数日前、筋肉量の低下という身体の話をしたので、今日は頭の話である。記憶力は確実に低下している。特に60代後半からは顕著である。新しいことが覚えられず、古いことが思い出せないというダブルパンチにより、自信を持って言えるが、私は年々馬鹿になっている。

 こういう年寄りネタは面白くないと思うが、皆さんもいずれ辿る道である。
 少し、いや、かなり前を歩いている私が、その実情を紹介しておけば、対処の仕方を考える際の参考になるであろう。

 私は入試に関わる仕事をしているので、入試問題はよく解いている。より正確に言えば、最近よく解くようになった、である。以前は意識しなかったが、忘れてしまったことがあまりにも多いからだ。

 本業が社会科教員だったから、歴史や政治経済はいい。
 たぶん、このように教えた、授業でこう言った、こんな問題を作ったなどという経験とセットになっているからだろう。インプットとアウトプットを繰り返した記憶は忘れにくい。ただ、それでも大学入試問題はかなりきつくなってきた。

 本業以外の教科は悲惨だ。「全国高校入試問題正解」(旺文社)などで片っ端から問題を解いてみるが、よく間違える。間違えるならまだいいが、そもそも解けない。解答解説を見てもピンと来ない。
 おかしいな、中学生のときは出来たのに。と言っても、半世紀も前のことだから仕方ないか。

 まあそれでも、毎年繰り返していれば、多少なりとも衰えは食い止められるだろうと思い、この年になって受験勉強をやっている。記憶力低下を防ぐ一手段だ。

 まったく新しいことを覚えようとすると、脳が活性化されると聞いたので、それにも挑戦してみる。
 だが、理屈はそうだと分かっても、年寄りに一番きついのはこれなんだ。
 年寄りが昔話ばかりする気持ちがホント良く分かる。中高生が大人ぶって「昔は、」などと言うが、ふざけんな。そんなのは「つい昨日、」だろうが。「昔は、」っていうのは、最低でも50年は生きてから言いな。

 ふり返ってみると、どうやら50代が分かれ道であるようだ。個人差はあろうが、身体の衰えも頭脳の衰えもこのころから始まる。何か始めるならここだと忠告しておこう。
 30代、40代は何も考えなくていい。50代に入ったら考えよう。
 読者の中にすでに60代という方もいるかもしれない。手遅れかもしれないが、私と一緒に悪あがきしてみようではないか。