埼玉県私立高校入試では、推薦入試を「単願」と「併願」に分けて募集する学校が多い。
 「単願」は、その私立学校を第一希望としているから、合格すれば即入学手続きをする。
 対して「併願」は、公立や他の私立も受験するから、合格しても直ちに入学手続きをするとは限らない。

 もっとも多いパターンは、公立を第一希望としており、おさえとして私立併願を受けるパターンだ。
 昔の言い方で「すべり止め」というやつだ。
 私のような年寄りは、つい昔風にそう言ってしまうが、これだけレベルアップしてきた私立高校に失礼だ。
 それに、第一希望が叶わず、結果入学することになった子供たちのことを考えても、ふさわしくない言葉だ。

◆「単願」でも落とされる場合はある 
 「単願」は絶対に受かる。
 と思われがちだが、そうとは限らない。
 過去の各校データを見ても受験者数と合格者数は必ずしも一致していない。
 少ない人数ではあるが、「単願」でも落ちるのだ。
 ただ、当日の試験の点数がちょっとやそっと低いくらいでは不合格にはならない。
 とんでもなく悪い点数さえ取らなければいいのだから、普通の受験生は心配しなくていい。

 落ちる一番の原因は受験態度の悪さだろう。
 大学共通テストの「49歳鼻出しマスク男」のような迷惑受験生。
 ほとんどの受験生は、説明会や個別相談に来ており、それで合格の可能性を示唆されて受けているわけだが、中に突然受けてくる受験生も僅かながらいる。
 もちろん事前の相談なしに受けても構わないし、得点が合格ラインに達しており、受験態度に何も問題なければ合格だ。
 だが、時たま、とんでもなく受験態度が悪い受験生も現れる。
 それが「単願」で落とされる受験生だ。

 ちなみに公立入試でもごく稀にそういう受験生は現れる。
 私の勤務した学校ではそのような例はなかったが、聞いた話では真面目に問題を解こうとしない受験生というのもいるそうだ。
 親や先生に言われて仕方なく受けに来たのだろう。

◆「併願」で受けて即手続きに至る例
 前述のように、公立を第一希望とし、私立を第二希望として受ける場合は「併願」の形で受けることになる。
 この場合は、合格となってもすぐには入学手続きをしない。
 私立学校側も事情は分かっているから、延期手続きをすれば公立の結果が出るまで待ってくれる。

 が、にもかかわらず、「併願」で受かっておきながら即入学手続きをしてくる例が毎年少なからずある。
 要は、もう公立は受けませんということだ。
 こういうケースを私は勝手に「隠れ単願」と名付けているのだが、もっと適当な言葉はないか。
 
 何らかの心境の変化があったのだろう。

 これがもし、公立受験まで気持ちが続かないからだとしたら、残念なことだ。
 あと1か月なのだ。ゴールは目の前なのだ。
 本命は公立だとしても、私立の合格証を手にしたら嬉しいし、ホッとする。
 そこで気が緩みすぎて、「もういいや、私立にしよう」とならないようにしてもらいたい。

◆今年は「隠れ単願」が増える可能性 
 で、今年の話だが、相談の段階では「併願」としていながら、実際には「単願」に切り替えて出願してきた受験生がいるのではないか。
 これは後日取材し検証してみようと思う。

 また、「併願」で受けていながら合格即入学手続きという受験生も例年より多いのではないか。
 爆発的に増えることはないが、例年より減ることはなく若干増加するだろうというのが私の予想だ。
 もちろんこれは、今年の受験生はコロナに翻弄され、その中で精神的に非常に不安定な受験生活を強いられただろうという想定からだ。

 私立入試は何とか乗り切れそうだが、1か月先の公立入試は予定通り実施できるかどうかの不安も残る。
 最悪公立入試が全体として3月に延びるという事態にでもなれば、気持ちが切れてしまう受験生も出てくるだろう。
 浦和や大宮をはじめとする上位校受験生では考えにくいが、中位校以下だと志望校に対するこだわりがそれほど強くない傾向があるので、「隠れ単願」が表に現れてくる可能性がある。
 
 ともあれ、私立入試は明後日からだ。
 早ければ入試翌日には合否結果が出るだろう。
 「併願」受験生の公立に向けての気持ちの切り替えがうまく進むよう、塾や中学校の先生方ご指導よろしく。