突如として高校授業料無償化という言葉が新聞紙面等を賑わすようになった。
 はてこの問題、先の衆院選でそれほど話題に上っただろうか。
 維新が所得制限雄のない完全無償化を掲げていたのはうっすら記憶しているが、争点というほどではなかった。
 争点はもっぱら政治とカネ、あるいは物価対策等の経済政策であった。

 ところが、ここにきて急浮上してきた。
 これはどう考えても政治的駆け引きの結果だろう。
 少数与党である自民党は、野党の一部の賛成がないと予算案が通せない。
 どこと組むか。
 当初は国民民主党を考えたようだがうまくまとまらない。
 そこでターゲットを日本維新の会に切り替えた。
 維新が公約に掲げている「所得制限のない教育無償化」を飲むのと引き換えに予算案賛成に回ってもらおうという魂胆だろう。

 こういう政治的な駆け引きに使われるのはどうなんだろう。
 おそらく自民党は所得制限無しの授業料無償化は考えていない。
 選挙公約にも「高校教育の無償化の拡大を進めます」とは書いているが、公私立含めた所得制限なしの授業料等の無償化までは踏み込んでいない。
 維新の政策を飲んだふりだけして予算が通った後は骨抜きにしてしまうだろう。
 維新の方だってそれくらいはお見通しなわけだが、夏の参院選に向けて政策を実現させたという実績をアピールできる。

 しかし、こういう中途半端な妥協は、本当の意味で国民福祉の向上に寄与するとは言えないだろう。
 
 無償化というのは言葉の響きとしては非常によろしい。
 ただ、高校授業料は高々3年間の出費だ。
 しかも月々で言えば1万円足らず。
 そう考えれば、この出費が大した負担にならないような所得増政策や減税政策等を講じるのも一つの考え方ということになる。
 
 政治には妥協も必要だし、駆け引きもあるだろうが、ここはきちんと議論をしてもらいたいところだ。