少しは見やすくなった「よみうり進学メディアWEB版」に掲載された記事を紹介させてもらおう。

 「先生は元有名予備校講師 東京成徳大学深谷高校」
 「数学好き育てる同時進行の名人 栄北高校」
 「活気あふれるペアワーク 埼玉県立浦和北高校」

 ブログ読者の皆さんには、取材に行く都度記事掲載しているので、これらの学校に関する記事にはご記憶があろうかと思う。
 今回紹介したのは、中学生向け情報紙「よみうり進学メディア」に掲載された記事である。
 紙版は、埼玉県内約400の公立中学校(2、3年生)に配布されている。
 発行部数は約15万部。

 記事を読むと、全員授業の達人かと思えてくるが、別に必要以上に持ち上げているわけではなく、実際に優れた指導者なのだ。
 だが考えてみれば、学校側としても新聞掲載されるとなればエース級を出してくるわけで、いい先生に決まっているのである。
 たまに期待の新人を出してくることもあるが、今回は全員ベテランなので、こちらも安心して見ていられた。

 授業取材では50分フルに見させてもらう。
 そのため始業のチャイムが鳴る前に教室に入る。
 念のためビデオ収録もしているのでカメラのセッティングが必要という事情もある。

 休み時間中、「どんな先生ですか?」などと生徒に聞いてみたりするのは楽しい瞬間だ。
 授業が終わってからは「今日の授業、どうでした?」
 今の生徒は、そういう時の受け答えがとても上手い。
 大人相手にちゃんと会話が出来るんだね。
 自分が同じ年齢の時、出来たかな?
 いや、絶対無理。

 注意しているのはプロ目線になり過ぎないこと。
 こう見えても(って、見えないと思うが)、私は元プロである。
 注意しないと、授業をする側に立って見てしまう。
 研究授業の参観や授業観察みたいになりがち。
 ここを脱しないと読んで面白い記事が書けない。
 いまだ修業中。

 ◆最初の3分で分かる先生の力量
 授業を最初から見るもう一つの理由は、力量の差は最初の3分間に現れると思うからだ。
 生徒たちは前の時間や休み時間を引きずっている。
 これはやむを得ない。

 それを「静かにしろ」「集中しろ」などと言わず、いつの間にか授業の世界に引き込む。
 ごく短時間で。
 時間かけちゃダメなんだよ。
 50分しかないんだから。

 たとえば、生徒が割とハイな状態にあったとする。
 そんな時に、受け狙いの話しなんぞしようものなら火に油を注ぐ結果になる。
 別の世界に入り込んでしまうから、本来の授業の世界に引き戻すのに余計なひと手間をかけなければならない。
 この時間がもったいない。

 本ブログ読者の中には先生や元先生が多いから分かると思うが、教室に入った瞬間、いつも通りかいつもと違う何かがあるかを感じ取れるよね。
 で、起立・礼・着席とやっている短い間にも、いろんな情報が目に飛び込んでくる。
 もう授業は始まっているんだ。

 新人は起立・礼・着席が終わってから勝負。
 ベテランは教室に一歩足を踏み込んだ瞬間から勝負。
 そんな感じ。

◆ベクトル合わせ
 企業社会でよく使われる言葉に「ベクトル合わせ」というのがある。
 会議をやるんでも行動を起こすんでも、メンバーの方向性が一致しないと力が出ないよね、という意味で使われる言葉だ。
 学校社会に当てはめれば、授業の最初の3分間はベクトル合わせの時間だ。
 
 今日はこれから何をやろうとしているのか。
 言葉で言って済むなら簡単だ。
 「今日は、これこれについてやります」。
 うん、方向性は分かった。
 でも、まだベクトルは合っていない。
 大きさが入ってないからだ。

 大きさとは授業で言えば、先生と生徒の熱量ではないか。
 ざっくり言えば、やる気。
 
 このベクトル合わせを達人たちは難なくやってのける。
 改めて今回の取材を振り返ってみると、やり方は三人三様だったが、皆さんこれが巧みだった。