正月は目標を立ててしまいがちである。何かを決心してしまいがちである。
 何かを変えるなら、日本の社会システムからすると4月の方が好都合と思われるが、長年の慣習でついつい目標を掲げてしまう。
 まあ、この時期を何も考えずボーッと過ごすよりは多少マシだから、そうしたい人はどうぞ。

 ただ、「今年は何か資格を取るぞ」なんていうのはやめた方がいい。
 なぜかと言うと、これは目標の立て方として間違っているからだ。
 資格を取るというのは、何か実現したいことがあって、そのための手段であるからだ。
 「今年はダイエットするぞ」などというのも同じで、目標ではなく手段である。

 資格を取ることによって実現したいのは、どのような状態なのか。
 たとえば、有利な就職ができる。
 あるいは、収入が上がる。
 だとすれば、目標となり得るのは有利な就職や、収入アップであって、資格取得はそのための一手段に過ぎない。
 もしかしたら有利な就職や収入アップを実現するための方法は他にもあるかもしれない。
 いや、もしかしたらではなく、絶対に他にもある。
 だから、一手段に過ぎない資格取得を目標にしてしまうのは、誤りなのである。

 では、有利な就職や収入アップを目標にすればいいのか。
 実はこれも違う。
 有利な就職や収入アップによって実現したいのは、どんな暮らし、どんな生き方なのか。
 そこが描かれていなければならない。
 そこに強い欲求がなければならない。

 年末年始に資格取得系の広告やCMが多いことを皆さんもお気づきだろう。
 この時期、資格取得で何かが変わるかもしれないという幻想に憑りつかれ、安易に目的に掲げてしまう人が多いからである。
 たしかにやり通せば何かが変わる可能性はある。

 だが、何も変わらない可能性もある。
 これはつまり、目標に対して、誤った手段を選択してしまった結果である。

 どういう生き方をしたいのか。
 自分にとって、より良い人生とはどんなものなのか。
 常にそこを出発点にし、それらを言語化し、目標に掲げる。

 もちろん、目標とするものは置かれた状況や年齢によって変化するはずだ。
 だから時々、このままでいいのか、少し修正を図るべきなのかを自分自身に問うてみなければならない。
 「一年の計は元旦にあり」というのは、そういう意味であろう。
 
 「今年は資格にチャレンジします!」
 「10㎏のダイエットを実行します!」
 威勢はいいが、笑わせるな。
 そんなのは目標でもなんでもない。手段として合っているかどうかも疑わしい。

 ちょっと面倒な作業だが、生き方を考えてみる。自分にとってより良い人生を考えてみる。
 これをやっておくと誤った手段や行動を選択してしまうリスクを減らすことができる。
 いきなり手段に飛びついて時間と金を無駄にしないように。