近年、「(高校)3年ゼロ学期」という言い方がかなり定着してきたようだ。
 先日もまったく別の用件で訪ねた学校で、学年集会のようなものが行われていたので覗いてみると、「今は高校2年3学期ではなく3年ゼロ学期」だと生徒に発破をかけていた。
 文字では何度も見ているが、実際に先生の口から発せられる場面を見たのは初めてだ。

 そうか。こうやって使われているんだと妙に感心していると、その数日後、今度は別の学校でも同じ言葉を聞いた。
 こちらは講座(たぶん補講)の開講式のようであった。

 受験勉強は3年になってからでは遅い。
 2年生のうちから始めておかないと間に合わない。
 だから今は3年ゼロ学期。

 たしかに国公私立の難関大学を除けば、大学入試の主戦場は秋になりつつある。
 夏休み明け早々には出願が始まり、年内には試験も合格発表も終わってしまう。
 こんな時代に、3年生になってから、あるいは部活引退してからなどと言っていたら勝負にならない。

 この「3年ゼロ学期」という考え方。
 大学入試だけを考えればそうならざるを得ないのだが、そうなるとさまざまな体験をさせながら職業観を育むなどとノンビリしたことは言っていられなくなる。
 部活や行事に打ち込める高校生活は実質1年半。
 残りは受験対策を中心(メイン)とした生活。
 そうしないと大学入試の早期化に対応できない。
 
 こうなると大学側、高校側が話し合ってどこかで歯止めをかけないと高校教育というものが崩壊してしまう。
 将来についてや職業についてじっくり考えさせる時間は必要だ。
 そのためには早い段階で意識を持たせたり調べさせたりするべきだろう。
 しかし、入試がどんどん早期化すれば、そうした時間を短縮せざるを得なくなる。
 とにかく早く受験校を決めろ。
 そんな指導になって行く。
 これは大学にとっても良くないことだ。

 いったん早まってしまうと元に戻すのは非常に難しい。
 せめてこれ以上早まることがないよう祈るしかない。