知人の紹介でライター希望の女性に会う機会があった。
こういうケース、なぜか割とよくある。
私は名の知れた売れっ子ライターではない。
著書も無い。
有名媒体に連載を持っているわけでもない。
狭い地域で、限られたジャンルの記事を書き、糊口をしのぐ者である。
アドバイスを求めるなら、他にいくらでもいるだろうに。
と、言うと、知人曰く。
「いや。だからあなたなんですよ。飛びぬけた才能があるわけじゃないけど、なんだかんだで仕事が続いている」
そうか。だったら分かる。
では、どうしたら書くことでそこそこ食って行けるようになるか教えよう。
第一に、締め切りを厳守することである。
これは別にライター仕事に限ったことではない。
時間を守れない人間は何をやっても無理だ。
第二に、量産に耐えることである。
上手い書き手は無数にいるのだ。
その中で、たくさん書ける人間だけが生き残る。
これまたライター仕事に限ったことではない。
毎日ラーメンを作る。
毎日寿司を握る。
毎日写真を撮りまくる。
毎日絵を描き続ける。
そう。「毎日」がキーワードなのだよ。
毎日休まず続けるのがプロ、たまに気が向いたときやるのがアマチュア。
上手いか下手か以前に、こっちが生命線なのだ。
第三に、素直に注文に応じることだ。
ここではライターの話をしている。
作家ではないということだ。
ライターは要するに売文業(売文家)である。
自分の思想だの哲学だのは不要。むしろ邪魔。
発行元から「こういうの書いてくれないかな」と注文を受けたら、つべこべ言わず、要望どおりに書く。
売文家に「あなたのご意見をお聞きしたい」なんていうオーダーが来るはずないだろう。
情報はたくさん持っていたほうがいい。
語彙も豊富であるに越したことはない。
が、それより大事なのが上に挙げた三つだ。
ライター志望にありがちなのは、「文章書くのが好きだから」というやつ。
いや、そんなこと聞いてないから。
内心思うのは自由だが、人様に向かって言う言葉じゃない。
そもそも、そんなに好きだったらすでに何かやってるだろう。
「好きだから」はこれから始めるやつが言うセリフじゃない。
10年続いたら「結局は好きだからかもしれませんね」くらいは言ってもいい。
年端の行かぬ若い連中ならまだしも、四十面、五十面さげて、ファンタジーはやめてくれ。
そんなわけで、注文次第で大量の原稿を期限までに書き上げられる書き手が、いそうでいないのが現状だ。
こういう時に友達いない、人づきあい嫌いという私の弱点が如実に現れる。
三つさえ守ってくれれば副業でも何でも構わない。
誰かいないか。
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