先月末から埼玉県第1回進路希望調査の結果に関する記事を何度か書いた。
 中学生向けには同じ内容を 埼玉新聞社高校受験ナビの「受験ニュース」に書いている。
 埼玉新聞社によると、下の記事は結構読まれているとのことだ。
 浦高など伝統校の倍率が、今後そのように推移しそうかを示したものだ。
 【分析】公立入試、倍率は今後どう変化する? <続編>

◆偏差値は上がったり下がったりするものだ
 私は二つの新聞に高校入試関連の記事を書いているのだが、受験生や保護者から、よくこのような質問を受ける。
 「偏差値が安定しません、なぜでしょう?」
 「70近い時もありますが、60台前半の時もあります。どちらを信じればいいでしょう?」
 と、こんな感じ。

 答えは簡単だ。
 偏差値が高かったのは、あなたの得意分野や得意単元からの出題が多かったとき。
 偏差値が低かったのは、あなたの不得意分野や不得意単元からの出題が多かったとき。
 どっちも実力と言えば実力であるが、総合的に見れば実力不足。
  
 一回の模試で出題できる分野や単元は限られている。
 1教科の満点を1000点ぐらい、試験時間も3時間ぐらいにすれば、広範な分野・単元からの出題が可能になるが、100点満点50分の試験だと、1回目に平安時代の文化を出したら、2回目は室町時代の文化、3回目は江戸時代の文化というような出し方になる。
 どの時代の文化も完璧であればいいが、そうではない人は得意が出た時は点が取れるが、不得意が出れば取れない。

 そう考えれば、偏差値が高かったのはラッキーだったとき、低かったのはアンラッキーだったときと言い換えることも出来る。
 偏差値が乱高下する人は、思いっきり目の粗いザルで魚をすくおうとしているようなものだ。
 大きな魚(易しい問題)はひっかかるが、小さな魚がどんどんすり抜けて行く。
 これじゃあ大漁にはならんよ。

◆本番も運まかせでいいのか
 本番試験も、時間の制約から全分野全単元からの出題は不可能で、いずれかの分野・単元がチョイスされることになる
 したがって、ここでも得意、不得意が激しい人は、運を天に任せることになる。
 模試であれば、次がある。だが、たった1回しかない本番だ。
 それを運まかせにしていいのかという話だ。

 偏差値が上がったのは実力がついたからだ。
 そう。たしかにそれもある。
 しかし、運も良かったのだ。
 だから手放しで喜んではいけない。

 偏差値が下がったのは実力が下がったからだ。
 そう。たしかに相対的には実力低下と言えるが、勉強を続けている以上、力そのものは少しずつでも上がっている。
 しかし、勉強していないところや苦手なところがごそっと出た。その意味で運が悪かった。

 まあ、模試はそれでもいいわけだが、放置しておくと本番も運次第ということになる。

◆模試で元は取れているか
 埼玉県の場合で言えば、模試の偏差値で私立の事実上の合格を手に入れることができる。
 すべての高校とは言わないが、相当数の学校でそれが可能だ。
 そして、有難いことに、たった1回運が良かっただけでもそれを実力とみなしてくれる。
 そこまで行かなくても2回運が良ければオーケーだ。
 運が悪かった1回は無かったことにしてくれる。

 模試の偏差値は共通の通貨のようなものである。
 高額の通貨を入手できれば、とりあえず模試で元を取ったと言っていい。

 模試では合否判定というのもやってくれる。
 大量のデータからはじき出されたものだから、それなりに高い精度は保っている。
 それが励みになり、発奮の材料になり、最終的な決断の助けとなれば、ここでも模試の元は取れたと言っていい。

 しかし、最後の1円まで元の取り損ねがないようにと考えるなら、先ほどから言ってる、アンラッキーな部分の回収が必要だ。
 つまり、簡単に言えば模試の復習、やり直し。
 数えたわけではないが、印象として、半数以上の受験生はこれをやらない。
 せっかく「あなた、ここ弱いですよ」と警告してくれているのに、ガン無視。
 高い金払って受けているのに、こいつはもったいない。