきたことに対し、「うちの学校には、そんな立派な伝統もないし、全国に誇れるような活動もない」という声が聞こえてきそうだ。
 しかし、全国に誇れるものでなければ、学校のブランドにはならないのだろうか。
 そんなことはない。

 例えば、地域の清掃活動を長年続けている学校があったとする。全国的には珍しくない活動かもしれないが、その地域の人々にとっては、学校の生徒たちが町をきれいにしてくれることが大きな価値を持つ。
 あるいは、文化祭で毎年、小さな子供たちが楽しめる企画を実施している学校があったとする。全国ニュースになることはなくても、地域の子供たちにとっては毎年楽しみにしている行事になるかもしれない。
 そうした活動を継続し、学校の外にも伝えていくことで、「あの学校といえば、あの活動」というイメージが形成されていく。
 ブランドは、全国的な知名度と同じではない。
 自校が対象とする地域や人々の間で、その学校ならではの価値が認識されていれば、それも立派なブランドである。

 それでも、これといったものが見つからない場合は、これから始めればよい。
 ただ、最初から大きな成果や話題性を求めるのではなく、自校の教育方針や生徒の実態、地域のニーズに合った活動を、小さく始めて育てていけばよいのである。

◆学校広報は、ブランドの種を発見し、育てる仕事
 浦和・川越の文化祭の門を見て、「うちの学校でも同じようなものを作ろう」と考える必要はない。
 もちろん、あの規模の門を作るには相応の技術や資金、時間が必要だ。長年の経験の蓄積もある。
 しかし、両校から学ぶべきことは、巨大な建造物を制作する方法ではない。

 生徒たちの活動が学校の魅力を具体的に伝えること。活動を継続することで学校固有のブランドが形成されること。そして、そのブランドが新たな人々を学校に引き寄せ、次の世代へと受け継がれていくこと。
 この原理は、進学校であろうと専門高校であろうと、都市部の学校であろうと地方の学校であろうと、共通している。
 伝統校には伝統校の強みがある。しかし、伝統校でなければブランドを形成できないというわけではない。
 歴史の浅い学校なら、これから伝統を作ればよい。学校の規模が小さければ、その規模だからこそ可能な活動を見つければよい。

 大切なのは、他校の成功例を眺めて感心するだけで終わらせず、自校の中に眠っている価値を探し出すことである。
 そして、その価値を生徒や教職員、卒業生、地域の人々とともに育て、外部に伝えていく。
 学校広報やブランド戦略は、何もないところから魅力を捏造する仕事ではない。学校の中に存在する価値を発見し、育て、伝える仕事なのだ。