学校の生徒募集担当者は、「なぜ、うちの学校が選ばれなかったか」を気にするだろう。
 それは間違ってはいない。
 常に改革、改善を目指すには、そういった態度は欠かせない。

 が、それと同時に、「なぜ、うちの学校が選ばれたか」にも強い関心を持つべきだ。
 選ばれなかった理由にはネガティブなものが多い。
 中には、駅から遠いなど、物理的にどうしようもないことも含まれる。
 そこまでは行かなくても、いますぐには改革、改善できないものが多いと考えられる。
 
 それに対し、「なぜ、うちの学校が選ばれたか」の方には、学校の売りにつながるものが多い。
 成績がちょうどだったというのもあると思うが、それだって貴重な情報だ。
 兄弟姉妹が通っていたから。
 家から近かったから。
 親や先生に勧められたから。
 全国大会出たいから。
 
 こうした答えは、いま目の前にいる生徒たちが持っている。
 在校生だから情報収集のためのコストがかからないのがいい。
 あとは、どれだけ本音を引き出せるかの技術力、というかコミュニケーション力の問題だ。
 で、ここから得られた材料をブラッシュアップし(磨きをかけて)、学校のセールスポイントにする。
 学校側が好んで「変わり者」を集めたのでなければ、同じような思考の子は大勢いるはずで、そういう子をいかに発見しアピールするかが募集課題の一つとなる。

 時々、中学校や塾を訪ねて、わが校の欠点を聞きまわっている人がいる。
 そういう謙虚な姿勢は、ある程度共感をもって迎えられるかもしれないが、これは止めたほうがいい。
 少なくとも額面通り受け取らないほうがいい。

 これは何も中学校や塾の先生方が信用ならないと言っているわけではない。
 彼らは大人であるからだ。
 大人は、相手に対し失礼なことはオブラートに包むものだ。
 学校側と良好な関係を維持したいと思っている彼らが、そうそうネガティブな発言をするはずがない。

 よく、お断りのフレーズというものがあるでしょう。
 時間があっても「時間がない」。
 お金があっても「お金がない」。
 そういう情報を集めてきて分析してみても正解は出てこない。

 重ねて言うが、信用するとかしないとかの問題ではない。
 同じ先生同士、信頼し合えないで、どうやって教育するのよ、って話だ。

 話を戻して。
 商品やサービスで言えば、買わなかった人や利用しなかった人の意見も聞かなくてはならないが、買った人や利用した人の意見を大事にしなければならない。
 入学してきた子に今さら志望動機聞いてどうなる。
 いや、そうじゃない。
 彼らから、また彼らの保護者から、もっと良くなるためのアイディアを聞き出すのだ。
 拒否した人から集めたネガティブ情報よりも、こっちの方が実現可能性は高いだろう。

 私の見たところ、志願者・受験者の少なさに悩む学校は、「うちの学校に入った方がいい理由」を示せてない場合が多い。
 特色を示すなんていう生易しい話では駄目だ。
 間抜けなプレゼンやってる場合じゃない。

 こういう特色があるから、こういう人に向いている。うちに来たらこんなことが出来る。あなたこそうちに来るべき生徒だ。さあ、一緒にやろう。
 このメッセージが突き刺さったら、きっと志願してくれる。
 もちろん、嫌だなと思われる場合もあるが、今この段階でそう思ってくれた方が、後々問題を起こさずに済む。

 公立学校の説明会に行くと、「他校もよく調べて決めてください」などと言っている場合がある。
 たしかに公立学校を一つのまとまりと考えれば、どこかに入ってくれればいいわけだが、そんな話を聞きたくて来てるんだろうか?
 特にこの時期からの説明会や相談会は「決めるために」来ているのだ。
 ならば、決心を後押ししてやろうじゃないか。

 「在校生に聞いてみると、うちの学校の~~というところが気に入って希望した人が多いんです。それで、実際に入ってみてどうだったかと聞いてみると、思っていた通りとか、想像していた以上という答えが返ってきます。ですから、どうぞ皆さん、安心してうちの学校を目指してください。先輩達も、もちろん先生達も、待っています」

 逃げて行く人を減らそうなんて考えるな。
 近づいて来る人を増やそう。