昨日行われた福岡国際マラソンで、吉田祐也選手が優勝した。一般には青山学院大学出身として語られるが、埼玉県民としては東京農大三高(東松山市)出身ということもアピールしておこう。
県立春日部東高校出身の川内優輝選手、武蔵越生高校出身の設楽悠太選手など、わが埼玉県は話題性のある選手を輩出しているのである。
◆優勝は好条件そろったから
吉田選手の優勝タイム2時間7分5秒は日本歴代9位ということだから、これは大変立派な記録である。
ただし、長距離の有力選手はオリンピック代表のかかった2日前の日本選手権に出場し、福岡には一線級が出ていなかった。
また、コロナの影響でケニア・エチオピアなど海外からの招待選手が参加していなかった。
さらに言えば、マラソン2戦目の吉田選手は、他の選手からマークされるような存在ではなかった。
というような好条件に恵まれての優勝であった。
むろん、どんなに好条件に恵まれたって勝てない選手は勝てないのあるから、それで優勝の価値が下がるということもない。
が、強い相手との直接対決で勝ってこそ真の勝利者である。
次は、そういうレースを見てみたい。
◆何が「期待の新星」だ
以上が個人的感想なのであるが、マスコミはさっそく「パリの星」などと持ち上げる。
(念のためだけど、パリは東京の次の五輪開催地だね)
今の男子マラソンの世界記録知ってんのかね。
キプチョゲ選手(ケニア)の2時間1分39秒だよ。
キプチョゲ選手は昨年、非公式ながら2時間を切っている。
日本記録は大迫傑選手の2時間5分29秒だけど、世界には2時間5分を切っている選手がざっと50人はいる(ほとんどがケニヤかエチオピアだけど)。
そんな時代に、2時間7分台で走って、なにが「パリに向け、期待の新星現る」なのよ。
走るの興味ない人はピンと来ないかもしれないが、タイムが3分違うとほぼ1㎞差になるわけだ。
世界は遠い先にある。
先ごろ東京五輪代表が内定した女子10000mの新谷仁美選手も、同5000mの田中希実選手も、男子10000mの相沢晃選手も、世界との差は本人たちが一番分かっているだろう。
でも、マスコミからオリンピックについて水を向けられたらメダルを目指すと答えざるを得ない。
それが記事になれば、人々は無邪気に期待する。
そして、結果は?
分かり切ってるだろう。
◆東京五輪はあの1回でいいや
残念ながら私は世界のことをそれほど知っているわけではない。
いやむしろ、ほとんど知らないと言ったほうがいいだろう。
だから、安易に「日本人は・・・」などと言う資格はないわけだが、われわれは世界の中でも特にオリンピック好きな国民なのかもしれない。
もっとも、テレビでオリンピック中継を視る人が世界で30億人以上いるらしいから、他国の人もかなり興味はあるのだろう。
世界のことは分からないが、世代のことは少しは分かる。
私は前回の東京五輪を中学1年生で迎えた。
あの、えもいわれぬ高揚感は、その後の人生ではほとんど感じたことのない唯一無二のものであった。
ちなみに高揚感というのは、気持ちがハイになることで、今風に言うと「テンション、MAX」ということなんだが、そういう軽い言葉では表せない、もっと心の底から湧き上がるような感動があった。
当時はまだ子供でよく分からなかったが、あの東京五輪は戦後復興の記念碑的な大会であったのだろう。
敗戦で打ちひしがれた大人たちは、これでようやく名実共に国際社会に復帰できたと、そんな感慨と誇りをもって大会を迎えたのだと思う。
また別の機会にゆっくり語ろうと思うが、五輪前の東京はホント汚かったんだぞ。
東京中ゴミだらけ。
今は世界一清潔とか言われているようだが、とんでもない。
現在で言うJR、当時は国鉄(年寄りは省線)と呼んでいたが、山手線や中央線の車内で大人たちは普通にタバコを吸っていたし、そのまま床でもみ消してたからな。
でも、五輪がやってきて、その後に万国博覧会やって、世界中の人たちが日本にやって来るようになって、日本は変わった。
翻って、じゃあ今度の東京五輪は何なのだ。
それほどまでに国民が待望しているのかと言ったら、前の東京五輪を辛うじて知っている我々世代からすると、どうも心許ない。
もう五輪はあの1回でいいんじゃないの。
無理してやることない。
ただ、世界で大量の死者を出した新型コロナが奇跡的に終息し、その復興メモリアル大会となればそれなりの意義があり、大層盛り上がるだろう。
まあ、見通し暗いけど。
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