県立小川高校で行われた「高校生模擬ビジネス出資者(IR)説明会」に行ってきた。
 同校は「おがわ学(総合的な探究の時間)」の一環として起業体験プログラムを実施している。
 模擬起業体験を通して地域や自分自身の未来を考え、働き方の新たな選択肢に気づかせようとする試みである。

◆アントレプレナーシップ教育を分かりやすく言うと
 アントレプレナーシップは起業家精神と訳されている。
 アントレプレナーが起業家、シップはスポーツマンシップなどのシップ(精神)。

 言葉が長いので「アントレ教育」と短縮するが、これは必ずしも起業家育成だけを目的とするものではない。
 起業家に求められるであろう「創造力」や「課題解決力」や「リーダーシップ」を育む教育である。
 だから、将来会社を興さなくてもいい。
 会社員や公務員になっても構わない。
 自ら課題を発見し、それらに対し、柔軟かつ主体的に取り組める力をつければそれでいい。

◆日本で起業が少ないのは
 日本に起業が少ない原因は、「失敗に対する危惧(再チャレンジが難しい)」、「身近に起業家がいない」、「学校教育(勇気ある行動への低評価)」だという意見がある(設立5年以内のベンチャー企業へのアンケート結果で、出典はベンチャー白書)。

 実際に起業した人の多くは「失敗に対する危惧」を最大の原因と考えているが、3番目に学校教育がきている。
 最近、大学でもようやくアントレ教育が始まったようだが、それでも大学生全体の1%程度にしか提供されておらず、諸外国に大きく遅れをとっているのが現状である。

 そんな中、アントレ教育に一歩踏み出したのが県立小川高校で、県内高校ではトップランナーの一つに数えられるだろう。
 私は起業家ではないが、安定した公務員の身分を捨て、明日をも知れぬ独立開業の道を選んだ者として、アントレ教育には非常に興味を持っているのである。

◆小川高校版「令和の虎」
 YouTube番組に、「令和の虎」というのがある。登録者100万人を超える人気番組だ。
 起業家である志願者が新たな事業計画をプレゼンし、投資家である審査員がそれを聞き、出資の可否を決定する。

 今日小川高校で行われたのもそれだ。
 集められた我々は出資候補者だ。
 私の場合、取材者という面もあるが、出資候補者でもある。
 ほかには地元金融機関の方、地元企業の方、小川町役場の方、大学関係の方などが参加していた。

 生徒たちがビジネスプランを発表する(今回は6グループ)。
 我々はそれを聞き、出資するかどうかを決める。
 短いが質疑応答時間もある。
 こちらは出資する立場であるから、事業計画の問題点については質しておく必要はある。
 すべてのグループに質問が飛んだ。
 ただ、「令和の虎」のように未熟さや杜撰さや見通しの甘さを厳しく指摘することはない。
 みんな優しい。
 頑張れと励ましている。
 虎ではなく羊か兎のような大人ばかり。

 で、結論だが、私も出資者の一人となった。
 昨年はちゃんと配当まで出したというから今から楽しみだ。

 なお、企画制作した商品は、今年リニュアルオープンした「道の駅おがわまち」等で販売されるというので、帰りに昼食がてら道の駅を下見してきた。 

◆ガチな会社設立
 私は、学校に対し、ホンモノの会社設立を提案している。
 株式会社でもいいし、合同会社やNPOなどでもいい。いずれにしてもホンモノの法人を高校内に設立する。

 たぶん前例がないことなので(あったとしても稀少)、困難なことだらけだろう。だが、それだけにやりがいがあるし、得るものも大きい。

 先生方も一緒にリスク取ろうぜ。
 先生方も起業体験だ。
 将来きっと役立つぞ。
 と、これは半分ジョークだが、次の目標はガチな法人化であろうと思っている。

◆サービス業への進出
 今日のビジネスプランは、いずれも商品の企画・製造・販売に関わるものだった。
 小川和紙を使ったバッグを作る。
 小川特産の有機野菜を使用したティーバッグを作る。
 といったもの。

 もちろんこれはこれでいい。
 が、もう一つ加えて欲しいのは新たなサービスを起こすことだ。

 たとえば。
 学校内に広告制作会社か広告代理店を設立し、外部企業と協力し学校案内やポスターを制作する。ホープページやSNSの運営も先生方と協力して行う。

 学校内に旅行代理店を設立すれば小川町のインバウンドに貢献できるし、何よりも国際交流が盛んな小川高校にピッタリ。

 いっそ学校内に生徒が運営する塾か予備校を作って進学実績の向上につなげたらどうか。先生方が生徒に雇用される形になるがそれも面白いではないか。

 モノを作って売るという点では、農業高校など専門高校生にはかなわない。
 なにせかれらは生産や製造という点においてすでにプロの卵なのである。
 ホンモノの施設設備を用いて専門家の力を借りてホンモノを作っている。
 だから、リソースに欠ける普通科高校においては、製造・販売は単なる「ごっこ」になりかねない。
 今すぐにということではないが、将来的にはサービス業も視野に入れてもらいたいと思う。