小中学生に一人一台の端末を行き渡らせる。この政策は2023年度までに達成することにしていたが、新型コロナの影響でオンライン授業への期待や需要が高まり、2020年度中に一気に達成させた。
 あえて言えば、コロナのおかげ。
 各家庭の通信環境の問題とか、その負担をどうするかという問題、そして、そもそも先生方がそれを有効に使えるのかという問題など、難問は尽きないわけだが、これは時間がかかる。
 先生の側も、子供の側も、これまで慣れ親しんできた学習スタイルがあるのだから、急には変えられない。徐々にだ。
 つい最近配られたばかりなのに、有効に使えていないじゃないと責められても、それはちょっと待ってくれという話だ。

 結果として計画が前倒しになった。
 これはプラス材料だ。
 もしコロナがなければ、わが町には入ったとか、わが校はまだだとか、そういう話があと3年続いたわけだ。
 それがなくなった。
 予定より早まったことで、先生方がいろいろ試行するための時間的余裕が生まれた。
 これが前倒しの効果だ。

 というわけで前振りが長かったが、今日のお題は「前倒し」である。

 昨年度、私は生徒募集におけるキーワードは「安心・安全」であると言ってきた。
 感染対策に万全を期している学校。
 オンラインを駆使し、学びを止めない学校。
 こうした「安全・安心」につながることをアピールポイントにしたほうがいい。
 そのように言ってきた。

 現在の状況を考えれば、引き続きこれらはアピールポイントになり得る。

 加えて、今年度提案したいのは「前倒し」である。
 これはアピールポイントというより行動指針だ。

◆県教委の入試日程変更はグッドジョブ
 つい最近、埼玉県教委は入試日程の変更を行った。
 異例である。
 おそらく史上初である。
 あと1年経ってもコロナは終息しない(かもしれない)という見通しに立ったものだ。
 
 見通しは外れるかもしれない。
 今よりもっと酷い状況になるか、逆にまったく心配のいらない状況になるか。
 それは誰にも分からない。
 もう少し様子を見てからでも・・・
 そんな意見もおそらくあったと思われるが、早々に日程変更を打ち出した。
 決定の「前倒し」である。
 県教委にはこの調子で頑張ってもらいたい。

◆「前倒し」は余裕を生み出す
 先の見通しが立たないので決められない。
 仕事でも日常生活でもよくあることだ。

 状況がはっきりしてきたほうが判断はしやすい。
 しかし、判断時期が遅れるほど選択肢は狭まる。
 かなり手前で判断することが「三択」か「四択」とすれば、直前の判断は「二択」か「一択」だ。
 判断しやすくて当然だ。

 判断や決定の「前倒し」は勇気がいるものだが、それにより時間的余裕が生まれる。
 と同時に心の余裕も生まれる。
 これが結構大事だ。

 今年は「前倒し」を強く推したい。

◆出来るときにやっておく
 以上は、判断や決定の「前倒し」だが、実際の行動面での「前倒し」も必要だ。
 後でやろうと思っていたことが、その時になったら状況変化で出来なくなった。
 これは去年さんざん経験してきたことだ。

 これに対する策はただ一つ。
 出来るうちにやっておく。
 つまり行動の「前倒し」。

 まだ少し早いかな。
 もちろん、可能な範囲でということだが、そういうタイミングでやっておく。
 結果は、「そんなに焦る必要なかったじゃない」となるかもしれない。
 それが嫌な人には「前倒し」は向かないので勧めない。

 「前倒し」は、「やっておいて良かった」という安堵をもたらすかもしれない。
 だが、「焦って損した」「無駄だった」「意味なかった」と後悔するかもしれない。

 「後ろ倒し」や「先送り」は、前述したように二択か一択なので迷いなく行動できる。
 だが、「あの時やっておけば良かった」と後悔するかもしれない。
 
 さあ、どっちを取るか。
 私は去年の経験から、判断・決定も行動も、「前倒し」がいいと考える。