先週末、取材で西武文理高校に行ってきた。
 目的は授業取材だったのだが、せっかくなので、開店したばかりのファミリーマートも見せてもらった。
 同校が実践している課題解決型学習「ガチ・プロジェクト」の一環として、5人の女子生徒が校内へのコンビニ誘致を発案し、生徒たちが企業側と交渉し、実現にこぎつけたという。
 なかなか「ガチ(本気)」ではないか。

西武学園文理高校(埼玉県狭山市)/「学校にコンビニを!」高校生の提案から実現 西武学園文理の「ガチ・プロジェクト」(よみうり進学メディアWEB版 2026年10月8日)

 最近、高校の校内にコンビニができたという話をよく聞くようになった。
 記憶に新しいところでは、県立草加東高校にヤマザキショップがオープンした。公立高校としては埼玉県内初のケースだという。
 私立では、埼玉栄、花咲徳栄、浦和学院など、生徒数の多い学校で以前から校内コンビニの例がある。数千人規模の生徒を抱える学校なら、小さな町と同じくらいの人口が毎日そこにいるわけだから、コンビニが成立してもそれほど不思議ではない。
 しかし草加東高校は3学年合わせて1000人規模である。ここは非常に興味深いところであるが、いかなる「立て付け」でこれが可能になったかを知りたい公立関係者は、直接同校に聞いてほしい。

◆なぜ今、校内コンビニなのか
 そもそも、なぜ最近になって校内コンビニが増えているのだろう。
 理由はいくつか考えられるが、従来型の売店や食堂を維持することが難しくなっていることが大きい。
 学校の売店や食堂は基本的に昼休みを中心とした短時間営業で、ある意味効率は良いのだが、原材料費や人件費が上がり、生徒数も減少している中で、採算が合わなくなり、これまで委託していた企業が次々に撤退してしまった。

 その一方で、コンビニチェーンには商品調達、物流、在庫管理、決済など、すでに完成した仕組みがある。
 セルフレジやキャッシュレス決済が普及し、省人化も進んだ。
 こうした条件がそろったことで、学校という限られた市場でも店舗を運営しやすくなったのではないか。
 つまり校内コンビニブームは、学校側の事情と企業側の事情、さらに技術革新が重なった結果と見ることができる。

◆単なる売店から学校インフラへ
 コンビニは、生徒にとって文字通り「便利」なのは間違いない。
 おなかが減った、のどが渇いた、アイス食べたい、文具が必要になった、ガムよりグミ。
 そんなとき、校内ですべて済む。

 だが、私はこの話は単なる「便利な学校設備」で終わらないような気がしている。
 西武文理の事例がそのことを考えるきっかけになった。
 学校が企業に依頼してコンビニを設置したのではなく、生徒自身が学校生活の課題を見つけ、企業と交渉し、学校の中に新しい機能を作った。
 校内コンビニ設置のニュースバリューはすでに低下しているが、西武文理の場合、実現までのプロセスが面白い。

 学校の中だけで完結していた教育が、企業や地域社会と直接つながり始めている。
 昔の学校は、良くも悪くも閉じた空間だった。
 外部から切り離された空間があり、その中で教育活動が行われる。地域との交流はあっても、基本的には「学校」と「社会」は別の世界だった。
 しかし今、その境界線が少しずつ薄くなっている。
 企業が学校に入り、地域の人が学校に入り、生徒が外に出て社会と交わる。
 校内コンビニは、その象徴の一つかもしれないというのが私の視点だ。

◆学校が地域を支える時代へ
 これまでは「地域が学校を支える」という言い方が多かった。
 地域住民が学校行事に協力する。企業が職業体験を受け入れる。自治体が学校を支援する。
 もちろん、それらはこれからも必要だ。
だが人口減少が進む地域では、逆の関係も重要になってくるのではないか。

 学校には毎日、多くの人が集まる。
 校舎が、教室がある。体育館がある。グラウンドがある。通信環境がある。そして何より、若い人たちがいる。
 となると、商店、交通、医療、福祉など地域のさまざまな機能が縮小していく中で、学校そのものが地域を支える拠点になっていく可能性がある。
 「地域に学校がある」のではなく、「学校があることで地域が成り立つ」という話は以前にも書いた。

 私のようなジジイが、校内コンビニに弁当や飲み物を買いに行く。学校がそんな場所になる日がやってくるかもしれない。
 と、話が飛躍したが、学校が社会に開かれていくとはどういうことなのか。そして、高校が地域インフラになるとはどういうことなのか。西武文理高校のファミリーマートを見ながら、そんなことを考えたわけである。

 このテーマ、いずれもう少し掘り下げてみようと思う。