明日から埼玉県私立高校の入試が始まる。そこで本日は、「テストで力をつける」という話題をお送りする。
 一般的にはテストは「力を試すもの」である。
 学校の定期テストも模擬試験も、頻繁に行われる授業中の小テストも、みんなそう。
 その集大成である入学試験だって、目的は異なるが「力を試すもの」だ。

 しかし、ここにもう一つ、テストの重要機能として「力をつける」を付け加えよう。
 テストを受ければ受けるほど力がつくという話だ。
 
 受験生はこれまで何回も模擬試験を受けてきたと思うが、終わって家に帰って来て、「いやあ、今日の模試は手ごわかったな。でも、おかげで力がついた」といった感想を持ったことがあるか。
 たぶん、ないだろう。
 「何点取れたかな、偏差値どれくらい取れそうかな」
 そんな程度だ。
 しかし、感想はどうあれ、結果としてはテストを受けたことによって、あなたの力は上がったのだ。

 なぜ、そう言えるのか。

◆入れると出すはワンセット
 テスト問題を解くには「思い出す」という作業が必要だ。
 頭の中に入っているはずの記憶を取捨選択して呼び戻し、それを再構成して答案を作成する。
 このことは中学生向けの記事にアウトプット(出力)の重要性という言い方で何度も書いてきた。
 このアウトプット作業、又の名を記憶呼び戻し作業ないし、思い出し作業。
 この経験、回数が多いほど、入試で必要な力がつく。

 もちろん、その前提としてインプット作業(覚える作業)があるのは当然だが、入れる一方では入試突破のための力はつかない。

 つまり、記憶というのは、入れて出して、最低一往復しないと定着しないということだ。
 
 私が受験生に対し、「自信が無いなどと言わず、模試はどんどん受けろ」と檄を飛ばすのは、せっかくの力をつけるチャンスを逃してしまうからだ。

◆授業中、先生が小テストをやる理由
 学校の先生が授業中、頻繁に小テストを行うのはなぜか。
 ここまででもうお分かりと思うが、成績をつけるためではない。
 中にはそういう先生もいるかもしれないが、主たる狙いは記憶呼び戻し作業を通じて知識の定着を図ることだ。
 引き出す回数が多いほど知識が定着することを、科学的に、あるいは経験的に知っているからだ。
 「え~、またですか」と生徒はブーブー言うが、力をつけるためのもっとも確実な方法を選択しているだけだ。

◆過去問は力試しのためではない
 私は過去問練習は早めに始めるべきという考えで、そのことは何度も言ったり書いたりしてきた。
 過去問は決して力試しのためにやるものではない。
 「過去問はまだ早い。ギリギリでいい」とアドバイスする人もいるようだが、
 その言葉、私には「まだ力はつけなくていい」と言っているようにしか聞こえない。

 過去問練習は傾向を知り対策を練るために有効である。
 が、もうその時期は過ぎた。
 いま過去問演習をするのは、力をつけるためである。

 できてもできなくてもいい。
 いや、もちろんできたほうが良いに決まっているが、
 できようができまいが、やった分だけ力にはなっているのだ。

 もしもできなかったら、もう一回知識を入れ直して、もう一回出してみる。
 それでもダメならもう一往復。
 これで力になる。

◆緊張感ある場面ほど力がつく
 よく高校野球で「甲子園に来てから上手くなった」という話を聞く。
 これは野球に限ったことではない。他でも十分にありそうな話だ。

 非常にプレッシャーのかかった場面、緊張感のある場面ほど練習の結果を出すことが難しい。
 しかし、そういう場面で引き出された技は確実に自分の物になる。
 一瞬にして力がつき、あっという間に成長する。

 こうしたことが受験に当てはまるとすれば、
 明日からの私立入試は、もっとも力がつく場面となる。
 授業中の小テストよりも、学校の定期考査よりも、模擬試験よりも、
 もちろん自宅での過去問学習の時よりも、圧倒的に緊張感あふれる場面であるからだ。

 というわけだから受験生諸君。
 明日試験から帰って来たときは、朝出かけた時よりも間違いなく力をつけ、成長しているだろう。
 それを糧として、次の公立試験に挑もう。

 以上、受験生への激励メッセージである。