明るい話題と言っていいかな。83歳と76歳が定時制高校(県立越ケ谷高校・定時制)を卒業したというニュース。

 2人合わせて159歳、高校を卒業…口をそろえて「体育の授業はきつかった」(3月19日、読売新聞オンライン)

 合計159歳というのがいかにも新聞らしくて笑ってしまう。
 合計する意味ある?
 同級生だけど他人なわけだし、足し算に意味はない。
 ただ、新聞には見出しには、できるだけ大きな数字を使うというお約束がある。
 その方が目を引きやすい。
 平均すると79.5歳≒80歳だから「平均80歳が卒業」でもいいわけだが、「合わせて159歳」を使う。

 お爺ちゃんだけでなく、お婆ちゃんも一緒に卒業で、「4人合わせて320歳」だったら、もっとすごかった。
 ともあれ、卒業されたお二方には素直にご卒業おめでとうございますと申し上げよう。
 若い者と一緒に体育の授業を受けるような元気な年寄りが増えるのは結構なことだ。

 さて、それはそれとして定時制は危機である。
 存続の危機。

 埼玉県内には、定時制高校が26校ある。
 (1)定時制普通科 17校
 (2)定時制専門学科 4校
 (3)定時制総合学科 5校

 定時制の一般的イメージは夜間の学校だと思うが、それに当たるのは(1)(2)である。
 (1)には新聞に出た越ヶ谷をはじめ、浦和・浦和一女・春日部・熊谷など歴史の古い学校が多い。全日制希望者が増えるにつれ、新設の学校に定時制を設けられることがなくなった。
 大宮商業や川越工業や秩父農工科学に普通科があるのがちょっと意外だ。

 (2)は大宮工業(工業技術)、川口工業(同)、川越工業(同)、大宮商業(商業)の4校である。

 令和3年度入試では(1)定時制普通科の場合、総募集人員920人に対し、実受験者327人、入学許可候補者は326人だった。
 欠員補充を行うので今後若干増えると思われるが、定員充足率は35%程度である。
 (2)定時制専門学科の場合は、総募集人員280人に対し、実受験者・入学許可候補者は56人だった。
 定員充足率は20%である。
 40人募集の学校が多いが、上尾22人、朝霞21人あたりが最多で、一桁の学校もある。

 全体としては、いわゆる夜間の定時制に対する需要は確実に減っている

◆人気集める昼間定時制
 一方、(3)定時制総合学科は、昼間(二部)定時制・三部制を中心とする新しいタイプの定時制である。
 県内には狭山緑陽・戸田翔陽・吹上秋桜・吉川美南の4校がある。
 (定時制総合学科として川口市立もここに分類されているが、こちらはいわゆる夜間定時制だ)

 これらの学校はⅠ部・Ⅱ部制(戸田翔陽はⅢ部制)をとっている。
 Ⅰ部は午前中から午後にかけて授業が行われており、時間帯としては全日制と変わらない。

 この、昼間の定時制という点が人気となり、令和3年度入試でも、比較的高い倍率が出ている。
 狭山緑陽Ⅰ部 入学許可予定者数156人 実受験者142人 入学許可候補者142人 倍率0.91倍
 戸田翔陽Ⅰ部 入学許可予定者数78人 実受験者90人 入学許可候補者数78人 倍率1.15
 吹上秋桜Ⅰ部 入学許可予定者数144人 実受験者161人 入学許可候補者数144人 倍率1.12
 吉川美南Ⅰ部 入学許可予定者数78人 実受験者81人 入学許可候補者数78人 倍率1.04

 狭山緑陽Ⅰ部こそ、わずかに定員を割っているが、それ以外の3校はいずれも倍率が出ている。
 定員割れしている全日制が多い中、注目すべき現象と言えるだろう。
 これらの学校も昼間に授業を行うⅠ部は人気を集めているが、夜間に授業を行うⅡ部(戸田翔陽はⅢ部)は定員の半分以下である。

 近年、通信制の人気が高まっていることは、このブログでも何度か触れている。
 このことも合わせて考えれば、いわゆる夜間の定時制はその存在意義が問われていると言えよう。
 むろん、一定の需要がある以上、簡単に廃校するわけには行かないが、今後のあり方を検討しなければならない。