教育関係者の皆さんはおそらく目にしたであろうニュース。
 高校入試に関わるもの。

大分の県立高、推薦入試で特定受験生に加点 部活強化へ中学生リスト化(1月22日 毎日新聞)

 1月2月は入試絡みのトラブル、不祥事等がニュースになりやすい。
 冬場の魚屋にぶり、八百屋に白菜、果物屋にみかんが並ぶのと一緒。
 「旬」なのだ。

 大分県のある県立高校では、部活動を強化するため事前に有力な中学生をリストアップし、入学の意向を示して受験した場合には一定の得点を上乗せして合格に有利な扱いをしていた。
 これについて文部科学省が不適切であるとして大分県教委に対し改善を求めた。

 ニュースで分かるのはここまで。
 ヤフコメなどを見ている時間があったら、まず下記の資料に目を通そう。
 文部科学省の調査。
 昨年(令和6年)12月発表。

 令和6年度 高等学校入学者選抜の改善等に関する状況調査 (公立高等学校)

 これを見れば、47都道府県の概略が分かる。
 大分県の概略は資料の49~51ページにある。
 「推薦入試B」という方式では、出願条件に「スポーツ活動、文化活動、その他の活動において成果を収めた者等で、詳細は学校ごとに定める」とあるので、元々そういう趣旨の入試はあったわけだ。

 県立高校の入試としてその内容を公表していなかったことは公平性という点で問題があるだろう。
 その一方、生徒を多様な観点から評価しようという方向性は今の時代それほど問題だとは言えない。
 ただし、中学校部活の地域移行が叫ばれている今、部活実績をどう扱うかについては見直しの時期が来ている。

◆推薦入試あるなしは半々
 この際だから埼玉県の話をしておこう。
 埼玉県では推薦入試を実施していない。
 全国的では、
 ●すべての学校・学科で実施
   2県
 ●一部の学校・学科で実施
   22県(1都1道含む)
 ●実施していない
   23県(2府含む)
 となっている。

◆部活動実績の点数化、得点加算は2県
 埼玉県一般入試では現状、部活動の実績を点数化し、得点への加算を行っている。
 具体的に何点かは学校ごとに異なり、その詳細は公表されていない。

 すべての学校・形態において、部活動実績を点数化し、得点加算をしているのは埼玉県の他は山梨県のみである。
 一部の学校・形態で加点しているのは千葉県など12県である。
 それ以外の29県(1都1道2府含む)では、総合的に判断する際の資料としてのみ用い、加点はしていない。

 こう見ると、現行の埼玉方式は特異と言っていい。
 だが、中学校部活の地域移行によりこの方式の維持は難しくなった。

◆生徒の多様性はどうなる
 さてそうなると悩ましいのは生徒の多様性をどう評価するかという問題だ。
 スポーツ活動や文化活動、ボランティア活動で努力したり、実績を残した生徒が欲しいという学校もあるだろう。

 学力試験の点数だけが人間の優劣みたいな世の中でいいはずがない。
 しかし、新しい入試制度では学力検査と調査書評定以外には面接しかない。
 たかが10分程度の面接で何が分かる。
 小論文や作文を入れても多面的評価にはなるまい。
 
 このままだと、今でもその傾向は強いがスポーツ活動や文化活動を頑張って来て、これからも頑張りたい人は私立へという流れが加速しそうだ。