先週末、埼玉県内公立数校で周年記念行事が行われた。
 それに関する代表的な記事がこちら。

勉強、スポーツ、恋愛…「高校生」時間を大切に 松山高が100周年式典 オリンピアン、大学教授ら多士済々(埼玉新聞 18日)

 同日、50周年を迎えた川口北の記念式典も行われたが、100年と50年とでは大人と子供ほどの差があるので、大野県知事や日吉教育長も松山の式典に出席した。

 松山は大正12年(1923)、旧制県立松山中学校として創立され、戦後、学制改革に伴い県立松山高校となった。
 校名は一度も変わらず、他校と統合されたこともなく、今も男子校。
 平成に入って理数科が設置され、その後スーパーサイエンスハイスクール指定校(現在も続く)となったあたりが強いて言えば変化。

 昨今は低倍率に喘いであり、直近の希望調査でも理数科は1.18倍だが普通科は0.78倍と定員割れ状態。次の50年、いや20年では伝統を残しつつも新しい学校に生まれ変わっているかもしれない。

◆100年を超える公立高校
 埼玉県内には松山よりも古い歴史を持つ学校が28校ある。

 【普通科男子校】
 浦和・熊谷・川越・春日部
 【普通科女子校】
 浦和一女・川越女子・熊谷女子・春日部女子・久喜
 【普通科共学校】
 不動岡・所沢・秩父・深谷第一・鴻巣・豊岡・児玉・飯能・本庄
 【農業系専門高校】
 秩父農工科学・熊谷農業・羽生実業・(※川越総合)・杉戸農業
 【工業系専門高校】
 川越工業・進修館
 【商業系専門高校】
 岩槻商業・熊谷商業・深谷商業
 
 ※川越総合は旧川越農業で、現在は総合学科校だが農業をメインにしている。

 結構あるものだ。
 で、その中で、興味深い点を挙げておこう。

◆学校は県北部に偏在していた
 100年超えの学校を現在の東西南北の地域ごとに分類してみたのだが、これがなかなか興味深い(校名は現在のもの)。

 【北部】12校
 熊谷・熊谷女子・秩父・深谷第一・鴻巣・児玉・本庄・秩父農工科学・熊谷農業・進修館・熊谷商業・深谷商業
 【西部】7校
 川越・川越女子・所沢・豊岡・飯能・川越総合・川越工業
 【東部】6校
 春日部・春日部女子・久喜・不動岡・羽生実業・杉戸農業
 【南部】3校
 浦和・浦和一女・(※岩槻商業)

 ※岩槻市はさいたま市に編入される以前は東部に分類されていた

 今では信じられないことだが、県南部には浦和、浦和一女の2校しかなく、学校は県北部に集中していた。
 明治大正期の埼玉県の産業経済が県北部や県西部中心だったからである。
 ちなみに昭和に入ると形成は逆転し、戦前までに大宮、浦和西、市立浦和、与野、川口、浦和商業、川口工業、大宮商業が開設され、この間他の3地域に作られた学校は無い。

◆100年続くことの難しさ
 100年続く伝統校の中には、いま現在、生徒募集で苦戦している学校がある。
 松山、2年後に100周年を迎える小川、3年後の松山女子。
 熊谷、熊谷女子、春日部女子、久喜など普通科高校。特に女子校。
 専門高校では川越工業、杉戸農業、深谷商業、川越総合(旧川越農業)あたりがギリギリ踏みとどまっているが、多くは厳しい状況に置かれている。

 伝統は残したい。
 しかし、この少子化時代に創立時そのままの形で学校を存続させることは困難だ。
 古き良き伝統のみに固執し、結局存在そのものをなきものにしてしまうのか。それとも、生まれ変わって新しい時代を生き抜くか。

 県内私立には100年を超す学校は少なく、多くは戦後に誕生した学校だ。特に昭和後期にスタートを切った学校が多い。高校で言えば20校がまだ50年すら経っていない。 
 この先、100周年を迎えられる学校がどれだけあるだろうか。
 非常に難しいことではあるがそのくらい続けなければ、私財を投じ学校を創った先人に申し訳ないではないか。たとえ看板は変わってもその精神を引き継ぎたいものだ。

 年齢的に、100周年を見届けられそうな学校は10校にも満たないので、その後は向こうの世界から祝福しようと思う。