有事に備えてタブレットや小型PCやWi-Fi環境を整備してきた学校ってあるのかな? たぶんないな。目的はそこじゃなかった。が、今回たまたまそれが役に立った。
 私立に比べ公立の方が機器導入や環境整備が遅れ、先生生徒共にリテラシーが低いことへの批判も見られるが、今回のような有事(戦争ではなく非常事態という意味だ)を想定していなかったという点については、私立も公立も同じことだ。今の非常事態が、感染症によるものではなく、その他の災害で通信や電力供給網が寸断されたことによるものだったら、条件はほぼ変わらない。
 有事において強力な武器になるということは、私立だって今回初めて知ったのだ。
 と、いったん公立を擁護しておこう。

◆半世紀前と変わらない指導法
 知り合いの看護師が以前こんな話をしていた。「時間に余裕ができたので復帰したいと思うが、今のやり方についていけるかどうか不安だ」。
 なるほど。専門的なことはよく分からないが、たしかに新しい機器がどんどん導入されているし、治療法も手術法も変わっているのだからそうかもしれない。
 だが教育業界はそうではない。
 私は、すでにとうの昔に現場を離れている人間だが、技術革新についていけるかどうかと不安に思ったことはない。心配なのは年の若い先生や、それよりずっと若い生徒たちとコミュニケーションが取れるかどうかだ。たぶん無理だ。

◆これを機に技術革新のスピードを上げる
 何でも新しいものに飛びつけばいいというものではない。学校が最先端にあって世の中をリードするというのも想像しにくい。どちらかと言えば、世の中の進歩発展に必死で食らいついて行くか、せいぜい歩調を合わせて行く程度が限界だし、それでいい。
 が、それにしても、もうちょっと技術革新のスピードが上がっていい。私のような年寄りに「現役復帰できるんじゃないか」と淡い期待を抱かせるようではいけない。
 今回の非常事態を、技術革新の契機として欲しい。

◆阻害要因は外ではなく内にある可能性
 当たり前だが、機器導入や環境整備にはお金がかかる。指導法や学習法を変えられない理由の大部分がここにあるのだろう。これは個々の教員の力だけではどうにもならない。 
 だが、十分な予算が確保できれば、はたして指導法や学習法に変化が見られるだろうか。私はここに若干の疑いを持っている。
 ここでまた、やらない理由や出来ない理由を挙げる人々が現れるのではないか。

 勉強部屋がないから勉強しないという子に、部屋を作ってやったら勉強するか。絶対しない。
 変化が進まないのは、もしかしたら内側にあるのかもしれない。