昨日に続き、県内私立高校入学者の傾向を調べてみる。
 まず、県内からの入学者と県外からの入学者の比率だ。

◆県外からの入学者比率が高い学校
 県外からの入学者比率が高い学校は次のとおりだ。
 
 慶応志木、早大本庄、立教新座などが上位であるのは予想どおりの結果だ。東京に近い慶応志木や立教新座なら分かるが、早大本庄の東京から86人には改めて驚かされる。新幹線通学ということか。
 本庄東の群馬県から95人もなかなかの人数だ。群馬県公立上位校の併願というポジションだからだろう。
 埼玉栄はその他42人となっているが、その他とは関東1都5県以外ということである。部活で全国制覇を目指そうという生徒たちが中心だろう。
 栄東は13.6%とさほど高くないが、内部進学者が多くこれらは統計上県内私立からの入学者としてカウントされている。したがって、実質的な東京からの入学者はもっと多いだろう。

◆県内からの入学者比率が高い学校
 次に県内からの入学者比率が高い学校を見てみよう。

 表にある20校中7校は高校単独校(中高一貫ではない学校)である。また、中高一貫であっても中学校の規模が極めて小さい学校がここに登場している。
 大宮開成は100人を超す内部進学者がいるが、高入生の大部分は県内公立中出身者だ。さいたま市や南部地域の公立上位校の併願校というポジションだからだろう。

◆内部進学者の割合が多い学校
 続いて内部進学者の割合が多い学校を見てみよう。
 

 統計上、県内私立からの入学者となっているのは、概ね附属中学校からの入学者、いわゆる内進生と見ていいが、必ずしもイコールではない。高校入学時に公立や他私立に進学する生徒もいる。そのため表のタイトルは「多いと見られる」とした。
 この項については、後日、中学校データを調査してからコメントすることにしよう。

 最後に、地元占有率の高い学校はどこか調べてみた。
◆日常感覚と異なる教育事務所による地域分け
 この統計では、市町村までは特定できないが、公立中学校出身の入学者であれば、およその地域までは分かる。
 およその地域とは、「さいたま市」、「南部」、「西部」、「北部」、「秩父」、「東部」の6地域である。
 政令市「さいたま市」を別格とし、残りは県の教育事務所による分類だ。 
 「秩父」は「北部教育事務所秩父支所」であるが、ここでは「北部」とは別個に扱われている。

 教育事務所による分類は、われわれが日常考えている地域の分け方と異なるので注意が必要だ。
 下にまとめてあるが、通常は「東部」と考えられている草加市は、ここでは「南部」に分類されている。また、「西部」と考えられている朝霞市、志木市、和光市、新座市も「南部」に分類されている。

◆教育事務所の管轄地域
【南部】川口市、鴻巣市、上尾市、草加市、蕨市、戸田市、朝霞市志木市和光市新座市、桶川市、北本市、伊奈町
【西部】川越市、所沢市、飯能市、東松山市、狭山市、入間市、富士見市、坂戸市、鶴ヶ島市、日高市、ふじみ野市、三芳町、毛呂山町、越生町、滑川町、嵐山町、小川町、川島町、吉見町、鳩山町、ときがわ町、東秩父村
【北部】熊谷市、本庄市、深谷市、美里町、神川町、上里町、寄居町
【北部秩父支所】秩父市、横瀬町、小鹿野町、皆野町、長瀞町
【東部】行田市、加須市、春日部市、羽生市、越谷市、久喜市、八潮市、三郷市、蓮田市、幸手市、吉川市、白岡市、宮代町、杉戸町、松伏町

 では、傾向を見て行こう。
◆さいたま市
 私立は9校ある(完全一貫の浦和明の星除く)。「さいたま市」の割合が高いのは次の学校だ。
 なお、分母は「公立中学校出身者」である。
 1 開智(岩槻区)   「さいたま市」から47.8%
 2 浦和麗明(浦和区)  〃       45.0%
 3 大宮開成(大宮区)  〃       44.2%
 
 開智は岩槻ということもあり、「東部」も22.2%と高い割合を示している。
 浦和麗明は「南部」37.7%、大宮開成も「南部」33.7%と、共に「南部」の割合も高くなっている。
 浦和実業(南区)は「南部」が48.5%で「さいたま市」の32.9%を上回っている。下車駅が京浜東北線と武蔵野線の交点「南浦和駅」という立地が影響しているものと考えられる。
 浦和学院(緑区)は「さいたま市」が41.2%でもっとも高いが、「南部」も30.7%、「東部」も26.1%と広範囲から集まっている。
 埼玉栄(西区)は「さいたま市」34.4%、「南部」28.6%、「西部」16.2%、「東部」15.7%と、こちらも広範囲から集まっている。

◆南部
 私立は8校ある。「南部」の割合が高いのは次の学校だ。
 1 立教新座(新座市) 「南部」から59.3%
 2 武南(蕨市)     〃     53.0%
 3 細田学園(志木市)  〃    44.9%

 立教新座は県外比率、内進比率が高い学校なので参考程度に見ておこう。
 武南は「さいたま市」も33.4%と高い。
 細田学園は「西部」も42.5%と高い。東武東上線沿線校なので当然だろう。
 栄北(伊奈町)は「さいたま市」が58.8%でもっとも高いが、同じニューシャトル沿線にある国際学院は上尾駅や蓮田駅にスクールバスを出している関係か、「南部」が44.5%ともっとも高いが「東部」も22.2%と比較的高くなっている。

◆西部
 私立は19校ある(音楽科2校含む)。「西部」の割合が高いのは次の学校だ。
 1 狭山ヶ丘(入間市) 「西部」から92.0%
 2 武蔵越生(越生町)  〃    91.3%
 3 聖望学園(飯能市)  〃    87.8%
 4 埼玉平成(毛呂山町) 〃    87.5%

 この地域の学校は総じて地元「西部」の割合が高く、秀明(川越)を除く18校はすべて地元「西部」の割合がもっとも高くなっている。
 他に「西部」比率が高いのは、東野87.3%、山村国際86.4%、秋草学園85.7%だ。他地域では地元比率が80%を超える例はない。
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◆北部及び秩父
 北部及び秩父には5校ある。
 1 本庄第一(本庄市)  「北部」から69.8%
 2 本庄東(本庄市)    〃    68.5%
 3 東京成徳大深谷(深谷市)〃    63.3%
 4 正智深谷(深谷市)   〃    53.7%

 県外比率の高い早大本庄(本庄市)は別格として、他の4校はすべて「北部」の割合がもっとも高くなっている。
 正智深谷は「南部」も24.2%と比較的高い割合を示している。深谷駅から徒歩5分という立地だから高崎線沿線の上尾、桶川、北本、鴻巣あたりからも通いやすい。

◆東部
 東部には6校ある。「東部」の割合が高いのは次の学校だ。
 1 昌平(杉戸町)  「東部」から72.8%
 2 花咲徳栄(加須市) 〃    70.4%
 3 開智未来(加須市) 〃    61.5%

 6校すべてが地元「東部」の割合がもっとも高くなっている。
 叡明(越谷市)は「東部」45.4%に対し、「南部」も37.9%となっている。また、獨協埼玉(越谷市)も「東部」44.4%に対し、「南部」も27.1%と比較的高い。統計上「南部」とされている草加市の影響かもしれない。

 交通便利な「さいたま市」や「南部」は、流出も流入も起こりやすく、入学者(公立中学出身者)の地域がばらけるが、それ以外の地域は交通網の関係もあり地元占有率が高くなる。
 という結論は最初から分かっているが、念のため数値で裏付けてみたということである。

 塾関係の方は気づかれたと思うが、昨日今日のネタは私が毎年講演会で使っているものである。今年は新型コロナの影響で今のところ講演会はゼロだ。
 というわけで今回はブログ上でネタの一部を披露させてもらった次第である。