浦和学院高校が併設中学校を開設するのは皆さんご存知のとおり。
開校は2026年(令和8年)4月。
ということは来年には募集活動が始まる。
つい先ごろ、同校HPに新校舎建設工事に向け地鎮祭が行われたというニュースが載っていた。
(仮称)浦和学院中学校 建設に向けた地鎮祭を執り行いました
新しい中学校が出来るとなれば、「さて生徒は集まるのか」というところに関心が向かうが、その話は後半で述べる。
まずは、中高一貫は時代のトレンドという話だ。
◆間もなく終了6・3・3制
現在の6・3・3制は戦後にできた制度である。
ざっと80年近く経過した。
この制度が出来た昭和20年代後半から30年代にかけて高校進学率は40~60%程度だった。
昭和40年代に70%を超え、50年代には90%を超えた。
つまり、15歳で就職する者が大勢いたわけである。
国全体も決して豊かとは言えず、平均寿命も70歳に達していなかったこの時代、12年間の後半部分を「3・3」で分けるのは時代に合ったものだった。
しかし、今や高校進学率も99%まで達し、大学進学率も60%を超えようかという時代を迎えており、後半部分を「3・3」と分けるのは合理性を欠くのではないか。
無駄が多いのではないか。
多くの私立高校が併設中学校を作るのは、生徒の早期確保という動機もあっただろう。
近隣の学校との対抗上というのもあったかもしれない。
だが、受験の低年齢化という弊害はあるにしても、いざ始まってみれば、むしろ学校生活に余裕が生まれ、行事なども減らす必要はなく、流行りの探究学習も存分にできるのである。
それでいて大学入試にも強い。
もはや中高一貫はブームではなくトレンド、時代の流れである。
今はまだ「6・3・3制」に対して「6・6制」は少数派である。
しかし、「6・6制」で育った生徒が社会の中枢で活躍するようになれば、かれらには「6・3・3制」へのこだわりがないから子供にその道を歩ませるのに何の躊躇もないだろう。
こうしてじわじわと「6・6制」が特別なものではなくなって行く。
時間はかかるが、そういう時代が必ずやって来る。
今はまだ高校単独である学校も、当然中高一貫は視野に入れているだろう。
その際、「はたして生徒が集まるか」という目先の議論だけに終始するべきではない。
すでに埼玉県内でも併設中学校を持たない学校は少数派である。
世の中、少数派が有利なことは何もない。
併設中学校を持つか、あくまでも高校単独で行くか。
これは明日の募集の話ではなく、学校全体としての持続可能性の問題である。
以下、(仮称)浦和学院中学校の可能性について
◆浦和学院中学、エリア・路線は好条件
浦和学院はさいたま市緑区にある。
同じ緑区にあるのは公立では浦和東、私立では浦和明の星女子と青山学院大学系属浦和ルーテル学院。
最寄りと言える駅はないが、距離的には埼玉高速鉄道「浦和美園駅」が近い。
現在スクールバスは武蔵野線「東川口駅」から運行されているが、浦和美園便も検討されていいだろう。
ちなみに浦和ルーテル学院は浦和美園駅からの便がある。
緑区の中でも美園地区は今後開発がさらに進むと予想される。
令和に入って美園中学校から美園南中学校が分離独立したように周辺人口は増加している。
また、武蔵野線「東川口駅」のある川口市戸塚地域には、生徒数市内1位.2位の戸塚西中学校・戸塚中学校がある。
というわけで、エリア人口は今後増えることはあっても急減することはない。
武蔵野線沿線も「東川口駅」以東に東武スカイツリー線との乗換駅「南越谷駅」があり、その先に成長著しい「越谷レイクタウン駅」がある。
さらには「吉川駅」「吉川美南駅」「新三郷駅」「三郷駅」と成長可能性のある地域が続き、江戸川を渡れば「南流山駅」でここは子育て世代に人気の街。
周辺人口の減少や、鉄道路線の不便さなどから募集面で苦戦を強いられている学校は多いが、その点では良い条件がそろっている。
◆一本足打法からの脱皮
浦和学院と言えば野球である。
夏の甲子園出場15回は2位の花咲徳栄高校(8回)、3位の春日部共栄など(5回)を大きく引き離している。
他にもハンドボールなど強豪部活もあるが、世間のイメージは「野球の浦学」だ。
県内には部活動(主に運動部)で名を上げる一方、大学進学面でも確実に実績を作っている私立学校がある。
最近で言えば昌平高校などがその代表格だろう。
野球ではライバルの春日部共栄高校も進学面では浦学のはるか上を行っている。
同じく部活イメージの強い埼玉栄高校にしても進学面では浦学を圧倒している。
そして、これらの高校の附属中学校はいずれも150人近い募集に成功している。
これらに伍して戦うには、やはり部活だけの一本足打法では難しい。
学習指導面、進学指導面でどれだけ新しい浦学像を打ち出せるか。
二本足打法、いや二刀流の浦学に脱皮できるかが勝負の分かれ目だろう。
すでにある国際類型に、従来からある海外留学必須のグローバルコースに加え、国際バカロレアコースを新設する。
この一手だけでは難しいが、学習指導・進路指導面からの学校改革が進めば、前述したエリア・沿線面での不利が少ない分、成功の可能性は高いだろう。
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