今日の訪問校は杉戸農業高校。
校名に「農業」を冠する学校は、昔は「秩父農業(現・秩父農工科学)」、「川越農業(現・川越総合)」、「児玉農業(現・児玉)」、「羽生農業(現・羽生実業)」などたくさんあったが、今は「杉戸農業」と「熊谷農業」の2校を残すだけとなった。
◆農業高校の「逆襲」が始まる
日本の近代教育の黎明期において、農業高校はエリート養成機関の一翼を担っていた。
明治維新後、国の屋台骨を支えるのは農林水産業であり、そこに従事する技術者を育てることは国家の急務だったからだ。
しかし、時代の針が進むにつれ、産業の主役は重厚長大の工業へ、そして情報通信の商業へと移り変わった。
高校教育の主流もまた、専門学科から普通科へとシフトし、いつしか農業高校は「農家の跡継ぎが行く場所」という、やや限定的なイメージの中に押し込められてしまった感がある。
だが現在、農業高校を取り巻く景色は劇的に変わりつつある。
ただ教育現場の方は変っているのだが、世間一般の認識が昭和のまま止まっている。
今や、農業高校生が学ぶ領域はかつてないほど社会の核心(コア)へと近づいている。
「農業高校の役割は終わったのか」
いやいや、そうではない。これから農業高校の「逆襲」が始まるのだ。
◆「鍬(くわ)」から「ドローン」へ
今の農業高校に一歩足を踏み入れれば、皆さんそのハイテクぶりに驚かされるだろう。
基本は重要ということで、あえて身体を使い道具を使う実習も行われているが、その隣では最新のドローンが飛び交っているのが現在の農業高校だ。
タブレット端末で圃場のデータを管理するなんていうのは当たり前に見られる光景だ。
「スマート農業」はもはや用語として珍しくないが、農業高校生たちはこれを座学ではなく、実践として身につけている。
旧来の「経験と勘」を否定することはない。
それらを「科学とデータ」で裏付け、より高度な産業へと進化させようとする試み。これが今、農業高校で行われている教育だ。
◆環境問題から食料安保まで
世界に目を向ければ、食料安全保障や環境保全、バイオテクノロジーの進化など、農業高校がカバーする領域は地球規模の課題ばかりだ。
気候変動に強い品種改良、食品ロスを減らすための加工技術、あるいは耕作放棄地を再生させる地域デザイン。これらはすべて、農業教育がカバーしなければならない課題だ。
近年、「第6次産業」などと言われるようになったが、こうした社会変化は農業高校生の活躍の場を広げている。
自分たちが育てた作物をどうブランディングし、加工し、流通させるか。
ここにはマーケティングや経営学の視点が不可欠だ。
単に「作る」だけではなく、「届ける」までをデザインする。
農業高校は今や、ビジネススクールとしての側面も持ち合わせているのである。
◆「固定観念」をどう打ち破るか
このように、農業高校の教育内容は極めて現代的で、かつ未来志向である。
しかし、生徒募集や広報の現場では、依然として「古いイメージ」という壁が立ちはだかる。
一部の人は、いまだに農業高校に対して「肉体労働が中心の、進路の幅が狭い学校」という先入観を抱いているようだ。
この固定観念をいかに払拭するかが、今後の農業高校の生命線となる。
学校側は、自分たちが手にしているのが「最先端の武器」であることをもっともっと誇るべきだ。
ドローンを操り、バイオテクノロジーを駆使し、地域経済をプロデュースする。その姿を、偏差値や従来の序列とは異なる「かっこいい専門性」として提示していく必要があるだろう。
幸い杉戸農業高校は、早くから学校公式Instagramを開設しており、多くのフォロワーを得ている。
「かっこいい専門性」を発信し続けて欲しい。
なお、この記事を書いている時点でフォロワーは2997人となっている。
皆さん、ぜひ3000人突破にご協力を。
農業高校生の未来は、決して暗くない。
どんなに科学が発達しようが、AIが進化しようが、人間が食事を摂らなくなる未来はやって来ないだろう。
伝統的な農業の後継者も大事ではあるけれど、日本の「食のシステム」をアップデートするイノベーターになって欲しいな。

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