千葉県公立入試で採点ミスが見つかった。
 その結果、不合格だった6人が合格となった。

【速報】6人誤り「不合格」に 入試で採点ミス900件超 千葉県の公立高校98校で(千葉日報 3月17日)

 マスコミ的には待ってましたの不祥事。
 そして、みんな大好き頭下げ写真。
 目の前にいるのは報道陣だけだと思うが、これは一体誰に対して頭を下げているのか。
 本来頭を下げなくてはいけないのは不合格とみなされ他の進路を選ばざるを得なかった受験生のはずだ。
 頭を下げる相手が違うんじゃないかと思う。
 
 が、マスコミの先にいるのは読者や視聴者であり、彼らはこの絵柄がないと納得しない。
 記者やカメラマンとしても、この絵柄を撮らないと上司から怒鳴られるだろうから、まあ仕方ないところだ。

◆もう1回点検すると、まだミスは見つかる
 さて、冗談はここまでにして、少し真面目に考察してみよう。

 当然ながら、千葉県教育庁は、この件に関して公式発表している。
 まずはそれを見てみよう。

 令和5年度千葉県公立高等学校入学者選抜における採点の誤りについて 

 新聞記事を読んで最初に思ったのは、採点ミスが特定の教科や特定の問題、あるいは特定の学校に集中しているかどうかということだった。
 公式発表を見ると、県立120校中92校、市立7校中6校とある。
 どうやら一部の学校に集中しているわけではないようだ。

 次にミスの内容である。
 ●正解と不正解との誤り
 ●配点・部分点の誤り
 ●小計・合計の誤り
 と、ある。
 これを見る限り、特定の教科や問題に集中しているのではなく、ミスの内容は多岐にわたっているようだ。
 県は「今までミスがなかった」と述べているようだが、これらは採点ミスの典型的なものであるから、過去にもあったと考えるのが自然だろう。ただ発見されなかった。

 千葉県公立入試は3万4793人が受験している。
 一人当たり5教科とすると17万3965枚の答案用紙が存在することになる。
 ミスが発見されたのが933件であるから、単純計算すると0.5%となる。
 
 全国の事情を知るわけではないが、採点は3人3回あたりが一般的だろう。
 それだけの体制をとっていても、4回目(?)をやったらこれだけのミスが見つかった。
 とすれば、5回目をやればさらに数10件、6回目をやればまた数件という可能性だってある。

 限られた時間と、限られた人数で行う作業であるから、ゼロを実現するのは極めて難しい。

 真剣に取り組めなどと言う声も聞かれるが、大事な入学試験に不真面目に取り組んでいる教員はいない。
 たしかにヒューマンエラーは気の緩みから来ることも否定できない。
 だが、気を引き締めても出るのであるから、精神論で片づけるのではなく、システムで解決する手段を模索するべきだろう。

◆記述問題が多い千葉県公立
 首都圏公立入試問題の中で、千葉県と埼玉県は比較的記述問題の割合が高い。
 それに対し、東京都と神奈川県は記号選択問題が多く、かつマークシート方式を採用している。
 したがって、千葉県の方がどうしても採点ミスが出やすいと言える。
 別に千葉県を擁護するわけではない。普通に考えてそうだろうという話だ。

 試しに千葉県と神奈川県の今年の入試問題を比較してみよう。
 全教科は時間がかかるので、国語で比較してみる。

 千葉日報に掲載された今年の国語入試問題正解表は次のとおりだ。
 令和5年度国語学力検査正解表
 

 それに対し、神奈川県教育委員会が発表した共通選抜国語入試問題正答表は次のとおりだ。
 令和5年度 国語正答表
 

 神奈川県は94点が記号選択(マークシート)で、記述解答は6点。
 対する千葉県は27点分が記号選択で、残り73点は記述解答。
 採点の手間と時間は明らかに千葉県の方が上だし、ミスが発生する確率も高そうだ。

◆ミスゼロを優先すべきか
 採点ミスが問題化した地方は、記号選択中心のマークシート方式に移行している。
 東京、神奈川、茨城など首都圏及び関東地方に先行事例があるので、千葉県としても今回の一件を機に検討せざるを得ないのではないか。

 ミス発生確率が低いマークシート方式を採用するのか。
 それとも記述の多い今の出題を維持しつつ、ミス発生ゼロを追求するのか。
 岐路に立たされている。

 私個人としては、入試は教育そのものではないので、ある程度合理化を進めても良いと考えている。
 完全記号選択マークシート方式までは行かなくても、一部取り入れるのは一つの考え方だと思う。
 半分くらい機械化、自動化が進めば、その分余裕が生まれるから、ミス発生率も低く抑えられる。

【予告】
 明日、明後日の土日は所要あり埼玉を離れる。
 机に向かう時間もほぼ無い状況なので、本ブログは事実上の休載となるであろう。