さすが東大、先を見ておるわいという話である。新大学入試制度において民間資格試験を導入することはひとまず延期になった。それにしても、なぜ今ごろになってと思われている人も多いだろう。
 
 中教審の答申が出たのは、たしか2014年の暮れであるから5年前だ。その下敷きとなったのはさらに1年前に出された教育再生会議の提言である。ずいぶん前の話だ。
 もちろんその時点で大学側からも高校側からも問題点を指摘する声は上がっていた。しかし、メディアはそれを報道しなかった。
 今頃になって政府を追及している野党が当時何も言わなかったのは、週刊文春が報道しなかったからだろう。

 5年以上前にもっとしっかり議論をしておくべきだったのだが、その後、もう1回大きなチャンスがあった。
 最後のチャンスは去年(2018年)の夏だった。
 東京大学の東京大学入学者選抜検討ワーキンググループが民間試験を導入すべきではないと答申し、それにより東大は導入しない方針を決めた。もちろん、これ自体は報道されたわけであるが、ここでもさほど大きな議論は巻き起こらなかった。

 次の文章は、同ワーキンググループ答申の一節である。

以下引用。
「受験機会の公平性については「原則、毎年度全都道府県での試験実施(ただし、当分の間、受検希望者が著しく少ない地域では、近隣の複数県を併せた地域で合同実施することが
できる。)」とされているが、都市部からの距離や交通機関の利便性により受験機会が限られる、あるいは移動の費用が負担となる受験生の問題は依然として解決されていない。
経済的負担についても「経済的に困難な受検生の配慮をしっかりと公表していることも参加要件の一つとして各試験実施団体に求めて」いるとあるが、この要求に対しては認定された試験実施団体の大半が「一定の条件のもとに検定料の低減を検討中」と答えているだけであり、現段階では「しっかりと公表している」とは言いがたい状態である。
以上引用おわり。

 はい。いま議論になっていることはここに全部出てます。

 ここまではっきり問題点が指摘されているのに、なぜこの段階でもっと議論を深めなかったのか。ここが大手メディアや教育関係者の大きな反省点である。