2023埼玉県公立入試の結果を受けて、「定員充足率」を考えてみる。
 「定員充足率」は(入学者÷募集人員)で表される。
 募集定員100人の学校に100人が入学すれば「定員充足率」は100%、50人が入学すれば50%となる。

 私立の場合は100%超えることもあるが、公立の場合は基本的には定員を超える入学者ということはないので上限は100%だ。
 ただし、今回の入試でも定員プラス数名の合格者を出している学校があるので、実際には100%超える学校もある。が、これは誤差の範囲と考えよう。

◆大胆な政策転換が必要
 今回の入試結果を見ると、いわゆる定員割れを起こしている学校や学科・コースがいくつかある。
 すなわち「定員充足率」が100%を下回っている学校である。

 その年その年の受験生の動きなどにより、結果としてある程度の定員割れを起こしてしまうのはやむを得ない。
 が、定員割れが恒常化しているようであれば、何らかの手を打つ必要があるだろう。
 統廃合、学科・コースの転換、定員削減、募集政策の根本的な転換などである。

◆今年度「定員充足率」が低かった学校
 欠員補充が残っているため、最終データではないが、現段階で「定員充足率」が低い学校を挙げてみる。
 なお、分母は入試募集人員(入学許可候補者数)ではなく、募集人員(定員)で計算している。

【普通科】
八潮(普・体育コース)0.45%
鳩山  0.50%
越生  0.54%
上尾橘 0.59%
蓮田松韻 0.59% 

 「定員充足率」ワースト5校は以上の学校(コース)である。
 このうち、越生鳩山は統合により2026年度から新校となるが、「定員充足率」が低い学校同士の合併であるから前途は多難だ。

 また、八潮も八潮南との統合が決まっている。商業・ビジネス系の新校となるので、体育コースは普通科に組み入れる形で廃止の方向だろう。

 上尾橘は市内4校(上尾・上尾鷹の台・上尾南)のうち最小規模の160人定員だが、今年の入学許可候補者は94人と厳しい状況だ。
 普通科単独校の県内最小規模は妻沼の120人。次に小さい160人規模が上尾橘を含め8校あるが、このうち2校(岩槻北陵・和光)はすでに統廃合が決まっている。
 このままだと、同じ160人規模で「定員充足率」83%の桶川西あたりのとの統合案が浮上するかもしれない。

 蓮田松韻も「定員充足率」59%と厳しい。この学校は旧蓮田高校と菖蒲高校との統廃合で生まれた学校だが、二度目の統廃合があるのか。市内唯一の県立高校なのでそう簡単にはなくせない事情もあるだろうが、隣接する白岡市の白岡高校も160人規模で「定員充足率」91%と苦戦が続いているので、将来的には両校の統合があっても不思議ではない。

◆入れば天国
 ここまでは、部外者として県全体の学校配置や統廃合計画を勝手に想像しながら書いてきた。

 が、人数が少ないとは言え、これらの学校を含め、「定員充足率」が低い学校を志望し、入学してくる生徒もいるわけである。
 このブログを中学生が読んでいるとは思えないが、もし機会があれば、彼らには「入れば天国」と言ってやってほしい。

 別に施設設備が劣っているわけではない。他の県立と一緒。
 先生も同じこと。
 ただ、アクセスはちょっと悪いかもしれない。

 一番の利点は何と言っても期せずして少人数教育が実現していることであろう。一人ひとりに目が届くので文部科学省が目指す「誰一人取り残さない教育」がここではすでに行われているのだ。
 
 天国は言い過ぎだとしても、本人に続ける意思さえあれば、先生たちはよく面倒を見てくれるから、楽しい学校生活を送ることができるだろう。

◆状況厳しい専門学科
 専門学科と総合学科の話もしておこう。
 「定員充足率」が低い学校・学科は次のとおりだ。
 (80人)と記している以外は40人定員である。

【農業】
 羽生実業・園芸     35%

【工業】 
 狭山工業・電気     40%
 浦和工業・設備システム 43%
 児玉・電子機械     45%
 進修館・電気システム  45%
 杉戸農業・生物生産工学 55%
 久喜工業・工業化学   63%
 秩父農工科学・機械システム65%
 春日部工業・電気    69%
 久喜工業・電気     70%

【商業】
 羽生実業・商業     20%
 皆野・商業系(80人)  36%      
 岩槻商業(80人)    46%
 鳩山・情報管理     63%
 羽生実業・情報処理   68%   
 狭山経済・流通経済(80人)70%

【その他】
 松伏・音楽       33%
 芸術総合・音楽     35%
 小鹿野・総合(120人) 37%
 誠和福祉・福祉     53%

 学校として厳しそうなのは羽生実業だ。農業系(園芸・農業経済)、商業系(商業・情報処理)の4学科あるが、すべて定員割れだ。人口5万人強の市に、普通科の羽生第一、専門学科の羽生実業、定時制の羽生と3校ある。それぞれ特色はあるのだが隣接を含めた地域の人口減に耐えられそうもない。3校の統廃合は避けられないだろう。

 工業系では電気が不人気であるようだ。歴史的に見て電気と機械が工業高校の両輪だったわけだが、情報関係やデータサイエンス関係の学科に置き換えて行く必要がありそうだ。
 久喜工業春日部工業は地域的に見て、食い合う構造になっている可能性もある。

 農業高校と名乗るのは県内では熊谷農業と杉戸農業の2校だ。いずれも歴史の古い学校だ。
 両校とも募集に苦しむという状況ではなく、熊谷農業では「定員充足率」89%の生物生産技術科(80人募集)が最低、杉戸農業では55%の生物生産工学(40人募集)が55%、造園(40人募集)が70%だが、他の学科は概ね定員を満たしている。
 農業高校や農業系高校と言うが、今やずばり農業科を持つのは秩父農工科学だけ。今どき農業では流行らんだろうというので次々と新しい学科を作ったり、改称したりした。その結果、同じ学校に生物生産工学と生物生産技術があるという訳の分からん事態が発生した。特色を出そうという気持ちは理解できるが、工学と技術の違いなど中学校の先生も塾の先生も説明できんだろう。
 私は農業(系)高校は全部行って授業や実習も見ているので、それぞれの学科内容が多少は分かるようになった。
 中身がまるっきりイメージできないのでは選びようがない。相手が中学生ということを考えたら、彼らでもある程度想像できるようなネーミングにしたほうがいいだろう。

 芸術系では美術は比較的順調だが音楽が厳しい。音楽科は大宮光陵、芸術総合、松伏の3校にあるが、普通科の伊奈学園という選択肢もある。また、私立では東邦音大、武蔵野音大の付属もある。音楽を目指す生徒の総数に対して学校数が多過ぎるということだろう。

 以上、本日は「定員充足率」の視点から今年の入試を振り返ってみた。

【以下、余談】
 昨夜から今朝にかけて10時間爆睡した。
 途中一度も目覚めず、トイレにも行かず、ふと気づいたら朝。
 若い人には分からんと思うが、年寄りにとってこんなことは年に一度あるかないかのことなのだ。
 なので、今日は非常に気分がいい。
 原因となる出来事は昨日のブログに書いたとおりだ。
 思いっきり体に負荷を与えるとこのような体験ができると再認識した。