埼玉県知事に大野元裕氏当選。投票率は32.31%で前回の26.63%を5.68ポイント上回った。このところ3回連続20%台だったので、この点は良かった。

 知事選や県議選を国政と結びつけようという動きがあるが、この考え方はよろしくない。たしかにその時々の人々の関心や気分が反映されることはあるが、国政は国政、地方政治は地方政治である。
 子育てや保育や教育に関わる問題は、国の問題でもあるが地方の問題でもある。むしろ地方固有の問題と言ってもいいくらいだ。
 高校入試一つを取り上げても、県によって日程も内容も方法も異なるわけで、それは、この問題が地方の問題だからである。
 だから、関係ないと言わず、みんな選挙行こうぜとなるわけである。

 もっとも、今回知事選では元高校教師という候補者が過去の入試に不正があったとか言っている以外は、教育政策についての言及はほとんどなく、そこで選ぼうと思っていた私としては残念な選挙だった。

 歴代埼玉県知事は、政治経験か行政経験かどちらかがある人物だった。そのことは以前にも書いた。
 青島健太氏が当選した場合、政治経験も行政経験もまったくない、埼玉県政史上初の素人知事、タレント知事の誕生となったはずだが、一応は政治経験のある大野元裕氏に軍配が上がった。

 最初は誰もが新人で素人で初心者であるから、それをもって知事として不適切と言うわけにもいかない。どんなベテランも新人から始まったのである。
 ただ、今回の知事選の背景には、汚職など金をめぐるスキャンダルがなかった。未経験者が好まれるのはだいたいにおいて、そういう時である。

 直前になって行田邦子氏が立候補を取りやめた。熱中症で入院し選挙戦を戦えないからということになっているが、これは疑わしい。立候補取りやめは本人の意志ではないだろう。せめてもの抵抗で行田氏本人は青島支持を表明してみせたが、これまでの政治経歴を見れば、大野陣営に有利に働いたとみるのが自然だろう。

 次は大野元裕氏の辞職に伴う参議院補選が10月に行われる。知事の座を大野氏に譲った形の上田清司・前知事が立候補すると言われているが、個人的には71歳の上田氏より54歳の行田氏を応援したい気持ちがある。涼しい秋なら熱中症の心配もない。