マーケティングの世界には、「レッドオーシャン」と「ブルーオーシャン」という考え方がある。
 競争相手がひしめき合い、限られた市場を奪い合うのがレッドオーシャン。反対に、まだ競争相手が少なく、新たな需要を創り出す余地が大きいのがブルーオーシャンである。
 言葉だけ聞けば、誰だってブルーオーシャンに行きたいと思うだろう。
 しかし現実には、そう簡単ではない。

◆レッドオーシャンは過酷だが、分かりやすい
 レッドオーシャンには競争相手がいる。
 競合校が説明会を増やせば、自校も増やす。SNSを始めれば、自校も始める。合同説明会に出れば、自校も出る。
 競争は激しいが、少なくとも「何をすればいいか」は見えやすい。競争相手そのものがベンチマーク(基準・指標)になるからだ。

 一方、ブルーオーシャンには手本がない。
 「本当に人が集まるのか」
 「需要はあるのか」
 「誰もやっていないのには理由があるのではないか」
 そんな不安がつきまとう。

 しかも、うまくいかなかった場合には、「なぜそんなことを始めたのか」と説明しなければならない。
 これが、組織がブルーオーシャンへ踏み出しにくい大きな理由だろう。

◆25年前、公私合同は「ありえない」企画だった
 今から四半世紀ほど前、公立高校と私立高校が同じ会場に集まる受験イベントを企画した。
 現在も続いている「彩の国進学フェア」である。主催は読売新聞東京本社さいたま支局。
 今でこそ、公私立高校が一堂に会する進学イベントは珍しいものではない。
 しかし、当時はそうではなかった。
 「公立と私立が一緒にできるわけない」
 という反対論も強かった。

 それでも、企画の趣旨を理解してくれる新聞社、公私立高校、塾、協賛企業などに恵まれ、開催にこぎつけた。
 結果としてイベントは定着し、長年続くブランドになった。
 
 ここには先行者利益がある。
 単に「最初に始めた」ということだけではない。長く続けることで、参加校との関係、協賛企業とのつながり、運営ノウハウ、開催時期の認知、来場者の習慣などが蓄積されていく。
 後発が同じ形式のイベントを始めたとしても、この蓄積には簡単には追いつけない。
 
 ブルーオーシャンも、やがてはレッドオーシャンになるが、早く入った者は、レッドオーシャン化した後も有利な位置に立てる可能性が高い。

◆レッドオーシャンの戦いからは逃げられない
 だからと言って、レッドオーシャンで戦わなくてよいという話ではない。
 高校募集で言えば、中学3年生を対象とした学校説明会、個別相談会、合同進学フェアは避けて通れない。
 そこには今年の受験生がいる。
 学校にとって、今年の募集は待ったなしである。

 したがって、レッドオーシャンでは全力で戦わなければならない。
 問題は、全戦力をそこに投入してしまうことである。
 目の前の中3生を追いながら、来年、再来年、その先の市場にも手を伸ばしておく。
 今日の募集を戦いながら、明日の募集を育てる。
 その発想が必要だ。

◆中1・中2対象説明会は、まだ青い
 現在、学校説明会の申込フォームを見ると、「中1」「中2」「中3」と学年を選択できる学校はかなりある。
 つまり、中1・中2の参加そのものは想定されている。
 しかし、その多くはあくまで中3向け説明会への参加を認めているだけだ。

 中1・中2を主役として、最初からプログラムを設計した学校説明会となると、まだ多くはない。
 中3生には、入試制度、選抜基準、募集要項、個別相談といった情報が必要になる。
 だが、中1・中2生が知りたいことは少し違うと思われる。

「高校とはどんな場所なのか」
「普通科と専門学科はどう違うのか」
「どんな学校生活があるのか」
「自分にはどんな高校が合うのか」

 川の流れに例えるなら「ずっと上流の話」である。

◆合同説明会は、さらに青い
 今もっとも注目したいのが合同説明会である。
 中3生を対象とした合同進学フェアは全国各地にある。
 もはや完全なレッドオーシャンだ。

 ところが、中1・中2、それ以下の学年を明確な主対象とした高校の合同説明会となると、状況はまったく違う。
 少なくとも、まだ一般的な形にはなっていない。
 ここには大きなブルーオーシャンが残されている。

 目的は、志望校を決めてもらうことではない。
 そのきっかけを提供する場である。
 中3になってから学校を探し始めるのではなく、中1・中2の段階から高校という世界に触れてもらう。
 これは学校側にとっても、生徒側にとっても意味がある。

 もちろん、この市場も永遠にブルーオーシャンではない。
 中1・中2向けの説明会が一般化し、合同フェアも増えれば、やがて競争は激しくなる。
 しかし、そのとき先行者には蓄積がある。
 「あのフェアは中1・中2になったら行くものだ」
 という認知が生まれれば強い。

 学校や塾とのネットワークもできる。運営の経験も積める。参加者のニーズも把握できる。それらすべてが先行者利益になる。

 25年前、公私合同という発想はブルーオーシャンだった。今ではそれが当たり前になった。そして今、次のブルーオーシャンが見えている。
 明確に中1・中2以下をターゲットとした合同説明会、進学フェアである。

 さて、最初にその青い海に漕ぎ出すのは誰か。