学校広報は大きな転換期を迎えている。
これまで多くの学校が行ってきた広報活動は、「受験生」を対象としたものだった。中学3年生になれば学校説明会を開き、文化祭に招待し、体験入学を実施し、学校案内を配布する。そして、その中から志願者を集める。
もちろん、この方法が間違っているわけではない。しかし、超少子化という新しい時代を迎えた今、それだけでは十分ではなくなってきた。
私はこれからの学校広報を「育てる広報」と呼びたい。
(すでに誰かが使っており、自分が知らないだけの可能性もあるので一応Googleで検索をかけてみたが、ずばりヒットするものはなかった)
◆採集型から農耕型へ
従来の広報は、例えるなら「採集型」である。
山へ入り、十分に熟した実を探し、それを収穫する。中学3年生という、まさに受験を目前に控えた生徒に学校の魅力を伝え、自校を選んでもらうという考え方だ。
一方、これから必要なのは「農耕型」の広報である。
まず土地を耕す。
種をまく。
水を与える。
手入れをする。
時間をかけて育てる。
そして最後に実を収穫する。
中学3年生になって初めて学校を知るのではなく、中学1年生、あるいは小学校高学年の頃から、その学校に親しみを持ち、憧れを抱き、「いつか行ってみたい学校」として心の中で育てていくのである。
◆広報の早期化とは何か
広報活動の開始時期を早めるべきだと再三言ってきた。
そのせいかどうか(いや、そうではなく学校自身が気がついたのだろう)、1月から3月にかけて中1・中2対象説明会を開催する学校が増えてきた。また、5月から6月にかけて何らかの募集イベントを開催する学校も増えてきた。
しかし、広報の早期化の本質は、学校説明会を少し早めに開催することではない。
志望校が決まるまでには長い時間が必要だという前提に立つことである。
学校への興味が生まれ、その学校を調べ、先生や在校生と出会い、文化祭を見て、部活動を体験し、何度も学校へ足を運ぶ。
その積み重ねがあって初めて「この学校へ行きたい」という気持ちが育つ。
果実が実るまでに時間が必要なのと同じように、志望校も一日では育たないのである。
◆なぜ低年齢化なのか
もう一つ重要なのが、広報対象の低年齢化である。
これも、「中学1年生にも学校案内を配ればよい」という話ではない。
植物は若いうちほど育てやすい。
種の段階、苗の段階、若木の段階で丁寧に育てれば、大きく枝を伸ばし、美しい花を咲かせる。
逆に、十分に育った木をあとから思いどおりの形に変えることは難しい。
学校選びも同じだ。
中学3年生になれば、多くの生徒はすでに自分なりの高校像を持っている。友人や保護者、塾、先生からさまざまな情報を得て、ある程度方向性が固まっている。
その段階で進路変更を促すことは決して容易ではない。
だからこそ、中学1年生や2年生の頃から学校との接点を持つことが重要なのである。
◆選ばせる広報ではなく、選ぶ力を育てる広報
「育てる広報」という言葉を使うと、長い時間をかけて参加者を志願者へ変えていく技術だと受け取られるかもしれない。
しかし、それは私の考える「育てる広報」ではない。
育てるとは、子どもたちを自校に都合よく変えていくことではない。自校に合わせて価値観や進路希望を誘導することでもない。
学校広報を担っているのは企業の営業マンではなく教育者である。
だからこそ、「この生徒は本校よりも別の学校のほうが力を伸ばせる」「こちらの学校の教育環境のほうが本人には合っている」と判断したなら、たとえ相手がライバル校であっても、その道を勧めるくらいの姿勢が求められる。
これは単なる広報マンではない、教育者としての矜持というものだ。
ここでいう「育てる」とは、学校が子どもを自校向きに育てることではない。
子ども自身が自分の適性や興味、将来を考え、自分に最もふさわしい進路を主体的に選べるよう支援することである。
学校広報の重要な目的は、「自校を選ばせること」であるが、それだけではない。子どもたちが、自分に最もふさわしい進路を選べる力を育てることが重要だ。繰り返すが、広報活動を行う主体が営業マンではなく教育者であるからだ。

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