英検は取っておいたほうがいいのか。
 高校受験生や保護者からよく尋ねられる質問だ。

 ではまず、埼玉県公立高校入試において、英語検定の資格取得がどのような扱いになっているかを調べてみよう。
 先ごろ発表された令和5年度埼玉県公立高等学校入学者選抜における各高等学校の選抜基準を見れば分かる。

 さすがに英検をまったく評価しないという学校はなかった。
 ただ、何級以上を評価対象にするかは、それぞれだ。

◆2級以上を評価
 浦和
 大宮(普通・理数)
 春日部

 中学生で2級以上というのは、まあ探せばいるかなという程度だろう。
 つまり、ほぼいないことを前提にした基準である。
  
◆準2級以上を評価
【東部】
 春日部女子(普・外)
 越ケ谷
 越谷北(普・理)
 不動岡
【西部】
 朝霞
 川越
 川越女子
 坂戸(普・外)
 所沢
 所沢北(普・理)
 所沢西
 松山(普・理)
 松山女子
 和光国際(普・外)
【南部】
 浦和一女
 浦和西
 川口北
 蕨(普・外)
 川口市立(普・理)
 市立浦和
 浦和南
 大宮北(普・理)
【北部】
 熊谷
 熊谷女子
 熊谷西(普・理)
【専門学科】
 芸術総合(全科)

 準2級以上を評価するのは26校である。
 入試を学校選択問題で実施する学校は、川越南を除き、すべてここに含まれている。

 川越南は「検定・資格・段位は、以下のものについて、内容により得点を与える。英語検定、漢字検定、数学検定、毛筆・硬筆検定、珠算検定、柔剣道段位、その他」となっており、評価対象であることは分かるが、級の指定はない。

 学校選択問題実施校以外では、朝霞・春日部女子・坂戸・所沢西・松山・松山女子・浦和南・芸術総合の8校が準2級以上を評価対象としている。
 
 準2級は高校生レベルとされているから、これも取得者はかなり少ない。
 そして各校とも、それを前提として、こうした基準を設定していると考えられる。
 つまり、ものすごく英語が出来るのであれば、それは特別に評価してもいいが、それ以外は無視するというのに等しい。
 芸術総合が準2級以上という高いハードルを設けていることに疑問を持つ人がいるかもしれないが、これをクリアする受験生はいないと踏んでいるわけで、すなわち英検資格は考慮しないということなのである。

◆いないことが前提になっている
 ここまでで明らかなように、上位校は、ほぼいない、または非常に少ないと考えられる高いところに基準を設けている。

 もちろん、そうした中で2級や準2級を取得していれば有利には違いないが、そもそも資格取得ということについて、さほど重視していないというのが、各校の選抜における考え方だ。
 次に、その点を見て行こう。

◆資格取得による加点はそもそも少ない
 調査書点(俗に言う内申点)は、次の三つの要素で構成されている。
 1 学習の記録の得点
 2 特別活動の記録の得点
 3 その他の項目の得点

 資格取得による得点は、上の三つのうち「3その他の項目の得点」として加算される。

 三つのうち、割合が高いのは、当然だが「1学習の記録の得点」である。調査書点全体のうち、最低で50.0%、最高で91.3%、平均して68.7%が、「1学習の記録の得点」に割り当てられている。
 次いで「2特別活動の記録の得点」、「3その他の項目の得点」の順となる。
 整理する。
 「1学習の記録の得点」  68.7%
 「2特別活動の記録の得点」22.3%
 「3その他の項目の得点」  8.9%

 以上のように、資格取得が含まれる「3その他の項目の得点」は、調査書点全体の10%以下の割合でしかないのである。
 こうした構成比を見れば、3級だろうが4級だろうが、または級を持っていようがいなかろうが、ここで付いた差は、全体の中で大した影響を持つものではないと分かる。

◆「3その他・・・」の構成比が高いのは
 前述のように、「3その他の項目の得点」の調査書点全体に占める割合(構成比)は平均で8.9%である。
 では、もっとも構成比の高い学校はどこだろう。

 これが何と、大宮(普・理)が25.0%でトップ。
 それに次ぐのが県立浦和で21.9%なのである。
 一体どういうことか。
 資格取得をそれほど重視しているのか。

 逆である。
 構成比こそ高いが、ハードルを極めて高く設定することで、ここで得点を得られる受験生を限りなくゼロに近づける。
 別の言い方をすれば、ここでは差がつかないようにする。
 となれば、勝負は「1学習の記録の得点」、さらに言えば5教科の学力検査点に持ち込まれるわけで、そこを狙っている。
 浦和の説明会で、「調査書では差がつかない。学力検査を頑張れ」と明言しているのは、こういう仕掛けになっているからだ。

◆結論として英検は軽い
 埼玉県公立入試は、第一次選抜と第二次選抜の2段階選抜で行われるのが一般的だ(第3次選抜まで行う学校もある)。
 第一次選抜で、合格者の60%から80%が決まってしまう。
 その第一次選抜で、調査書点の割合を50%以上としている学校は10校ほどだ。やはり全体としては学力検査重視なのだ。そして調査書点の中でも圧倒的に「1学習の記録の得点」が重視されており、「3その他の項目の得点」の重みは僅かなのである。

 以上まとめれば、英検の級を持っていなくても、入試で不利ということはない。
 もちろん1点差でも合否が分かれるのが入試であるから、無いよりはあった方がいいという考え方もできる。
 ただ、持っていることの有利さ、また、一つ上の級を持っていることの有利さは、ごく僅かであり、無視してもいいくらいである。

 と、ここまでは資格を持っていないと心配している人を念頭に、安心材料を提供するために書いている。

 別に資格取得自体が無意味だというわけではないし、受かれば自信にもなるだろうから、どんどんやればよろしい。
 英検でも漢検でも数検でも、結局は英国数の勉強をしているわけだから、それがマイナスになるはずはない。