高校生の夏は全国大会の季節だ。
 インターハイ、全国高校総合文化祭など、各地で高校生たちが日頃の成果を競い合っている。
 そこで優れた成績を残せば、全国紙や地方紙に名前が載る。写真付きで紹介されることも珍しくない。
 テレビのニュースで顔と名前が出ることもあるし、大会主催者のホームページには結果一覧として氏名が掲載される。また昨今はSNSやYouTubeを通じても広く知られる。

 そんな中、ある県立高校のホームページを見ていて少し不思議な光景に出会った。
 インターハイで優勝した選手について、氏名がイニシャルで表記されていたのである。
 (写真は掲載されている)

◆学校には学校のルール
 学校が生徒の氏名や写真をどこまで公開するかについて慎重になるのは当然のことだ。
 学校ホームページは誰でも閲覧でき、記事が長期間残る。検索すれば何年後でも見つかる可能性がある。

 ゆえに新聞社の取材を受けることと、学校自身がホームページに氏名を掲載することは別の話でもある。
 年度当初に保護者や生徒から得ている掲載同意の範囲もあるだろうし、「学校HPでは原則として生徒名を出さない」という内部ルールを定めている可能性もある。
 そうしたルールは、おそらく生徒を守るために作られたものだ。
 だから、「全国紙に名前が出ているのだから学校も実名で載せればいいではないか」と単純には言えない。

◆それでも広報的には、やはりもったいない
 ただ、学校広報という観点から見ると、非常にもったいないとは思う。
 全国大会優勝や入賞は、その生徒個人の成果であると同時に、学校にとっても大きなニュースだ。
 「本校生徒が優勝しました」と伝えるだけでも十分立派だが、「誰が、どんな努力をして、どんな思いで全国の舞台に立ったのか」まで伝えられれば、そのニュースは一気に人間味を帯びる。
 名前というのは、単なる個人情報ではない。
 その生徒の存在そのものを示すものであり、努力の物語の入口でもある。

 新聞では顔も名前も出て本人のコメントまで紹介されている。
 「今日の自分を追い越せるように日々努力したい」(本人談:埼玉新聞より)
 一方、学校に戻ると「T.Mさん」となる。
 ルールとしては理解できるが、学校広報に関心を寄せる者としては、どうしても惜しいと感じてしまう。

◆個人情報保護と情報発信は対立しない
 個人情報を守ることと、生徒の活躍を積極的に伝えることは、本来対立するものではない。
 重要なのは、「出すか、出さないか」の二択ではなく、本人や保護者の意思を確認した上で、何をどこまで公開するかを判断することだろう。
 たとえば全国大会出場や全国優勝の際には、改めて本人と保護者に確認し、了承が得られた場合は氏名や写真を掲載する。
 そうした柔軟な運用も考えられる。
 全員一律に匿名にする方法は安全ではあるが、学校教育の成果を伝える機会まで小さくしてしまう可能性がある。

◆では、ブロガーやYouTuberはどうするか
 もう一つ考えておきたいのは、学校外の発信者である。
 学校がイニシャル表記にしている一方、大会公式記録や新聞記事には実名が出ている。その場合、我々のようなブロガーやYouTuberはどちらに合わせればよいのか。

 基本的には、情報源ごとの公開基準に従えばよいと考える。
 大会主催者が公式に実名を公表し、新聞やテレビでも一般に報道されている事実を紹介するのであれば、第三者が実名を用いること自体は不自然ではない。
 ただし、学校ホームページの記事を紹介するのであれば、学校があえてイニシャルにしている意図にも配慮するべきだろう。

 特に未成年の場合、「公開されている情報だから何を書いてもよい」という姿勢は避けるべきだろう。
 必要以上に個人情報を集めたり、学校生活や家族関係など大会成績とは関係のない情報まで掘り下げたりする必要はない。
 公開情報を扱うことと、プライバシーへの配慮は両立させなければならない。

◆守る広報から、伝える広報へ
 言うまでもないことだが、学校には生徒を守る責任がある。
 だから慎重なルールが作られること自体は理解できる。
 ただ、そのルールがいつの間にか目的化してしまい、「とにかく名前を出さなければ安全」という運用になっていないかは、ときどき見直してもよいのではないか。

 全国の舞台で活躍した生徒は、学校にとって誇るべき存在だろう。
 守るべきものは守る。その一方で、本人が望むなら、その努力と成果を堂々と世の中に伝える。
 学校広報には、その両方が求められていると思う。